フレデリック・ソディ

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ノーベル賞受賞者 ノーベル賞
受賞年:1921年
受賞部門:ノーベル化学賞
受賞理由:放射性物質の化学に関する研究

フレデリック・ソディ(Frederick Soddy, 1877年9月2日1956年9月22日)は、イギリス化学者である。放射性元素の研究で、アルファ崩壊ベータ崩壊などを見出した。1921年に原子核崩壊の研究、同位体の理論に関してノーベル化学賞を受賞した。また、後には経済学に関する研究もおこなっている。

月の裏にある小クレーターソディと、含ウランケイ酸塩鉱物ソディ石(Soddyite)に命名されている。

経歴と主な業績[編集]

イングランドイーストボーンに生まれる。オックスフォード大学のメルトンカレッジを卒業する。

1900年にカナダモントリオールにあるマギル大学で化学の実験助手に就任する。この大学でソディはアーネスト・ラザフォード放射性崩壊の研究をおこなった。ソディとラザフォードは放射性元素の特異な性質が、他の元素へと崩壊することによって起きることを明らかにした。この放射性崩壊はアルファ線ベータ線ガンマ線を発生させていた。放射性物質が発見された当時、誰にもその原因はわからなかったのである。原子の変化が実際に起きていることを証明するため、ソディとラザフォードは慎重に研究を進める必要があった。

ソディの研究と放射性物質に関する新たな知見をわかりやすく紹介した評論は、ハーバート・ジョージ・ウェルズの小説『解放された世界英語版』(1914年)に大きなインスピレーションを与えた。この小説は未来に起きる長期の戦争で複葉機から投下される原子爆弾が描かれていることが特徴で、混乱から平和な社会が出現する内容である。ソディは著書『Wealth, Virtual Wealth and Debt(富,仮想的な富そして負債)』(1926年)においてウェルズの『解放された世界』を称賛している。ソディはまた、放射性物質のプロセスがおそらく恒星の原動力であろうと述べている。

1903年にウィリアム・ラムゼーユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンで、ラジウムの崩壊が、ヘリウムの正の電荷を持つアルファ粒子を生成していることを明らかにした。実験ではラジウムの試料は中空のガラス球内に設置されたガラス容器に封入された。アルファ粒子は薄いガラスの壁を通り抜けることができたが、その周囲のガラス容器の中にとどまった。長い時間をかけた実験ののち、ガラス球の内容物をスペクトル解析した結果、ヘリウムの存在が明らかになった。この成分は少し前にローベルト・ブンゼングスタフ・キルヒホッフによって、太陽スペクトルの分析から発見されていたものであった[1]

1904年から1914年までソディはグラスゴー大学で講師を務め、この間にウランがラジウムへと崩壊することを示した。ソディはまた、放射性元素が化学的性質が同一にもかかわらず複数の原子量を持つ可能性を示した。ソディはこの概念を、「同じ場所」を意味する「アイソトープ」と名付けた。この名前はマーガレット・トッド(Margaret Todd)から示唆を受けたものである。のちにジョゼフ・ジョン・トムソンが非放射性元素も複数の原子量を持ちうることを示した。ソディはアルファ崩壊では原子番号が2つ小さい方へ、ベータ崩壊では1つ大きい方へと原子が遷移することを示した。これは放射性元素群の関係を理解する上で基礎となるステップだった。

ソディは『The Interpretation of Radiumu』(1909年)[2]と『Atomic Transmutation』(1953年)という著作を出版した。1914年にはアバディーン大学の教授に任命され、第一次世界大戦に関連した研究をおこなった。1919年に化学の教授としてオックスフォード大学に移り、1936年に退職するまで務めた。ソディは研究室と講義要目の再編を手がけている。1921年に放射性崩壊の研究と同位体元素理論の公式化への貢献により、ノーベル化学賞を受賞した。

1921年から1934年までの間に執筆した4冊の著書では、「国際金融関係の根本的な再構築のための非現実的な活動」を続け、経済学について物理学、とりわけ熱力学の法則に基づいた見解を提供したが、「変人」として痛烈に退けられた。彼の主張の核心は「金本位制を捨てて、国際為替市場を変動相場制へ移行し、輸出超過と財政赤字をマクロ経済政策のツールとして周期的な傾向に対応する。これを容易にするため、消費者物価指数を含む経済統計部局を設置する」というものであったが、これは今日ごく普通に実施されている。一方、ソディのフラクショナルリザーブ銀行(Fractional-reserve banking)に関する意見は「現在も常識の範疇の外にとどまっている」[3]

1936年に六球連鎖の定理を再発見した。この問題に登場する内接した円弧は「ソディの円弧」として知られていることがある。月のクレーターであるソディ(Soddy (crater))は彼にちなんで名付けられた。ソディは1956年にブライトンで死去した。

著書[編集]

  • Radioactivity (1904)
  • The Interpretation of Radium (1909)
  • The Chemistry of the Radioactive Elements (1912?1914)
  • Matter and Energy (1912)
  • Science and life: Aberdeen adresses (1920)
  • Cartesian Economics: The Bearing of Physical Science upon State Stewardship (1921)
  • Science and Life Wealth, Virtual Wealth, and Debt Money versus Man etc (1921)
  • Nobel Lecture - The origins of the conception of isotopes (1922)
  • Wealth, Virtual Wealth and Debt. The solution of the economic paradox (George Allen & Unwin, 1926)
  • The wrecking of a scientific age (1927)
  • The Interpretation of the Atom (1932)
  • Money versus Man (1933)
  • The Role of Money, Frederick Soddy (George Routledge & Sons Ltd, 1934. Internet Archive Gutenberg)
  • Money as nothing for something ; The gold "standard" snare (1935)
  • Present outlook, a warning : debasement of the currency, deflation and unemployment (1944)
  • The Story of Atomic Energy (1949)
  • Atomic Transmutation (1953)

脚注[編集]

  1. ^ William Ramsay; Frederick Soddy (1903 - 1904). “Experiments in Radioactivity, and the Production of Helium from Radium”. Proceedings of the Royal Society of London 72: 204?207. doi:10.1098/rspl.1903.0040. http://links.jstor.org/sici?sici=0370-1662%281903%2F1904%2972%3C204%3AEIRATP%3E2.0.CO%3B2-V. 
  2. ^ 本書に「古代文明が核兵器で滅亡したと信じる」という記述があるとの主張が見られるが、これは正しくない。詳細は古代核戦争説を参照。
  3. ^ Eric Zencey: Mr. Soddy’s Ecological Economy. In: The New York Times. April 12, 2009