フェニックス (ミサイル)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索
AIM-54 Phoenix
AIM-54A (right) on F-14 at NAS Pax 1984.JPEG
種類 長射程空対空ミサイル
製造国 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
設計 ヒューズエアクラフト
レイセオン
性能諸元
ミサイル直径 0.38 m
ミサイル全長 3.9 m
ミサイル全幅 0.9 m
ミサイル重量 460 kg
弾頭 近接信管、高性能爆薬
60 kg
射程 210 km(110海里)以上
推進方式 固体燃料ロケット
誘導方式 セミ・アクティブ
終末 アクティブ・レーダー・ホーミング(ARH)
飛翔速度 マッハ 5
テンプレートを表示

AIM-54 フェニックス: Phoenix)は、長射程空対空ミサイルである。F-14 トムキャットのみが使用でき、6発まで搭載することができた。

概要と開発経緯[編集]

弾頭は通常タイプ(核弾頭ではない)。専用に開発されたレーダー/火器管制装置(AN/AWG-9)は最大24目標の同時探知・追尾能力を備えており、このうち最大で6機の目標に対して、ほぼ同時発射が可能である。全天候下での運用が可能で、強力なジャミングに曝された状況でも支障はない。ただし、F-14にフェニックスを6発搭載した状態での航空母艦への着艦は重量と甲板強度の関係上不可能であり、着艦時には海上で2発投棄する必要がある。そのため、運用規定により通常はフェニックスの搭載は4発以下に制限されている(残りのハードポイントにはスパローサイドワインダーなどが搭載される)。

1950年代後半のアメリカ海軍は、F6D開発計画にも見られるように、ソビエト連邦軍の大型爆撃機を目標として、長距離空対空ミサイルで迎撃することを構想していた。搭載ミサイルとしてAAM-N-10イーグル空対空ミサイルが1957年より研究されていたが、これは1960年に中止された。

一方でアメリカ空軍は、要撃機用の長射程ミサイルとして、AIM-47を開発していた。XF-108YF-12への搭載が考えられていたが、両機ともXやY番号が外れなかった事からもわかるとおり、開発は中止され実戦配備はなされなかった。

そこで、アメリカ海軍と空軍の長距離空対空ミサイル計画を統合し、新しい長距離空対空ミサイルとして、フェニックスの開発が開始された。これはAAM-N-11と呼称されたが、1963年にAIM-54に名称変更されている。フェニックスを運用する戦闘機としてF-111の海軍型 (F-111B) が開発されていたが、これは1968年に中止され、実用化はなされなかった。後の搭載機となるF-14の初飛行は1970年のことである。部隊配備は1974年から開始された。一方で空軍はその後、新規の要撃機の開発を行っておらず、フェニックスの搭載機は開発されないままに終わった。

改良型のAIM-54Cは、対艦ミサイル巡航ミサイルにも対処可能すべく開発された。元来ソ連からの核攻撃を含む攻撃から空母艦隊を守るために作られたミサイルであり、長大な射程は核攻撃の有効範囲外から爆撃機あるいは巡航ミサイルを破壊するために設定された。しかしながらそのような事態は発生する事はなかった。同時に大型で高価なミサイルであることから、アメリカ海軍がF-14用に配備したものの、実戦ではほとんど使用されなかった。アメリカ海軍は、2004年9月30日にフェニックスを退役させている。

各型[編集]

AIM-54A[編集]

1974年に運用が開始された最初のタイプ。中間誘導にセミ・アクティブ・レーダーホーミング、終末誘導にアクティブ・レーダーホーミング方式を採る。

AIM-54B[編集]

コスト低減のため製造過程を短縮出来るようるよう改良した簡易量産型。費用対効果が悪いことなどから量産はされなかった。仕様の一部はA型の後期生産型に取り入れられたといわれている。

AIM-54C[編集]

AIM-54C

1986年からAIM-54Aと交代した改良型で、巡航ミサイルに対処することが可能。中間誘導方式に慣性誘導が採用された。

AIM-54 ECCM/Sealed[編集]

1988年から運用が開始されたタイプで、対電子妨害対抗能力 (ECCM) 能力が付加された。また、携行飛行時に液体による冷却を行う必要がなくなった。冷却されないため、このバージョンのフェニックスを搭載するF-14は飛行速度制限があった可能性がある。

その他[編集]

近年になって、イランが独自型式のフェニックスを開発していたことが判明している。一つ目が2013年2月に発表されたFakour90、二つ目が2013年11月5日に発表された前者の発展型のMaqsoud(目的という意味)と呼ばれる長距離空対空ミサイルである。イラン側はF-14Aに搭載するために自国開発したと発表しているが、実際はフェニックスミサイルのデッドコピーといわれている。

(実際に、イランはTOWをコピーしたトゥーファンを生産・配備している)

IHS Jane's 360 参照。)

またNASAはフェニックスミサイルの退役した後の2006年に、データ取得のために同ミサイルを活用している。このミサイルは余剰在庫になっていたアメリカ海軍のフェニックスミサイルの弾頭を小型軽量のフライトデータ入力・送信システムや誘導システムに置き換えた弾頭に変更したもので、超音速フライトデータを取得のために利用された。 このとき、フェニックスミサイルはF-14ではなくF-15に搭載・発射された。

( #* NASA Phoenix Missile Hypersonic Testbed 2007年1月6日 参照。)

弾体の種類により、胴体に書かれた帯の色で区別される。  黄色=実弾  青色=訓練弾  茶色=モーターのみ装備

派生型[編集]

シーフェニックス[編集]

発射記録[編集]

1979年1月、イラン空軍の訓練において、212km先のドローン(無人標的機)を撃墜した事例がある。

イランに供給された285発のフェニックスの、イラン・イラク戦争(1980 - 1988年)における 使用状況については複数の報告がなされているが、その内容はまちまちである(#外部リンク 1. 参照)。25機あまりを撃墜したと主張するものが複数ある(#外部リンク 2. など)一方で、機体に対する破壊工作によってミサイルの発射自体が不可能だったか、別の何らかの理由によって、一機も撃墜できなかったはずだとするものもある。一般的には、イラン空軍におけるF-14の主要任務は早期警戒機に近い性格のものであり、別の戦闘機により護衛されていたとされている。

VF-103ジョリーロジャースのF-14Bから発射されたAIM-54

このような、事実かどうかが不確定なイラン空軍によるものを除くと、実戦における確実な発射の記録は、2機のアメリカ海軍所属F-14Dによるものだけとなる。イラク軍所属のMiG-25数機との交戦中のことであったが、このとき発射されたミサイルはいずれも命中しなかった。ただし、うち1発はMiG-25の1機を地面近くまで追尾していき、結果、燃料切れを引き起こして墜落させたとも言われている。

1981年のシドラ湾事件の際、アメリカ海軍のF-14がリビアのSu-22を2機撃墜した。この時にAIM-54が使用されたという話が時折見うけられるが、実際には、交戦は短距離で開始され、AIM-9 サイドワインダーが使用された。1989年のシドラ湾事件の時には、サイドワインダーとAIM-7 スパローが使用された。

また、湾岸戦争の折には、ヘリコプターを一機撃墜しているとも言われているが(ヘリコプターにしか命中しなかったとも)、不明。つまるところ、少なくとも米軍によるAIM-54の確定した戦果は全く無い。

試験時において、撃墜に成功した射程距離は次の通り

  • 最大射程: 140 km
  • 平均交戦距離: 20 - 70 km
  • 最短射程: 7.5 km

関連項目[編集]

外部リンク[編集]