フッ素系界面活性剤

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フッ素系界面活性剤(フッソけいかいめんかっせいざい)はアルキル鎖中の水素原子をフッ素原子に置換した界面活性剤

水に溶解したときにイオンに解離するものと、イオン解離しないものに大別される。

性質[編集]

疎水基の分子間力が弱いため、フッ素を含有していない界面活性剤よりも表面張力が低い。10ppmの濃度でも水の表面張力を40mN/mまで低下させることが可能。

C-F結合が安定な結合であるため、物理化学的にも安定である。

主なフッ素系界面活性剤[編集]

PFOS
PFOA
  • ペルフルオロアルキルスルホン酸(CF3(CF2)nSO3H)
PFOS
  • ペルフルオロアルキルカルボン酸(CF3(CF2)nCOOH)
PFOA

また一分子内にフッ化炭素鎖と炭化水素鎖を有するハイブリッド界面活性剤という界面活性剤も存在する。親水基としてはスルホン酸塩、硫酸エステル塩、 リン酸エステル塩、ポリエチレンオキシド鎖を持つものなどがある。

性質はフッ素系界面活性剤よりもcmcが低く(cmcにおける表面張力はフッ素系界面活性剤が20代であるが、ハイブリッド界面活性剤は17~18mN/m)、粘度が高い。 [1]

合成[編集]

特定の鎖長の炭化水素化合物(PFOAの場合カプリル酸)を、フッ化水素との溶液中に電流を流して反応させる(電解フッ素化(ECF:Electro-Chemical Fluorination))。これによりC-H結合がC-F結合に置換される。

もう1つはテトラフルオロエチレンの短鎖重合によって合成する方法。(テロメリゼーション

用途[編集]

フッ素系界面活性剤をインキや塗料などに少量の添加することで表面張力を著しく低下させることができる。このことにより濡れ性の向上やピンホールの低減に効果的である。また、起泡性が高いため水成膜泡消火薬剤としても使われている。 疎水部が撥水性・撥油性を持つという誤った認識があるが、分子量が低く、親水親油性があるため実際には撥水撥油の性能は発揮されない。かって、PFOSやPFOAはポリテトラフルオロエチレンポリフッ化ビニリデンの製造の際に乳化剤として使用されていていたが、環境汚染の観点から最近ではあまり使用されていない。 [2]

環境問題[編集]

2000年に大手製造メーカーであった3M社は世界各地の野生生物中にPFOSが高濃度に検出されたことを明らかにし、同様の構造を有するPFOAについても製造を2002年に中止した。

PFOAは生体濃縮されないが、人体の血中での半減期は4.37年であり、生体内に蓄積される。[3]

デュポン中国江蘇省にあるプラントの労働者の血中からペルフルオロオクタン酸アンモニウム (APFO)又はPFOAの平均濃度は約2,250ppbであった。 またニュージャージー州ディープウォーター及びウェスト・バージニア州パーカーズバーグの同社のプラントで測定されたC8血中レベルは60~1,600ppbであった。[4]

PFOSは食物連鎖中で生物濃縮する。[5] 2005年6月にPFOSはストックホルム条約残留性有機汚染物質の対象物質への追加提案をされ、2008年6月27日EUにおいて0.005wt%を超える製品の販売や使用が制限された。(PFOS規制)

出典[編集]

  1. ^ オレオサイエンス 2004 第4巻第2号 (PDFファイル)
  2. ^ David A. Ellis, Scott A. Mabury, Jonathan W. Martin and Derek C. G. Muir (2001): Thermolysis of fluoropolymers as a potential source of halogenated organic acids in the environment. In: Nature 412, S. 321–324. doi:10.1038/35085548
  3. ^ R.Renner:Environ.Sci.Technol.,37,201A (2003)
  4. ^ デュポン社 中国の労働者から高いレベルのC8を検出 チャースルトン・ガゼット 2008年12月3日
  5. ^ M. M. Schultz, D. F. Barofsky, J. A. Field : Environ. Eng. Sci., 20,. 487 (2003)

参考文献[編集]

  • 「界面と界面活性剤−基礎から応用まで−」(日本油化学会、2004年