フルオロアンチモン酸

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索
フルオロアンチモン酸
識別情報
CAS登録番号 16950-06-4 チェック
PubChem 21953576
ChemSpider 20137913
EINECS 241-023-8
特性
化学式 HF6Sb
モル質量 236.76 g mol−1
精密質量 235.902062306 g mol−1
外観 無色液体
酸解離定数 pKa −25
塩基解離定数 pKb 39
危険性
主な危険性 腐食性
Rフレーズ R26, R29, R35
関連する物質
関連する HF
SbF5
マジック酸
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

フルオロアンチモン酸(フルオロアンチモンさん、fluoroantimonic acid)は、フッ化水素五フッ化アンチモンの様々な比の混合物である[1]。1対1の混合物はこれまで知られている中で最も強い超酸を形成する。この酸は、炭化水素でさえもプロトン化することができ、カルボカチオンとH2を与える[2]

フッ化水素 (HF) とSbF5の反応は発熱反応である。HFは非常に優れた酸化剤であり、SbF5分子を攻撃し付加体を与える。フルオロアンチモン分子では、アニオンが水素に配位している。以前は、非常に弱い求核性および非常に弱い塩基性しか示さないため、非配位性陰イオン英語版に分類されていた。

フルオロアンチモン酸分子のプロトンは「裸」であると呼ばれるにもかかわらず、実際はヒドロニウムイオンのように、非常に弱い供与結合によってフッ素原子に常に付加している[3]。しかしながら、この非常に弱い供与結合が、この系の強烈な酸性に必要である。フルオロアンチモン酸は、100%硫酸よりも2×1019(2000)倍強い[4]

Reaction of HF with SbF5.png

構造[編集]

組成式[H2F+][Sb2F11]と[H3F2+][Sb2F11]の2種類の塩が結晶化され、単結晶X線回折により分析された。どちらの塩でも、アニオンはSb2F11である[5]。先に述べた通り、SbF6は弱い塩基に分類されることから、より大きなモノアニオンであるSb2F11もより弱い塩基であると予想される。

他の酸との比較[編集]

以下の値[要出典]は、ハメットの酸度関数英語版に基づいている。

応用[編集]

この異常に強い酸は、ほぼ全ての有機化合物をプロトン化する。1967年、BickelとHogeveenは、HF-SbF5イソブタンからH2を、ネオペンタンからメタンを取り除くことを示した[6][7]

(CH3)3CH + H+ → (CH3)3C+ + H2

(CH3)4C + H+ → (CH3)3C+ + CH4

安全性[編集]

HF-SbF5は、によって迅速かつ爆発的に分解する。また、実質的に知られている全ての溶媒と反応する[1]。HF-SbF5と共存できることが確かめられている溶媒は、塩化フッ化スルフリルおよび液化二酸化硫黄である。クロロフルオロカーボン (Chlorofluorocarbonも溶媒として使用される。HF-SbF5の容器はPTFE(テフロン)製である。

脚注[編集]

  1. ^ a b Olah, G. A.; Prakash, G. K. S.; Wang, Q.; Li, X. (2004). “Hydrogen Fluoride–Antimony(V) Fluoride”. In L. Paquette Ed.. Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis. New York: J. Wiley & Sons. doi:10.1002/047084289. 
  2. ^ George Andrew Olah (2001). A life of magic chemistry: autobiographical reflections of a nobel prize winner. John Wiley and Sons. pp. 100–101. ISBN 0471157430. 
  3. ^ Michael Klein (2000年10月25日). “The quantum chemistry of proton "hopping" or transfer in his acid”. Pittsburgh Supercomputing Center. 2011年4月14日閲覧。
  4. ^ Olah, George A. (2005). “Crossing Conventional Boundaries in Half a Century of Research”. J. Org. Chem. 70 (7): 2413–2429. doi:10.1021/jo040285o. PMID 15787527. 
  5. ^ Mootz, D.; Bartmann, K. (1988). “The Fluoronium Ions H2F+ and H3F2+: Characterization by Crystal Structure Analysis”. Angew. Che. Int. Ed. 27: 391–392. doi:10.1002/anie.198803911. 
  6. ^ Bickel, A. F.; Gaasbeek, C. J.; Hogeveen, H.; Oelderik, J. M.; Platteeuw, J. C. (1967). “Chemistry and spectroscopy in strongly acidic solutions: reversible reaction between aliphatic carbonium ions and hydrogen”. Chemical Communications 1967: 634–5. doi:10.1039/C19670000634. 
  7. ^ Hogeveen, H.; Bickel, A. F. (1967). “Chemistry and spectroscopy in strongly acidic solutions: electrophilic substitution at alkane-carbon by protons”. Chemical Communications 1967: 635–6. doi:10.1039/C19670000635. 

関連項目[編集]