フォーブルドン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索

フォーブルドン (fauxbourdonfauxbordonfaux bourdon)は、中世後期から初期ルネサンスに、特にブルゴーニュ楽派の作曲家たちによって用いられた和声技法である。フランス語で偽りの低音の意味である。

この技法の実践者としてギヨーム・デュファイが有名であり、彼の創始になるものとの説もある。平行和声の単純な響きが、多くは典礼文による歌詞を聞き取りやすくしている。

もっとも単純なフォーブルドンの形式は、定旋律と6度下、完全4度下の3声から成る。単調さを防ぐため、また終止に際して最低音部は時として最上声のオクターブ下に跳躍し、他の声部はわずかに装飾されることがある。通常は曲のごく一部で使用される。

フォーブルドンの例。現代記譜法によるギヨーム・デュファイのマリア・アンティフォンアヴェ・マリス・ステラ」の冒頭。最上声と低音は自由に作曲され、フォーブルドンで書かれた中間の声部は正確に最上声を完全4度下になぞっている。低音部は常にではないが、しばしば最上声の6度下であり、装飾を施され、オクターブ下で終止する。

聖歌の歌唱[編集]

聖歌においてはこの語は、会衆が旋律を平行8度で歌う上を何人かがデスカント[1]で歌うことを意味することがあるが、歴史的にはこの語は、ジョン・ダウランドジャイルズ・ファーナビートマス・レイヴンズクロフトといった16〜17世紀のイングランドの作曲家たちによって書かれた、旋律をテノールに持つ4声部の曲を指すのに用いられた 。

歴史[編集]

フォーブルドンの最も早い例はボローニャ手稿 I-BC Q15 (Bologna, Civico museo bibliografico musicale, Q15)に見られるものであろう。これは1440年頃に編纂され、デュファイの1430年ごろの作品などいくつかの例が含まれている。15世紀の多くの曲が作曲者不明であり、成立年代も疑わしいことから、フォーブルドンの創始者を正確につきとめるのは難しいが、ここに収められたデュファイの"Missa Sancti Jacobi"の終結部にはフォーブルドンの最初の実践が見られる。

年代を確定できる最初の例はデュファイのモテット"Supremum est mortalibus"に見られる。この曲はローマ教皇エウゲニウス4世ジギスムントの紛争の和解協定に際して書かれ、その後1433年5月31日にジギスムントは教皇によって神聖ローマ皇帝に戴冠された。この4声部のモテットではテノール(最低声部)が消えると上の3声部がフォーブルドンで開始される。

最初に用いられたのはイタリアと見られるにしても、フォーブルドンは15世紀中葉までネーデルラントを風靡したブルゴーニュ楽派の特徴的なスタイルとなった。ジル・バンショワアントワーヌ・ビュノワヨハンネス・ブラッサール (Johannes Brassart) らは、このスタイルを、常に彼らの個人様式にあわせて頻繁に用いた。

15世紀のイングランドではこれと関連しつつ別個に発展が見られ、faburdenと呼ばれた。フレーズの終わりにオクターブと5度の協和音程をもち、6-3度の和声の流れを伴うfaburdenは表面的にはフォーブルドンに類似するものの、こちらは既存の旋律[2]に和声を付ける図式的な方法であり、旋律は中間の声部に置かれた。

脚注[編集]

  1. ^ 対旋律、多くは旋律よりも高い音域におかれる(en:descantより)。
  2. ^ 原語はchant