フォーラーネグレリア

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フォーラーネグレリア Naegleria fowleri
Naegleria trophA.JPG
フォーラーネグレリア
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: エクスカバータ Excavata
: ヘテロロボサ Heterolobosea
: シゾピレヌス目 Schizopyrenida
: ファールカンピア科 Vahlkampfiidae
: ネグレリア Naegleria
: フォーラーネグレリア N. fowleri
学名
Naegleria fowleri Carter, 1970[1]
和名
フォーラーネグレリア

フォーラーネグレリア学名: Naegleria fowleri)は、ヘテロロボサに属する自由生活性のアメーバであり、通常25–35℃ほどの温水環境で見付かる。他のアメーバ類とは異なり、生活環の中に鞭毛型を持つのが特徴。

人間に対して病原性を示し、原発性アメーバ性髄膜脳炎 (primary amoebic meningoencephalitis, PAM) を起こすことがある。これは中枢神経系が冒されることで、始めは嗅覚認知(匂い)の変化が起こり、続いて吐き気嘔吐発熱頭痛などを示し、急速に昏睡して死に至るものである。

1965年オーストラリアの Fowler と Cutler により報告され、Fowler にちなんで命名された。学名は上記の通り「Naegleria fowleri」だが、日本寄生虫学会の「寄生虫和名表」は「フォーラーネグレリア」となっている[1]

病態[編集]

通常PAMは免疫抑制の前歴のない健康な子供や若者で、最近淡水を浴びた者に起きる。N. fowleri は嗅粘膜や鼻孔組織を貫通し、嗅球の著しい壊死とそれに伴う出血が起きる。アメーバはそこから神経繊維をたどって頭蓋底を通り抜けてに達する。アムホテリシンBN. fowleri に対して現在のところ最も効果がある薬物療法であるが、PAMを発症している場合の予後は深刻で、臨床ではこれまで8例の生存例があるのみである。

アムホテリシンBは実験レベルでは N. fowleri を壊滅させるし、合成リファンピシン製剤に加えて望ましい選択肢である。より攻撃的な抗体血清に基づく処置が検討されており、ゆくゆくは広域抗生物質よりも効果的だと示されるかもしれない。しかし現時点では生前に診断された例が少ないため、時機を逃さぬ診断こそが治療成功への極めて大きな障害として残っている。

N. fowleri は様々な種類の液体無菌培地や細菌を塗った無栄養寒天培地で生育可能である。水からの検出は、水試料に大腸菌を加えて遠心分離し、その沈殿を無栄養寒天培地に加えて行う。数日後に寒天培地を検鏡し、ネグレリアのシストを形態的に同定する。種同定の最終確認は様々な分子生物学・生化学的手法で行える[1]

日本では、1996年11月に佐賀県鳥栖市での25歳女性(発症9日目に死亡)が2011年現在唯一の感染例である(感染経路は不明)。

近縁種[編集]

フォーラーネグレリアの生活環
左から嚢胞鞭毛虫栄養体

Naegleria lovaniensis は、N. fowleri と形態学的にも生態学的にも区別できないが、病原性を持たない。

これらに Naegleria johanseniNaegleria martinezi を加えた4属が、ネグレリア内のサブグループ cruster 1 に属す[2]

脚注[編集]

  1. ^ a b 日本寄生虫学会用語委員会 「暫定新寄生虫和名表」 2008年5月22日
  2. ^ De Jonckheere, Johan F. (2006), “Isolation and molecular identification of free-living amoebae of the genus Naegleria from Arctic and sub-Antarctic regions”, European Journal of Protistology 42 (2): 115–123, doi:10.1016/j.ejop.2006.02.001 

関連項目[編集]

外部リンク[編集]