ベネディクト16世の辞任

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2007年当時のベネディクト16世

2013年2月11日、ローマ教皇ベネディクト16世の辞任が発表された[1]カトリック教会の指導者としての辞任は1415年にグレゴリウス12世が教皇職を放棄して以来のことであり[2](グレゴリウス12世は教会大分裂を終了させるために退位した)、外部の圧力を受けない自由意志での辞任は1294年のケレスティヌス5世以来である[3]。近代の教皇は終身制であって死ぬまでその地位にあると考えられて来たので[4]、この動きは予想だにされなかった[4]。ベネディクト16世は辞任の理由として高齢であるため健康が衰えている事を挙げた[5]2013年のコンクラーヴェ英語版にて後継者が選出され、3月13日フランシスコが選出・就任(即位式は3月19日)。ベネディクト16世は名誉教皇の称号で呼ばれることとなった。

なお、「辞任」ではなく「退位」という表現が使われることもままあるが、カトリック中央協議会の公式webページ[6]や現行のカトリックの教会法典の邦訳[7]などカトリック教会の出す文献では一貫して「辞任」の語があてられている。教皇は辞任(: Resignation)するものか退位(英: Abdication)するものかという議論は英語でもあるようで以下のwebページ[8]で辞任(英: Resignation)が適切である理由が説明されている。

辞意表明の演説[編集]

ベネディクト16世は高齢である事を理由に辞任を決意し[9][10]、2013年2月11日午前11時、バチカンにあるローマ教皇庁にて福者3人の列聖を話しあうため招集した枢機卿会議にて、ラテン語で2013年2月28日20時をもって教皇職を辞任すると宣言した[11]

多くの急激な変化を伴い、信仰生活にとって深刻な意味をもつ問題に揺るがされている現代世界にあって、聖ペトロの船を統治し、福音を告げ知らせるには、肉体と精神の力がともに必要です。この力が最近の数か月に衰え、わたしにゆだねられた奉仕職を適切に果たすことができないと自覚するまでになりました。

そのため、このようなことを行うことの重大さをよく自覚した上で、わたしは完全な自由をもって次のことを宣言します。すなわち、わたしは2005年4月19日に枢機卿団がわたしにゆだねた聖ペトロの後継者であるローマ司教の奉仕職を辞任します。

ベネディクト16世、カトリック中央協議会

この日はバチカンの祝日の世界病者の日英語版であった。聴衆はオトラントの殉教者英語版、ラウラ・モントヤ・ウペギ、マリア・グアドルーペ・ガルシア・サバラという3人のカトリックの聖人の列聖が発表されると予想していた[12]

"オトラントの殉教者を列福するための枢機卿会議英語版"として知られるこの儀式の中で、ベネディクト16世は「教会の生命にとって重要な決定」というこれらの贈り物を語った[1][13]

辞任表明の中でベネディクト16世は高齢のために健康状態が悪化したので教皇として務めるだけの体力や精神力が残っていないと述べた[5]。彼は同時に「全人生を通じて祈る」事で教会に奉仕し続ける方針を表明した[5]。バチカンのスポークスパーソン、フェデリコ・ロンバルディ英語版によると、ベネディクト16世は辞任後にバチカン市国を離れ、夏の休暇の際に滞在するカステル・ガンドルフォに移住する予定になっているという。この採用の後にバチカン市内のマーテル・エクレジエ修道院英語版に滞在するという[14]

新しい教皇は2013年3月15日から20日までの間に行われる2013年のコンクラーヴェ英語版によって選出されるとされたが、生前辞任であったこともあり、前倒しされ、同年3月12日および13日に行われ、フランシスコが選出され、就任した。

辞任後の生活[編集]

バチカンのスポークスパーソン、フェデリコ・ロンバルディ英語版によると、ベネディクト16世は枢機卿の肩書きを持たず、教皇庁で役職を持たないという。教皇は厳格にローマ司教とされているので、彼はローマの名誉退職司教として知られるとの事である[15]。彼は名誉退職教皇と言及され、聖下という敬称は使われ続ける方針だという[16]。彼は辞任する際には85歳となっている。

ベネディクト16世は辞任直後にカステル・ガンドルフォの使徒宮殿に移住する予定になっている。バチカン市内のマーテル・エクレジエ修道院英語版の建て替えが終了した後に、彼は永遠にそこに住むという。この修道院は以前は修道僧や修道女によって数年間の滞在のために使用されていた[17]

反応[編集]

  • フランスの旗 フランス – フランソワ・オランド大統領はベネディクト16世が「尊敬」という恩恵を受けて辞任すると述べたが、ローマ・カトリック教会内部の事柄であるとして個別の事柄に関する言及を避けた[19]
  • ドイツの旗 ドイツ – アンゲラ・メルケル首相は異なる宗教観での対話でのベネディクト16世の役割に言及し、「我々の年代の中で最も重要な宗教指導者の一人」として彼を賞賛し、メルケル首相に対する彼の影響について「教皇の言葉は長きに渡って私に同行しています」と語った[20]。ドイツ政府のメディア対策アドバイザー、シュテッフェン・ザイバート英語版は、「ドイツ政府は彼の業績やカトリック教会に命懸けで献身なさったので教皇に最大限の尊敬を持っております」[...]「彼はカトリック教会の長の思想家として、そして羊飼いとして大きな実績を残しました」の述べた上で「感動した」と言った[21]
  • イスラエルの旗 イスラエル – アシュケナジムのラビ長ヨナ・メッツガー英語版のスポークスマンは、「彼が教皇だった間カトリック教会とユダヤ教のラビとは最良の関係でした。我々は今後のこの傾向が続く事を願います。ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の間で世界中の諸宗教間の関係を発展させたという点で、私は彼が沢山の名声を得るに値すると思います」と言った。スポークスマンは同様にベネディクト16世の「健康と長寿を祈る」と言った[23]
  • 日本の旗 日本 – 安倍晋三内閣総理大臣は、在任中の功績に対して敬意を表し、日本が後継の教皇のもとのローマ教皇庁と協力していくことを期待すると発表[31]
  • フィリピンの旗 フィリピン – ベニグノ・アキノ3世大統領は「本年2月28日の教皇辞任の一報を受けて大きな嘆きで満たされた」と言った。彼は同様に「感謝の念、多くの祈り、ベネディクト16世がフィリピンの災害や挑戦の時に発した励ましの言葉、そして多くのカトリックの行事の際の教皇の励ましの言葉や証言、最近ではペドロ・カルングソッド英語版の列聖の際の言葉を思い出した」と述べた[32]
  • イギリスの旗 イギリス – デーヴィッド・キャメロン首相はベネディクト16世を賞賛し「私は最良の希望を今日の発表を受けて教皇ベネディクト16世に送ります。彼はイギリスとの関係を強化するために疲れを知らず働いて来ました。教皇ベネディクト16世のイギリス訪問英語版は大きな尊敬と愛情を持って記憶されています」と述べた。首相は「彼は多くの人々によって精神的指導者として懐かしがられるでしょう」と付け加えた[33]
  • アメリカ合衆国の旗 アメリカ – バラク・オバマ大統領はベネディクト16世を賞賛し、「全世界のアメリカ人を代表して、ミシェルと私は教皇ベネディクト16世聖下に感謝の気持を表明したいです。ミシェルと私は2009年の会談を暖かく記憶しております。私はこの4年間教皇と共に仕事をする事が出来て感謝しています」と述べた[34]。大統領は「次期教皇が選出されるコンクラーヴェに集まる人々にベストを願います」と付け加えた[35]ティモシー・M・ドーラン英語版枢機卿は「教皇が性的虐待の被害者の心に寄り添って来た」と言った[34][35]

脚注[編集]

  1. ^ a b Davies in Rome, Lizzy (2013年2月11日). “Pope Benedict XVI resigns due to age and declining health”. The Guardian (Guardian Media Group). http://www.guardian.co.uk/world/2013/feb/11/pope-benedict-xvi-resigns-age 2013年2月11日閲覧。 
  2. ^ Messia, Hada (2013年2月11日). “Pope Benedict to resign at the end of the month, Vatican says”. CNN. 2013年2月11日閲覧。
  3. ^ Father Raymond J. de Souza (2013年2月12日). “The Holy Father takes his leave”. The National Post. 2013年2月12日閲覧。
  4. ^ a b “Pope Benedict XVI in shock resignation”. BBC News (BBC). (2013年2月11日). http://www.bbc.co.uk/news/world-21411304 2013年2月11日閲覧。 
  5. ^ a b c Pope Benedict XVI announces his resignation at end of month”. Vatican Radio (2013年2月11日). 2013年2月11日閲覧。
  6. ^ 教皇ベネディクト十六世 辞任 関連情報”. カトリック中央協議会. 2013年10月13日閲覧。
  7. ^ 『カトリック新教会法典-羅和対訳』日本カトリック司教協議会行政法制委員会訳、有斐閣、1992年2月20日、ISBN:4-641-90195-3、p179
  8. ^ “Resign,” “renounce,” or “abdicate”? Bishop Paprocki weighs in”. Catholic World Report (2013年2月18日). 2013年10月13日閲覧。
  9. ^ It is God's future”. L'Osservatore Romano (2013年2月12日). 2013年2月11日閲覧。
  10. ^ “El Papa tomó la decisión de renunciar tras su visita a México y Cuba” (Spanish). CNNMéxico. Turner Broadcasting System. (2013年2月11日). http://blogs.cnnmexico.com/ultimas-noticias/2013/02/11/el-papa-tomo-la-decision-de-renunciar-tras-su-visita-a-mexico-y-cuba/ 2013年2月11日閲覧。 
  11. ^ “ベネディクト16世、教皇職引退を発表”. バチカン放送局. (2013年2月11日). http://ja.radiovaticana.va/Articolo.asp?c=663874 2013年2月17日閲覧。 
  12. ^ Pope convokes consistory for canonization of three Blessed”. The Vatican Today (2013年2月4日). 2013年2月12日閲覧。
  13. ^ Pope Benedict XVI, citing deteriorating strength, will step aside Feb. 28”. NBC News. 2013年2月17日閲覧。
  14. ^ Dopo le dimissioni il Papa si ritirerà presso il monastero Mater Ecclesiae fondato nel '94 per volontà di Wojtyla” (Italian). Il Messagero (2013年2月11日). 2013年2月12日閲覧。
  15. ^ Carol Glatz and Cindy Wooden (2013年2月12日). “Benedict will be prayerful presence in next papacy, spokesman says”. Catholic News Service. 2013年2月17日閲覧。
  16. ^ Pope Benedict's decision to step down sparks calls for a more energetic successor | The Detroit News”. detroitnews.com (2012年3月30日). 2013年2月13日閲覧。
  17. ^ Doughty, Steve and Hannah Roberts (2013年2月12日). “Now will there be TWO Popes?”. Daily Mail. 2012年2月14日閲覧。
  18. ^ Prime Minister's Office (2013年2月11日). “Statement by the Prime Minister of Canada on the resignation of Pope Benedict XVI”. 2013年2月13日閲覧。
  19. ^ Pope Benedict merits 'respect', Hollande says”. The Local. 2013年2月17日閲覧。
  20. ^ Germany and Europe hail retiring Pope Benedict XVI, Deutsche Welle, 11 February 2013
  21. ^ German government "moved" by Pope Benedict's resignation”. Reuters (2013年2月11日). 2013年2月14日閲覧。
  22. ^ Kenny pays tribute to Pope Benedict”. The Irish Times (2013年2月11日). 2013年2月12日閲覧。
  23. ^ As pope steps down, chief rabbi lauds Vatican ties”. The Jerusalem Post. 2013年2月17日閲覧。
  24. ^ http://www.usatoday.com/story/news/world/2013/02/11/pope-bendidict-germany/1908843/
  25. ^ http://www.pressconnects.com/article/20130211/APHEADS/302110027/World-reaction-Italian-PM-greatly-shaken-by-decision?nclick_check=1
  26. ^ http://www.independent.co.uk/news/world/europe/benedict-xvi-the-revolutionary-pope-resignation-seen-as-eruption-of-modernity-8490481.html
  27. ^ http://www.breakingnews.com/item/ahZzfmJyZWFraW5nbmV3cy13d3ctaHJkcg0LEgRTZWVkGITb9AwM/2013/02/11/italys-prime-minister-monti-says-he-is-greatly-shaken-by-the-news-of
  28. ^ http://www.poughkeepsiejournal.com/article/20130211/NEWS/130211008/World-reaction-Italian-PM-greatly-shaken-by-decision?nclick_check=1
  29. ^ http://www.bbc.co.uk/news/uk-21409149
  30. ^ http://www.nydailynews.com/news/world/worlwide-leaders-react-pope-benedict-xvi-resignation-article-1.1260726?localLinksEnabled=false
  31. ^ ローマ法王ベネディクト16世台下の退位に関する安倍内閣総理大臣メッセージについて” (日本語). 日本国外務省. 2013年2月16日閲覧。
  32. ^ Statement of The Presidential Spokesperson on the Pope’s resignation
  33. ^ Statement from Prime Minister David Cameron following the resignation of Pope Benedict XVI”. 10 Downing Street (2013年2月11日). 2013年2月12日閲覧。
  34. ^ a b Pope Benedict's 'selfless leadership' praised by US church leaders – President pays tribute to pope's work while senior Catholics say Benedict 'brought a listening heart to victims of sexual abuse', The Guardian, 11 February 2013
  35. ^ a b Pope Benedict XVI Resigns: President Obama, Italian Prime Minister, Other World and Church Leaders React

外部リンク[編集]