プッシー・ライオット

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プッシー・ライオット
Pussy Riot
プッシー・ライオットの7人のメンバー}
プッシー・ライオットの7人のメンバー
基本情報
出身地 ロシアの旗 ロシア
モスクワ
ジャンル パンク・ロック
ライオット・ガール
活動期間 2011年 - 現在
公式サイト http://pussy-riot.livejournal.com

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プッシー・ライオット (: Пусси Райот: Pussy Riot) は、ロシアフェミニストパンク・ロック集団。許可を取らずに、モスクワ地下鉄赤の広場即興演奏をすることを特徴としている。バンド名は"プッシー(子猫、あるいは女性器)の叛乱"の意。

2012年3月、モスクワの救世主ハリストス大聖堂で、即興の無許可演奏を行い、メンバー3人が逮捕され、「フーリガン行為」の咎で7月下旬から裁判が始まった。バンドのメンバーは、拘束中の虐待や、最長7年の刑が下る可能性のあることを訴えてロシア国内外からの同情を集めたが、他方では、信仰心のあつい人々の感情を害したとして批判もされた。連邦検察官アレクセイ・ニキフォロフは、「神を冒涜した」として3人に実刑を求めている。プッシー・ライオット側の弁護士たちは、この裁判の状況が、ソビエト連邦時代の見世物裁判 (Show trial)(モスクワ裁判)を再現するものであると述べている[1][2]

演奏と影響[編集]

プッシー・ライオットは、寒さの厳しい天候のときも、演奏中もインタビューに応じるときも、鮮やかな色のドレスとタイツの衣装に目出し帽で顔を隠しており、インタビューには常に偽名で応じている。この集団は10人ほどで演奏を行なうが、これとは別に15人ほどが技術面の裏方や、インターネットにポストされるビデオの撮影・編集などを行なっている[3][4]

グループによれば、パンク・ロックオイ!のバンドであるAngelic UpstartsCockney Rejectsシャム69eRaThe 4-Skinsから最も重要な音楽的インスピレーションをうけているという[5][6]

また、アメリカ合衆国パンク・ロック・バンド、Bikini Kill や、1990年代のライオット・ガール (Riot grrrl) ムーヴメントにもインスピレーションを受けている。プッシー・ライオットによれば、「私たちと共通しているのは、軽率な言行、政治色の強い歌詞、フェミニスト的言説の重要性、非標準的な女性イメージといったところ」だという[7]

教会における抗議行動[編集]

2012年2月21日ウラジーミル・プーチンが再選された大統領選挙への抗議活動の一環として、グループのメンバーである3人の女性たちがモスクワロシア正教会救世主ハリストス大聖堂を訪れ、十字を描いて至聖所前のソレヤSoleas)と呼ばれるスペースに上がり頭を垂れてから、「Панк-молебен Богородица, Путина прогони(聖母様、プーチンを追い出してください)」を歌いはじめた。1分もしないうちに、彼女たちは警備員によって建物の外へと連れ出された[8]。この様子を捉えた映像は、後にこの曲のビデオ・クリップに使用された[9]

この曲の中で、彼女たちは、「テオトコス (Θεοτόκος)」(神の母、すなわち聖母マリア)にあたるロシア語「ボゴロディーツァ (Богородица)」に、「プーチンを辞めさせて」と訴えている。この曲の歌詞は、モスクワ総主教キリル1世のことを、神よりもプーチンを信じているように描いたものだった[10]。総主教は、選挙戦が始まる前から、大統領候補としてプーチンを公然と支持していた[11]

逮捕と訴追[編集]

2012年3月3日、プッシー・ライオットのメンバーとされたマリア・アリョーヒナ英語版 (Мария Алёхина) と ナジェージダ・トロコンニコワ英語版 (Надежда Толоконникова) がロシア当局に逮捕され、2人はフーリガン行為の咎で訴追された。当初2人は、グループのメンバーであることを否認し、拘留により幼い子どもたちから引き離されたことに抗議し、4月に裁判が始まる前にはハンガー・ストライキも行なった[12]

3月16日に、もうひとり、それまでこの事件の目撃者として取り調べを受けていたエカチェリーナ・サムツェヴィッチ英語版 (Екатерина Самуцевич) が、同様に逮捕、訴追された[13]

6月4日、彼女たちは2,800ページに及ぶ起訴状により正式に起訴された[14]7月4日になって、彼女たちは突然、7月9日までに弁論準備を終えるべしとの告げられた。これに対して、彼女たちはハンガー・ストライキを宣言し、事実上2日間(告知された4日は水曜日、9日は月曜日で、平日は木・金の2日しかない)では裁判の弁論準備には不十分だと主張した[15]7月21日、裁判所はさらに6か月の拘置延長を認めた[16]

拘束されたプッシー・ライオットの3人のメンバーは、政治犯救援組織 Союз солидарности с политзаключенными (СПП) から政治犯と認定された[17]アムネスティ・インターナショナルは、「ロシア当局の反応の厳しさ」を理由に彼女たちを良心の囚人と認めた[18]

ロシア国内では、さらに厳しい見解が大々的に表明された。3月21日モスクワリザパラジェーニヤ教会(祭服教会) (Церковь Ризоположения) の聖体礼儀において、モスクワ総主教キリル1世は、プッシー・ライオットの行為は「冒涜的」であるとし、「悪魔が私たちすべてを笑いものにしている ... 偉大な祭壇の前で嘲笑することが許されるなら、また、このような不謹慎が、勇気のある政治的抗議表現であるとか、許容されるべき範囲の行為であるとか、害のない冗談だとされるなら、私たちに未来はない」と述べた[19]。人気歌手アーラ・プガチョワは、女性の声を代弁して、拘束されている3人は投獄されるのではなく、コミュニティへの奉仕活動に従わせるべきだと述べた[20]BBCの特派員ダニエル・サンドフォード (Daniel Sandford) は、「彼女たちの扱いは—1967年にロック・バンド、ローリング・ストーンズのメンバーが裁判にかけられたときに作られた言い回しで言うならば—彼女たちは「車輪で轢かれる蝶」だと感じる多くのロシアの人々に、深刻な不安を与えた[21]

ナジェージダ・トロコンニコワ
エカチェリーナ・サムツェヴィッチ
マリア・アリョーヒナ

2012年6月下旬、裁判日程も決定されないまま続いていた3人の拘置への懸念が高まり、過剰かつ恣意的な処置への危惧から、公開状が作成されることになった。この公開状には、反体制運動に連なる主要な人々が署名しただけでなく、プーチン支持者として知られる映画監督フョードル・セルゲーヴィチ・ボンダルチュク (Фёдор Сергеевич Бондарчук) や、プーチンの再選運動のビデオに登場した女優チュルパン・ハマートヴァと俳優エフゲニー・ミローノフまでもが名を連ねた[22]ロシア映画人同盟 (Союз кинематографистов России) の代表である ニキータ・ミハルコフは、インタビューに応え、彼女たちに「反対」する立場から、この公開状に署名すると述べた[23]

2012年7月、社会学者アレック・D・エプシテイン (Алек Д. Эпштейн) が、3人を支援するために、ロシアの芸術家多数の作品を集めて編集した『Алек Д. Эпштейн. Искусство на баррикадах: Pussy Riot, «Автобусная выставка» и протестный арт-активизм(バリケードの芸術:プッシー・ライオット、«バス展示»、抗議する芸術活動)』を出版した[24]

3人の女性たちの裁判は、モスクワのハモーヴニキХамовники)区の地区裁判所で7月30日に始まった[25]。「宗教上の憎悪ないし悪意を動機とする組織的集団によって実行された、事前に準備されたフーリガン行為」の罪で訴追された3人は、最長7年の懲役に処される可能性がある[26]。7月上旬にモスクワで行なわれた世論調査では、回答者のほぼ半数が裁判に反対であるものの、36%は裁判を支持しており、残りは態度を決めかねているという結果が出た[27]。被告たちは無罪を主張し、意図的に法を犯す抗議を行なったものではない、と述べた[26]7月31日イギリスの日刊紙『フィナンシャル・タイムズ』は社説を出し、被告たちは既に「これまでに受けた惨い仕打ちのために、国際的にも特別な大事件 (cause célèbre) となっている」と論じた[28]

被告たち[編集]

国際的な支援[編集]

被告たちは、以下のような多数のミュージシャンたちからの支持表明を受けている:ケイト・ナッシュ (Kate Nash)[32]レッド・ホット・チリ・ペッパーズ[33]スティング[33][34]ピーター・ガブリエル[35]コーナーショップ[32]フェイス・ノー・モア[36]フランツ・フェルディナンドアレックス・カプラノス (Alex Kapranos)[32]ペット・ショップ・ボーイズニール・テナント[32]パティ・スミス[37][38]ビースティ・ボーイズ[39]RefusedZola Jesus[39]ダイ・アントワード[39]ジャーヴィス・コッカー[32]ピート・タウンゼント[32][40]ザ・ジョイ・フォーミダブル[32]Peaches,[36] マドンナ[41][42]ジェネシス[43]Tegan and Sara[44]ジョニー・マー[32]コートニー・ラブ[45]イーロ・ランタラ[43]Propagandhi[46]アンタイ・フラッグ,[43]コリーヌ・ベイリー・レイ[32]Kathleen Hanna,[47]ビョーク[48]オノ・ヨーコ[35]。イギリスのコメディアン、スティーヴン・フライ[49]や、元コメディアンでアイスランドレイキャビック市長 Jón Gnarr もバンドへの支持を表明している[50]

ドイツ連邦議会の議員有志121名は、ウラジミール・グリーニン (Владимир Гринин) 在ドイツ・ロシア大使に、拘束されている3人を支持する旨の書簡を送った。この書簡は、彼女たちに対する処遇が当を失した過剰なものであると述べている[51]2012年]8月9日、プッシー・ライオットを支持する400人がベルリンで、鮮やかな色の目出し帽を被って行進し 、バンドへの支持を表した[52]。同様のデモは小規模ながらモスクワでも行なわれ、8月15日には逮捕者4人が出る騒動となった[53]

判決[編集]

8月17日、モスクワの裁判所は被告となっていた3人に禁固2年の実刑判決を言い渡した。残る2人のメンバーは国外に逃亡したことがわかっており、警察が捜査を開始したことが伝えられた[54]

控訴審判決[編集]

控訴審判決はモスクワ市裁判所で10月10日に行われ[55]、エカチェリーナ・サムツェヴィッチに「警備員に取り押さえられたために祭壇でパフォーマンスをすることはできなかった」と認定して執行猶予2年を言い渡し、エカチェリーナは釈放された。残る2人は控訴を棄却し実刑判決を維持した[56][57]。釈放されたエカチェリーナは、CNNのインタビューに答え、今後もプーチン大統領への抗議活動を続けると述べた。弁護団は欧州人権裁判所への提訴を検討していると報じられている。

出典・脚注[編集]

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  1. ^ Miriam Elder (2012年8月3日). “Pussy Riot trial 'worse than Soviet era'”. The Guardian. 2012年8月8日閲覧。
  2. ^ Jennifer Rankin (2012年8月9日). “Pussy Riot case likened to Stalin show trials”. Irish Times. 2012年8月9日閲覧。
  3. ^ Corey Flintoff (2012年2月8日). “In Russia, Punk-Rock Riot Girls Rage Against Putin”. NPR. 2012年2月10日閲覧。
  4. ^ Miriam Elder (2012年2月2日). “Feminist punk band Pussy Riot take revolt to the Kremlin”. The Guardian. http://www.guardian.co.uk/world/2012/feb/02/pussy-riot-protest-russia 2012年8月8日閲覧。 
  5. ^ Veli Itäläinen (2012年3月26日). “Pimppimellakka omin sanoin” (Finnish). Fifi, Voima. http://fifi.voima.fi/blogikirjoitus/2012/maaliskuu/pimppimellakka-omin-sanoin 2012年8月8日閲覧。 
  6. ^ Henry Langston (2012年3月). “A Russian Pussy Riot”. Vice. http://www.vice.com/read/A-Russian-Pussy-Riot 2012年8月8日閲覧。 
  7. ^ Sergey Chernov (2012年2月1日). “Female Fury”. The St. Petersburg Times (1693 (4)). http://sptimes.ru/index.php?action_id=2&story_id=35092 2012年8月8日閲覧。 
  8. ^ Mark Feigin (2012年4月19日). “Интервью | Гости | Русская служба новостей” (Russian). Rusnovosti.ru. 2012年8月8日閲覧。
  9. ^ Панк-молебен Богородица, Путина прогони Pussy Riot в Храме”. Audiosurfx/YouTube (2012年2月21日). 2012年8月14日閲覧。
  10. ^ Pussy Riot (2012年2月21日). “The text of the song in Russian” (Russian). http://pussy-riot.livejournal.com. 2012年7月31日閲覧。
  11. ^ Bennetts, Marc (2012年8月13日). “In Putin’s Russia, Little Separation Between Church and State”. The Washington Times. 2012年8月16日閲覧。
  12. ^ “Russian punk band Pussy Riot go on hunger strike in Moscow”. The Week. (2012年3月6日). http://www.theweek.co.uk/russia/russia-election/45722/russian-punk-band-pussy-riot-go-hunger-strike-moscow 2012年8月8日閲覧。 
  13. ^ “Third member of 'Pussy Riot' charged over punk prayer”. RT. (2012年3月16日). http://rt.com/news/prime-time/third-member-pussy-riot-765/ 2012年8月8日閲覧。 
  14. ^ Участниц Pussy Riot официально обвинили в хулиганстве по мотивам религиозной ненависти” (Russian). rosbalt.ru (2012年6月4日). 2012年8月8日閲覧。
  15. ^ Jonathan Earle (2012年7月4日). “Pussy Riot Suspects Go on Hunger Strike”. The Moscow Times. 2012年7月4日閲覧。
  16. ^ Gabriela Baczynska (2012年7月21日). “Russia extends jailing of Pussy Riot activists”. Reuters. 2012年7月21日閲覧。
  17. ^ Троих предполагаемых участниц Pussy Riot признали политзаключенными [Three of the alleged participants of Pussy Riot recognized as political prisoners]” (Russian). Росбалт. (2012年3月25日). http://www.rosbalt.ru/moscow/2012/03/25/961247.html  Google translation.
  18. ^ Russia: Release punk singers held after performance in church”. Amnesty International (2012年4月3日). 2012年4月4日閲覧。
  19. ^ “Pussy Riot reply to Patriarch”. RT. (2012年3月27日). http://rt.com/art-and-culture/news/pussy-riot-clash-patriarch-567/ 2012年8月8日閲覧。 
  20. ^ Marc Bennetts (2012年4月16日). “Russia's Pop Queen Wants Freedom for Pussy Riot”. RIA Novosti. 2012年4月16日閲覧。
  21. ^ Daniel Sandford (2012年7月30日). “Pussy Riot trial: Muscovites reflect on divisive case”. BBC News Online. http://www.bbc.co.uk/news/world-europe-19041458 2012年7月30日閲覧。 
  22. ^ Miriam Elder (2012年6月30日). “Russians join in call for Pussy Riot trio’s release”. The Guardian. 2012年6月30日閲覧。
  23. ^ Mikhalkov against Pussy Riot” (Russian). echomsk.spb.ru (2012年7月25日). 2012年8月16日閲覧。 Google translation
  24. ^ Valery Ledenev (2012年7月23日). “Борьба продолжается!”. artchronika.ru. 2012年7月25日閲覧。
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  56. ^ AFPBB: プーチン批判で禁錮刑の「プッシー・ライオット」、1人釈放
  57. ^ CNN日本版: 釈放された反プーチンバンドのメンバー「抗議活動続ける」

外部リンク[編集]