プラネタリウム

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ドーム内部中央に設置されたプラネタリウム本体
プラネタリウム施設の外観。ベラルーシミンスク

プラネタリウム:Planetarium)とは、惑星(英:planet)の運動を再現し映写する装置をいう。現代では惑星のみならず、恒星を含む星空全体とその運動を再現する装置へ進化した。転じて、装置を設置した施設を指す場合もある。ドーム状の建造物の内部に設置された投影機からの像をスクリーンの役割を果たす天井に投影、さらに投影機を精密に動かすことで星空の運動を再現し、地球上の任意の場所・時代の星空を投影することができる機能を有したものが科学館博物館を中心に設置されている。先進国を始めとする国の山間部には多くの公開天文台が設置され、その一環で併設されているプラネタリウムも多い。日本語では天象儀(てんしょうぎ)と訳されることもある。

目次

[編集] 歴史

[編集] 前史

アルキメデスは、太陽・月・惑星の運行を再現する装置を製作したとされる。アンティキティラ島の機械の発見により、そのような天体の運行を再現する装置は紀元前に既に存在していたことが実証された。

ヨハンネス・カンパヌス (1220-1296)はTheorica Planetarumを建設した。今日では18世紀のアイルランドのオーラリー卿に因んでオーラリーとして知られる。

18世紀において、小型のオーラリーは迫力を欠いていた。18世紀末には複数の教育者達が、大型の天界を再現する装置を造った。 アダム・ウォーカー(1730-1821)と彼の息子たちが製作した"Elaborate Machine" は全高12フィート、27インチ径のもので、垂直に立てられていて球体は更に大きいものであった。その装置は説法に用いられた。

現存する最古の作動する惑星運行儀は、オランダのフラネカーに見ることができる。アイゼ・アイジンガー(1744-1828)によって彼の居室に7年の歳月をかけて製作され、1781年に完成した。

[編集] 光学式プラネタリウムの開発

世界初の近代的なプラネタリウムは、1923年ハイデルベルクのバーデン天文台の主任研究員であったマックス・ヴォルフドイツ博物館のオスカー・フォン・ミラーが、天体運行の再現による説明を行うためにイェーナカール・ツァイス社に依頼し、ツァイス社の技師であったヴァルター・バウアースフェルトによって発明されたものである。「ツァイスI型」と名付けられたこの投影機は、北天用の1個の恒星球と惑星棚を備え、約4500個(おおよそ6等星まで)の投影を行うことができた。恒星原板の採用や、集光レンズを使用してドーム内に星像を投影するという現在の光学式(レンズ式)プラネタリウムの基本的原理は、この時点でほぼ完成している。この投影機はドイツ博物館に収蔵され、現在も展示されている。

[編集] 日本におけるプラネタリウムの歴史

現在稼動するもので日本最古のプラネタリウム投影機(明石市立天文科学館のカール・ツァイス・イエナUPP23/3)

日本で最初に設置されたプラネタリウムは、1937年大阪市立電気科学館(現在の大阪市立科学館)に設置されたカール・ツァイス・イェーナ社製「ツァイスII型」である。これは、アジアで最初に設置されたプラネタリウムでもあった。

国産として最初に開発されたプラネタリウムは、五藤光学研究所1959年に製作したM-I型投影機(当時の価格で約800万円)である。この投影機は静岡県清水市(現・静岡市清水区)の富士観センターや東京・浅草の新世界などに設置され、うち一台は1960年ニューヨークの国際見本市に出品、見本市終了後にコネチカット州のブリッジポート博物館へ販売され、1962年に一般公開された。

一方、1958年には、千代田光学精工(株)(現コニカミノルタホールディングス)が市井の発明家・信岡正典が開発したプラネタリウムを阪神パークで開催された科学博に出典。この投影機はそのまま常設され、その後福岡、広島などにも設置されていった。

現在、五藤光学研究所とコニカミノルタプラネタリウムは、2社を合わせて世界のプラネタリウムの半数近いシェアを抱えるトップメーカーとなっている。

また、大平貴之が個人で製作し、1998年にロンドンで初公開されたメガスターは、従来比100倍に相当する投影恒星数150万個を再現し、世界のプラネタリウム専門家を驚かせた。その後、本人により設立された大平技研によって開発・運用されているメガスターIIは、恒星投影数約500万個(12.5等星まで)に拡張され、日本科学未来館川崎市青少年科学館などに設置されて話題となった。さらに2008年6月シカゴで行われたIPS(国際プラネタリウム協会)大会で初めて発表されたスーパーメガスターIIは、約2200万個(13等星まで)の恒星を投影することが可能で、2009年2月現在世界一である。

2006年現在、プラネタリウムを最も多く保有している国はアメリカで、その次に日本の約300基が続いている。また施設のドーム直径の大きさは世界5位までが全て日本のものであり、愛媛県総合科学博物館にある直径30メートルのものが最大である。

[編集] 投影される内容

主に季節毎の星空を、星空にまつわる話を交えて投影することが多い。投影機で星を投影する以外にも、OHPスライドプロジェクタなどを利用してドーム内に絵を映し出すなど、話の進め方にもさまざまな工夫を凝らしている。また、流星群日食彗星の接近などの天文イベントがある場合は、それらの話題も加わることが多い。施設によってはアニメーションの上映や、CDや生演奏でのコンサートといった天文学習ではない「癒し」を目的としたイベント、実際の天体観測とリンクしたイベントなど、投影の仕方も多彩になっている。投影される内容は「番組」と呼ばれ、プラネタリウム番組専門の製作・供給会社が製作したもののほかに、各施設の職員が投影する番組を自ら作成する「お手製番組」がある。投影方法自体も、あらかじめプログラムした内容で投影機を自動で作動させ、自動的に投影する方法(俗にオート番組と呼ばれる)と、オペレーターがその場で解説を行い、それに併せて投影機も手動(もしくは半自動)で操作するという投影方法(俗に生番組と呼ばれる)、あるいは両者の組み合わせなど、各施設で特色のある内容となっている。

[編集] 構造

[編集] 投影機

電球の光を使って星の像を投影する光学式、ビデオプロジェクターを使ってドーム全面に投影するデジタル式、その両方を取り入れたハイブリッド式がある。

[編集] 光学式投影機

光学式投影機はその形状により、緯度軸を中心に球状または半球状の恒星投影機(恒星球と呼ばれる)が北半球用と南半球用とそれぞれ独立して存在する二球式と、北半球用・南半球用の恒星球を合わせてひとつの球形(またはほぼ球形)とした一球式に大別される。二球式の場合は惑星投影機などの補助投影機が投影機本体に組み込まれている場合が多く、一球式の場合は補助投影機が投影機本体とは別の場所に設置されている場合が多い。二球式はさらに、ツァイスが開発した惑星投影機群(惑星棚と呼ぶ)が中心部にあり、恒星球が外側にあるツァイス型、逆に恒星球が中心部にあり惑星棚が外側にあるモリソン型に区別される。なお、五藤光学研究所のGSS-IおよびGSS-IIは惑星投影機群が独立して設置されているが、惑星棚を廃止したモリソン型である。

ピンホール式投影機
球状もしくは多角形の恒星球に投影する恒星の等級に応じた穴をあけた構造。光源となる電球のフィラメントが回折して星像に悪影響を与えるので光源はできるだけ無指向、点光源に近く恒星球は大きいほどシャープな星像を得られる。構造が単純な為、中学や高校等の天文部等によって学園祭で使用される。アマチュア用だけでなく、アメリカのスピッツ社では全米各地の教育施設に納入している。フランスのラ・ヴィレット公園にあるシテ科学産業博物館でも使用されている。(明るい星はレンズで投影)。また、移動式のプラネタリウムの製品、ラーニングテクノロジー社のスターラボや、AE社のキューベックスなど、多くがピンホール式である。
レンズ式投影機
恒星原板と呼ばれる恒星の座標・等級に応じた小穴を開けた薄い金属箔に光源(主にハロゲンランプメタルハライドランプが用いられる)の光を通し、その光をさらに集光レンズを通して投影する方式。ピンホール式に比べて光の経路はより複雑になり、多くのレンズを恒星球に仕込まなければならない関係上、軽量化・小型化・低価格化が難しいものの、ピンホール式よりシャープな星像を容易に得ることができ、また恒星原板さえ作成できれば投影する恒星の増加にも対応可能である。現在、プラネタリウム投影機の主流を成している方式である。
レンズ式の場合は全天を32分割して、32枚の恒星原板を用意する。恒星の明るさは恒星原板の穴の大きさで表す。もちろん、ドームスクリーンに投影された星像の大きさが恒星によって違うことを意味するが、観客が肉眼で見た時にはその大きさの変化を識別できず、明るさの違いとして錯覚されることを利用している。しかし、最も暗い恒星の穴の大きさを基準として単純に穴の大きさを計算すると、最も明るい恒星(シリウス)の大きさが月の直径より大きくなるなどの問題が生じる。これを避けるため、いくつかの明るい恒星については別投影機を用いる場合がある。この投影機をブライトスター投影機と呼ぶ。恒星原板で投影される恒星には色がついていないが(電球色)、ブライトスター投影機で投影される恒星にはスペクトル型に応じたフィルターをかけ恒星の色を再現することが多い。また、変光星等の明るさが変化する恒星を再現をする場合に搭載されることもある。さらに近年、カール・ツァイス製の投影機では恒星原板へ光を導くために光ファイバーを使用するものもある。これにより、等級に応じて光の強度を変えることができるため、星像がシャープになる。また、従来は光源からの光の9割以上は無駄になっていたが、光の利用効率が高まるという利点もある。これにより、光源のランプの出力が少なくて済み、消費電力を減らすことができるようになった。ただ、構造上、光ファイバを恒星原板に植え付けるため、光学系の小型化や再現できる恒星数に限界がある点も否めない。半導体製造技術で発達した微細加工技術を応用して導光路を形成する方法も開発されつつある。
また、地平線下に恒星が投影されないよう各々の投影機に恒星シャッターが設けられている。恒星シャッターは重力式とXY制御式の2種類あるが、ドームが水平式の場合は重力式、傾斜式の場合はXY制御式を用いる(ドームの形式については後述)。さらに投影機本体には恒星シャッターを設けないで、恒星球をすだれ式シャッターで覆う方式をコニカミノルタプラネタリウムが採用している。

なお、ある程度以上の規模で設置されるプラネタリウムのほとんどは一球式を採用することがトレンドである。これは、ツァイス型やモリソン型に比べて観客の視野を遮る範囲が圧倒的に少なくて済むメリットがあるからである。

光学式における天体の運動は日周方位緯度歳差の4軸で制御される。ただし、歳差軸は一球式の場合省略されることがある。歳差軸を省略した場合は、歳差によって天の北極(南極)が移動した場合の日周運動を仮想軸を使って再現する。

惑星の運動で惑星棚を採用する場合は、水星金星火星木星土星および太陽をギアの組み合わせで運動を忠実に再現する。プラネタリウムという名称の由来でもあり、最も精緻な機構である。ただし、再現できる時間に限りがあり、現在を起点として数千年の範囲である。惑星投影機群を独立させる場合は、各々の投影機をXY制御すれば良いので、機構が簡単で、天文計算ができる限りどこまでも運動を再現できる。また、この機構を応用してスクリーン上に太陽を中心とした太陽系の各惑星の軌道を再現する(つまり太陽系を外宇宙から見たような視点から見る)ことが可能な機種もあり、こうした機能を持つ投影機を『宇宙型』として区別する場合もある。

この他に、東西南北などの文字や赤道天の赤道)、黄道子午線などの座標線、星座線、星座絵などを使用して、観客に分かり易く紹介するための投影機が使われる。これらを補助投影機と言う。変わったものとしては、流星群投影機、雷投影機、オーロラ投影機なども使われることがある。

[編集] デジタル式投影機

デジタル式では、ドームの全面または一部を1台または複数のビデオプロジェクターを使って映像を投影する。1台のプロジェクターを使用する場合は魚眼レンズを使うことが多いが、解像度および輝度の点で満足できないことが多い。最初のデジタル式プラネタリウムと言えるのはアメリカのエバンズ&サザーランド(Evans & Sutherland)が開発したDigistar(デジスター)である。これは魚眼レンズを用いる方式であった。なお、Digistarは白黒でベクトル式描画である。その後、五藤光学研究所により複数のビデオプロジェクターを組み合わせてドームに投影する方式を採用したVirtuarium(バーチャリウム)[1]が開発・商品化される。Virtuariumはカラーでラスター式の描画である。Virtuariumに続いて同様の方式に基づいた、エバンズ&サザーランド社のStarRider(その後Digistar 3に続く)、アメリカ・スカイスキャン(Sky-Skan Inc.)のSkyVision(その後DigitalSky2 に続く)、スピッツのDigiDome、ツァイスのADLIP[2]などが開発された。また、小規模ドーム用に魚眼レンズを用いるMEDIAGLOBEがコニカミノルタ社によって販売されている。

デジタル式プラネタリウムはコンピュータグラフィックスなどを使って自由に映像を展開できる点で、プラネタリウム番組の表現力が大幅にアップするメリットがある。その反面、解像度が光学式には遥かに及ばず、特に恒星を投影した時のリアル度は満足できるものではない。アメリカではデジタル式が流行しているが、光学式に対する根強い支持もある。

[編集] ハイブリッド式投影機

光学式投影機とデジタル式投影機を両方設置し、投影する番組の内容に応じてそれぞれの投影機を別々にも同時にも使用可能としたシステムを指す。この方式を採用する場合、大抵はドームの中央には光学式投影機を設置し、スクリーンの壁面にデジタル投影用プロジェクターを設置する形となる。光学式の精緻な星像とデジタル式の自在な映像という双方の利点を併せ持ち、より臨場感溢れる番組制作および投影が可能となる反面、複数の投影機が必要となることからイニシャルコストの面ではどうしても割高になってしまう欠点もある。また、投影機を複数台稼動させることに伴う操作系の複雑化や、システムの特色を最大限に生かした番組を制作しようとする場合における番組製作に掛かる時間的コストや人的コストも無視することはできない。

ハイブリッド式投影機に用いられる機材(光学式投影機とデジタル式投影機)はほとんどの場合同一のメーカーで揃えることが多く、投影機メーカーもこうした運用に対応した機材を各種ラインアップしている(五藤光学研究所のCHIRON、コニカミノルタプラネタリウムのジェミニスター、カール・ツァイスのUNIVERSARIUMなど)が、まれに導入する側の意図により、光学式投影機とデジタル式投影機が異なるメーカーになることもある(一例として大阪市立科学館では、光学式投影機はコニカミノルタ製を使用しているがデジタル式投影機は五藤光学製を採用している。そのため、システム全体の呼称もコニカミノルタにおけるハイブリッドシステムの呼称である『ジェミニスター』は使用していない)。

このように導入時や運用時におけるコストなどの問題はあるものの、多彩な投影と柔軟な運用が可能であることからハイブリッド式投影機の需要は高く、現在、施設の新規建設・改築や既存機材の老朽化にともなう投影機の更新や入替の際にハイブリッド式投影機を導入する施設はドーム径20mクラスの比較的大規模な施設において増加している。

[編集] 投影ドーム

ドームの形状としては、大きく水平式傾斜式に分けられる。水平式は実際に空を見上げたようにお椀型のドームをかぶせたような形状で、直感的である。水平式の場合は座席を同心円状に配置することが多かったが、解説映像を見せながら進行する番組が増えてきた影響で、特定の方向を向くように並べる方式も採用されている。

一方傾斜式は、ドームを5-30度ほど傾け、座席を一方向に向けて階段状に配置する方法である。この方式のメリットはどの座席に座っても比較的プラネタリウムの投影像を見やすいことが挙げられる。ただし、IMAXなどの全天周映像が同時に導入される機会が増えたこととも無関係ではない。このような構造を採用した施設を宇宙劇場(Space Theater)と呼ぶことがある。

[編集] 操作方法

プラネタリウムは指定した日時の地球上のある地点から見た星空を再現するもので、その制御をコンソール(制御卓)で行う。制御の基本は日周運動で、地球の自転に伴う1日の空の動きを解説する。地球の観測位置を変える時は経度・緯度を変更する。また、観客に対象となる天体を正面に移動するため、方位を変更する場合がある(基本は南が正面になるが、北半球における天の北極を見せたい場合は北を正面にする、など)。また、恒星の間を動く惑星の運動を解説する場合は年周を操作する。年周を操作すると、地球の自転をキャンセルして星空を背景にした惑星の動きのみを観察することができる。さらに、歳差を操作することにより、地球の自転軸がコマ振り運動することによる天の北極(南極)の移動を示すことができる。これらは各々のダイアルまたはボリュームを操作することにより行えるが、最近のプラネタリウムでは年月日時分をテンキーで入力して直ちにその空を再現することもできる。

また、上記のオペレーター(操作者)による操作以外に、あらかじめ決められた星空を次々と連続的に再現するプログラムを組んでおき、自動的に観客に見せることもできる。最近のプラネタリウム館ではむしろこの自動演出による上映が主流である。

[編集] 主な開発メーカー

[編集] ハードウェア

過去に製作していたメーカー
特殊機材を開発したメーカー
簡易型プライベート用機材を開発したメーカー

[編集] ソフトウェア

メーカとは独立している製作者を以下に示す。

  • 岩崎一彰(宇宙精密美術における日本の第一人者)
  • 沼澤茂美(JPL、日本プラネタリウムラボラトリの主催者)
  • 藤井旭(ユーモラスな天体画や天体犬チロに関する書籍で著名)


[編集] その他

天文雑誌や科学雑誌を編集している出版社などからも、厚紙製のプラネタリウムが工作用に出版されている。これは、ピンホール型の製品であり、厚紙を切り抜き、針で穴を開け、組み立てる。なお、中心部に豆電球を取り付けることで、簡単に組み立てることが可能である。

また、学校教育用に開発された製品の中には、投影用の小さなドームを含むものもある。これは、理科資料室などへ移動して簡単にしまうことができるため、一時期数多くの学校などにおいてあった製品でもある。

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク

ウィキメディア・コモンズ

[編集] 脚注

  1. ^ 後継のVirtuarium IIはDigistar 3のOEM
  2. ^ ADLIPはアメリカ・sgi社とドイツ・シュナイダー(Schneider Laser Technologies AG)との共同開発
  3. ^ 試作のみであり、実際に販売はしていない。

[編集] 参考文献

  • 大平貴之(著)、プラネタリウムを作りました、エクスナレッジ、2003
  • 日本プラネタリウム協議会、会報
  • プラネタリウム製造各社の技術資料