ヘクシャー=オリーンの定理

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ヘクシャー=オリーンの定理 (Heckscher-Ohlin theorem) は、スウェーデン経済学者エリ・ヘクシャーベルティル・オリーンが構築した国際分業パターンの形成に関する定理であり、国際経済学における最も基本的な定理の1つである。この定理によれば、各国の輸出と輸入の構造を決定するのは、各国に存在する資本や労働などの生産要素賦存比率(物量同士の比率)である[1]

この定理を構築したオリーンは、この功績が称えられ、1977年イギリス国際経済学者ジェイムズ・ミードとともにアルフレッド・ノーベル記念経済学スウェーデン国立銀行賞を受賞した。

概要[編集]

生産要素が国際間で全く移動せず、2財、2要素、2国を想定したケース(ヘクシャー=オーリン・モデル)において、ヘクシャー=オリーンの定理は直観的には次のように説明できる。

自国の労働に比べて資本の賦存量が希少である国では、資本の価格である資本のレンタル率と比較して労働の価格である賃金率が低くなっている。そのため、労働を比較的多く使用する労働集約財の価格が、資本集約財よりも安価になる。これに対して、自国の労働に比べて資本の賦存量が豊富である国では、賃金率と比較して資本のレンタル率が低くなっている。このため、資本を比較的多く使用する資本集約財の価格が、労働集約財よりも安価になる。すなわち、労働豊富国の比較優位は労働集約財にある。したがって、労働豊富国が労働集約財を輸出、資本集約財を輸入し、資本豊富国が資本集約財を輸出し、労働集約財を輸入することになる。これが、ヘクシャー=オリーンの定理の意味していることである。さらに、生産要素が国際間で全く移動しなくとも、賃金率や資本のレンタル率などの要素価格が両国で均等化することが「要素価格均等化定理」として知られている。

応用[編集]

ヘクシャー=オリーンの定理からは、2つの定理を導出することができる。1つは、労働量が増加すると労働集約財の生産は増加するが資本集約財の生産は減少し、逆に資本量が増加すると資本集約財の生産は増加するが労働集約財の生産は減少することを意味するリプチンスキーの定理、もう1つは、労働集約財の価格が上昇すると賃金率は増加するが資本のレンタル率は減少し、逆に資本集約財の価格が上昇すると資本のレンタル率は上昇し賃金率は減少することを意味するストルパー=サミュエルソンの定理である。

リプチンスキーの定理からは生産パターンと生産要素賦存量との関係に関する洞察を、ストルパー=サミュエルソンの定理からは生産価格と所得分配との関係に関する洞察を、得ることができる。

批判[編集]

ヘクシャー=オリーン=サミュエルソンの理論は、新古典派国際貿易論の標準的理論となっているが、クルーグマン=オブストフェルト[2]ほかに批判されているように、現実との整合性に乏しいほか、理論上・実証上、多くの問題点がある。英語Wiki en:Heckscher–Ohlin model のCriticism agaist the Heckscher-Ohlin Modelをみよ。

関連項目[編集]

参照文献[編集]

  1. ^ この説明は、伊東光晴編『岩波現代経済学辞典』p.2046の「ヘクシャー=オリ-ンの定理」の記述を、全面的に踏襲したものである。
  2. ^ Krugman, P.R., and M. Obstfeld『国際経済―理論と政策』石井菜穂子・竹中平蔵・松井均・浦田秀次郎・千田亮吉訳、新世社。