ファシリティマネジメント

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ファシリティ・マネジメント(Facility management、又はFacilities Management 略称:FM)は、アメリカで生まれた新しい経営管理方式。

社団法人日本ファシリティマネジメント推進協会[1]によれば、「業務用不動産(土地、建物、構築物、設備等)すべてを経営にとって最適な状態(コスト最小、効果最大)で保有し、運営し、維持するための総合的な管理手法」と定義される。企業や官公庁、営利・非営利を問わず、業務遂行において不動産を利用する組織を対象とした施設の管理・運用手法である。

又、企業が保有・管理するすべての施設を対象として、竣工後(土地は取得、建物は施工、設備は設置の後)これらをうまく使っていくために必要なあらゆるマネジメント、経営的視点に立って建築物等のファシリティを有効・適切に計画・運営・管理し、ダイナミックな企業活動の展開に貢献する全体的な取組みを言う。

現在、適切な日本語訳はまだなく、ファシリティマネジメントとカナ書きする。「施設管理」と訳される事があるが、この訳だと「建物や設備を現状に維持管理すること」など、FMの一部の業務だけに限定してとられ易く適訳とは言えない。

各団体に於けるファシリティマネジメントの定義[編集]

  • ジャフマ(JFMA;日本ファシリティマネジメント協会)の定義
「ファシリティマネジメントとは、社会の変化と新しい企業環境に対応して、経営的視点に立って建築等の施設類を有効・適切に計画・整備・運営・管理し、ダイナミックな企業活動の展開に貢献する全体的な取組み。」これをシステマティックに科学的手法によって実践するところに特徴がある。この定義では企業にとってFMとは何かが簡潔に要約されている。
  • イフマ(IFMA;国際ファシリティマネジメント協会)の定義
「ファシリティマネジメントとは、効率的な執務環境を提供するために、実証された管理業務と最新の技術知識を結び付けることであり、生産性の高い執務環境を計画、提供し、管理する経営活動である」。この定義ではFMの目的と機能が明快にされている。
  • ファシリティマネジメント推進連絡協議会の定義
「ファシリティマネジメントとは、企業・団体などの全施設および環境を経営的視点から総合的に企画、管理、活用する経営管理活動」とされている。
  • アメリカ国会図書館の定義
「ファシリティマネジメントとは、物理的なワークプレイスを組織で働く人、そこで行われる業務と調整する活動であり、経営管理学・建築学・行動科学・工学の原理を統合することである」。この定義ではFMの対象と背景となる知識範囲が明示されている。
  • NEFMA(The Netherlands Facility Management Association:オランダ)
「大きく変化する社会環境の目的を効果的、効率的、弾力的に進展するために、建物、サービス、それらの付属物(家具等)を総合的に計画し、実施すること。」とされている。
  • 国土交通省の定義
「(官庁施設の)ファシリティマネジメントとは官庁施設のストック全体としての質が最適となるよう、既存の施設を有効活用しつつ、複数の官庁施設を群として捉えた施設計画の策定等により、総合的に企画・管理し、整備・活用する手法とされている。
  • 建設省FM研究委員会(基本検討部会案)
「施設の総合的・戦略的な企画・運営を通じて、経営者・施設の使用者の諸要求を社会的・文化的な資産の整備へと結び付けていく手法・技術である。」とされている。
  • Jefferey M. Hamer著「ファシリティマネジメント」
「組織のために物理的スペースとサービスを適切に提供するため、計画し、実行し、保守し、会計計算をし、同時に関係する全体の費用を減らすプロセス。」とされている。

ファシリティマネジメントとは[編集]

情報化とグローバル化、そして低成長化などを背景として、日本の企業経営は、大きな転換点を迎えているといっても過言ではない。とくに、経済・経営システム自体を大きく転換し、改革する必要に迫られている。含み資産よりも実益を重視する経営への転換や、土地神話化を改め、国際レベルの価値観を持つ不動産システムへと改革すること。さらには、遅れている情報ネットワーク環境の整備など、企業改革を含めた社会的なシステムの改革が求められている。  

一方、日本の経営では、これまで概して「ファシリティ」を不変・不朽の財産と考えがちであり、その有効活用については、曖昧にされてきたきらいがある。とくに、ファシリティを活用する戦略やファシリティ自体の評価はあまりなされておらず、経営活動と結びつけて考慮されていない。  

こうした現状を打破し、新たな日本的経営システムを構築するためには、「第5の経営資源」といわれるファシリティの戦略的な活用が不可欠となっている。ファシリティマネジメント(FM)は、企業・団体など組織体における第5の経営資源=ファシリティを経営的視点から総合的・戦略的に企画・管理・活用する経営管理活動である。

施設全体を対象とした『総合的視野』や、将来変化にも対応し得る『長期的視野』に立つこと、すなわち『経営的視点』であることがFMの大きな特長。

FMは、FM専門家が自ら種々の業務を遂行する性格のものではなく、各方面の多くの専門家、技術者の力を十分に活用するもので、FM業務の重点は「評価と企画・計画」であり、多くの専門担当者に よる実施に対しての管理が中心になる。

  • 伝統的な施設管理(管財、営繕)との違い
    • 維持、保全のみでなく「より良いあり方」を追求する。「より良いあり方」には、既存のものだけではなく、新しく利用し活用するファシリティも対象となる。
    • FMの活動の方法として、情報技術をはじめFM固有および支援の技術・手法を活用する。
    • FMは、下記の3つの面から現実的に対応できる総合的な経営管理活動である。
      • 経営にとって全ファシリティの全体的な最適のあり方を追求する経営戦略的な面
      • 各個の設備の最適な状態への改善など管理的な面
      • 日常の清掃、保全、修繕等への計画的・科学的な方法の採用など日常業務的な面

以上の3つの活動は、事業体の置かれた状況に対応して実務的に身近なところから取り掛かかることができる活動である。

  • FMは上記の事業体における現状の実務にあわせた活動とともに、「FM標準業務サイクル」を設定し、FMの体系的な導入と推進を統一的に図る活動を進めていく。すなわち、経営戦略に基づいたFMの戦略、中長期実行計画、プロジェクト管理、運営維持、評価という業務のサイクルをまわしてFMを展開することと、このサイクルを展開させるための仕掛けおよび仕組みづくりとしての統括マネジメントの業務を推進することである。
  • FMは、オフィスはもとより工場、店舗、物流施設その他あらゆる業務用施設とその環境を対象としている。なお、今後この活動を一般住宅に対しても適用していくことも考えられている。
  • FMの活用分野は、企業はもとより病院、学校、官公庁その他すべての事業体。
  • FMの活用によって期待される効果は、大きく分けて次のようなものがある。
    • 不要な施設、不足な施設、不適当な施設の使われ方の施設が明らかになり、経営にとって最適なファシリティのあり方が示される。
    • ファシリティの改革によって、経営の効率が最高度に向上。
    • 同時に、施設関連費用(施設投資・施設資産・ファシリティコスト)を最小に抑えることができる。
    • 顧客、従業員その他のファシリティ利用者にとって快適・魅力的な施設を実現。
    • 省エネルギーを実現し、コスト低減とともに環境問題にとって効果的な解決手段となる。

 

ファシリティマネジメントの目的[編集]

FMの目的は、企業・団体などの組織体が使用する固定資産(土地、建物、構築物、備品など)の全体としての有り 方を最適な状態にする ことであり、「それぞれの組織が、それぞれ持つファシリティをいかに有効に活かすか」と、「それに関わる費用を いかに抑えるか」の、二律背反的な要求を両立させて最適解を求めることにある。 また、FMの目的を大きな、社会的な視野で考えると、良好な社会資本の蓄積、環境問題への施設の 適切な対応を行うことと言え、一般的には企業などの経営者が期待する目的・効果は次の4点に要約される。

  • コストミニマム(設備投資、施設運営費の最小化)
  • エフェクトマキシマム(効用の最大化)
  • フレキシビリティ(将来の発展、変化への柔軟な対応)
  • 社会、環境対応

FMとCREの関係[編集]

CREで対象となっている企業が保有・賃借する不動産の適切な管理は、日本ではファシリティマネジメントの標準的な業務として位置づけられている。日本のFMは、米国ではCREとFMという2つの業務に分かれているが、それを統合したものになっている。したがって、日本で最近話題となっているCREは、FM の業務の一部としてすでに取り組んでいる日本企業も存在しているということである。

CREの戦略的マネジメントは、日本ではまさしくFMの一部ということである。

日本に於けるファシリティマネジメント[編集]

国に於けるFM[編集]

国土交通省[編集]

社会資本整備審議会建築分科会においては、2006年に官公庁施設部会が設置され、国家機関の建築物の現状と課題、今後の施策展開の方向性等について議論が行われた。その結果、建議「国家機関の建築物を良質なストックとして整備・活用するための官庁営繕行政のあり方について」としてまとまり、その中に於いてファシリティマネジメントを実施すべきであるとされている。

財務省[編集]

財務省では、「新成長戦略」(平成22年6月18日、閣議決定)の検討にあわせ、未利用国有地等の国有財産について、地域や社会のニーズに対応して積極的に活用することを検討してきた。その検討結果を「新成長戦略における国有財産の有効活用について」として公表した。その中には「社会資本ストックの戦略的維持管理・緑の都市化への貢献」としてファシリティマネジメントを取り入れると明記されている。

地方自治体に於けるFM[編集]

近年、地方自治体では公共施設の経営にあたり、ファシリティマネジメントの導入を推進している団体が増加している。

下記にその一例を列記する。

都道府県

  • 京都府
府有財産戦略活用推進本部設置要綱として平成20年4月1日から施行した。府民サービスの最大化を目指すという経営的視点でファシリティマネジメント手法を取り入れている。
  • 大阪府
府有施設の資産活用として、府有建築物のファシリティマネジメント推進に向けた検討。
  • 北海道
北海道のファシリティマネジメント(FM)のページを北海道の総務部総務課が作成。
  • 青森県
青森県では平成16年からFMに取り組んでおり、2008年には、第2回日本ファシリティマネジメント大賞を受賞した。
  • 神奈川県
神奈川県では経営的な視点で全ての県有地・県有施設を総合的に企画、管理、活用する「ファシリティマネジメント」を重視した取組を行うため「神奈川県ファシリティマネジメント推進方針」を策定した。
  • 福島県
平成20年に財産管理課(財産活用担当)を設置し、「福島県県有財産最適活用計画」を策定した。
  • 三重県
三重県では、FMを意識したオフィス改善を行い、メディアにも取り上げられた。
  • 長崎県
平成22年5月に長崎県ファシリティマネジメント導入基本方針を策定した。

市町村

  • 千葉県佐倉市
佐倉市では建築指導課が中心となり、佐倉市ファシリティマネジメント推進基本方針を定めた。
  • 東京都三鷹市
三鷹市では平成20年度の市の予算案における「未来への投資」の基本のひとつに「『都市再生に向けたビジョン』の明確化と『ファシリティ・マネジメントの推進』」が盛り込まれた。平成20年3月には、「三鷹市におけるファシリティ・マネジメントの推進に関する基本的方向」を策定し、ファシリティ・マネジメントの推進体制や組織改正のあり方、公共施設の耐震化等の推進や公共施設の整備・再配置の方向性などについて、今後の方向性のとりまとめを行った。
  • 大阪府大阪市
大阪市では市都市整備局公共建築部ファシリティマネジメント担当が中心となり、市設建築物のファシリティマネジメントを推進している。
  • 兵庫県神戸市
神戸市では行財政局にファシリティマネジメント推進担当主幹を新設し、市が所有している施設の最適な管理と保全整備を進めている。
  • 千葉県流山市
流山市では、保有する500棟以上の建築物を財産として捉え、このポテンシャルを市政経営に活用するため、ファシリティマネジメントを推進してる。
  • 千葉県山武市
山武市では行政改革行動計画としてファシリティマネジメントの導入を掲げている。
  • 愛知県北名古屋市
北名古屋市では公共施設管理運営の見直し方針としてファシリティマネジメントの導入を掲げている。
  • 岡山県倉敷市
民間企業出身者を中心に「初めに実践ありき」の思想でFMに取組んでいる。

企業・民間に於けるFM[編集]

企業をはじめ日本の組織体の大部分はその革新、改革を迫られており、その方法として人事リストラを強力に進めている。それは人件費が経営費用の中で最も大きく、しかも景気に関係なく生じる固定費であることによる。

ところが、

  • 人件費に次いで大きく、しかも大部分固定費であり、世界でもっとも高額といわれる施設関係費については一般に殆ど関心がなく、したがってその対策も著しく遅れている。
  • バブル時代に急増した施設には多額のコストが掛かりながら活用が低調、不適切なものが著しく多く存在している 。
  • 企業はもとより、病院・学校・その他の公共・公益事業は施設依存の経営が多いにもかかわらず、施設が不合理、不経済、不適切なものが多く、経営を著しく圧迫し、経営効率を著しく低下させている。
  • 省エネルギー、環境問題等の面からも改善すべき施設が極めて多く存在している。

以上のような実態から、日本の経営にとって今日最も必要とされる手法の一つがFMである。

海外に於けるファシリティマネジメント[編集]

日本には独自のビジネススタイルがあるため、FMについてもすべて海外と同じというわけにはいかないが、それでもグローバルな考え方や方法論、そして世界のFMの現状を知ることは、やはり大切なことである。

欧米のケースを見ると、FMは施設の計画や管理を中心にしたハード主体から、ユーザーへのサービスを主体としたものに移行してきている。たとえば、アメリカに本部を置くFM団体であるIFMA(International Facility Management Association)が、アメリカとカナダのファシリティマネジャー約4000人に行った調査では、4割は大学などでビジネス系の勉強をしてきた人たちであり、インテリアや建築関係は3割以下と、むしろ少数派だった。

また、海外に於いてファシリティマネジャーの平均収入は一般労働者よりも3割高いという調査結果もあり、人気職種になっていることも多分野の人材がFMの世界に入ってくる要因になっている。同じことはヨーロッパにもいえて、オランダは小さい国にもかかわらず、FMを教える大学が9校あり7,000人の学生が学び、5校に大学院があり約150人が在籍している。オランダにおいてFMは、あらゆる企業・組織に汎用的に存在する経営活動としてとらえられており、それゆえ産学が一体となり、情熱をもってFM教育に取り組んでいる。

日本では名古屋大学(名古屋大学ファシリティマネジメント研究会)などわずかしか無い為、人材育成という点では大きな差がついている。

経営資源としてのファシリティ[編集]

企業の経営資源といえば、ひと昔前は、「ヒト・モノ・カネ」すなわち、人材、資材、資金の3つが代表的ものだった。現在では、人材、資金、技術、情報、そしてファシリティが企業活動に不可欠の経営資源だといわれている。ファシリティとは、企業、団体など組織体が事業活動を展開するために自ら使用する施設(土地・建物・各種設備)および利用する人の環境(執務空間・居住空間、地域環境など)を包含したものである。

  • ファシリティマネジメントの目的と遂行
    • 経営資源としてのファシリティの有効活用
    • 戦略・計画からプロジェクト管理、運営維持、その評価による戦略・計画へのフィードバックというFM業務そのものの効率的な運用
    • ファシリティ利用者の満足を高め、知的生産性を向上する
    • 経営と、経営資源であるファシリティとを結びつける
    • 戦略・計画→プロジェクト管理→運営維持→評価→戦略・計画というFM業務の管理サイクルを回す
    • ビジネス活動にふさわしいファシリティを提供する

また、FM業務は、経営を軸とする資産管理や財務評価、生産性向上など戦略的分野と、ファシリティを快適かつ効率的に計画・建設・運営維持するためのエンジニアリング分野、ならびにセキュリティや清掃やケイタリングといったサービス分野を総合的にカバーするもので、多様で幅広い諸分野の業務を総合的に管理することにより、経営の効率化に大きく貢献する。

ファシリティマネジメントに関する資格[編集]

認定ファシリティマネジャー(にんていファシリティマネジャー、Certified Facility Manager of Japan)とは、ファシリティマネジャー資格試験に合格し、登録を受けた者の称号である。ファシリティマネジメントに必要な専門知識、能力を持つ事を証明する。単にファシリティマネジャー、又は認定ファシリティマネージャー、ファシリティマネージャーとも呼ばれる。
日本で資格を得る事により、国際資格であるCFM(Certified Facility Manager)を取得する事も可能になっている。
日本では、社団法人日本ファシリティマネジメント推進協会(JFMA)、社団法人ニューオフィス推進協議会(NOPA)、社団法人建築・設備維持保全推進協会(BELCA)の3団体が協力し、制度を実施している。
企業・団体等の組織体の全施設及び環境(ファシリティ)を経営的視点から総合的に企画・管理・活用する経営管理活動に関わる新たな専門家を育成、普及する事により、快適且つ機能的なファシリティを継続的に供給し、企業理念の具現化及び経営目標を達成し、且つ健全な社会資本の形成に貢献する事を目的として、1997年度から新たに「ファシリティマネジャー」資格制度がスタートした。
不動産証券化協会認定マスター(ふどうさんしょうけんかきょうかいにんていますたー)資格制度は、不動産証券化の専門家にふさわしい知識とスキルを体系的に習得する教育プログラム。社団法人不動産証券化協会が実施している。 市場の健全な発展を担う人材育成のために創設された。2009年1月現在で2,310名がマスターとして資格認定されている。 マスター認定者は、最新情報の入手や知識のブラッシュアップのため継続教育を受講することが必要である。
建築物環境衛生管理技術者(けんちくぶつかんきょうえいせいかんりぎじゅつしゃ)とは、建築物の環境衛生の維持管理に関する監督等を行う国家資格である。通称ビル管理技術者と呼ばれる。
建築物における衛生的環境の確保に関する法律に基づいて、面積3000m2以上(学校については8000m2以上)の特定建築物において選任義務がある。
厚生労働大臣の指定を受けた財団法人ビル管理教育センターが行う建築物環境衛生管理技術者国家試験に合格、または、建築物環境衛生管理技術者登録講習会の全課程を修め良好な成績を得た者に対し免状が交付される。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]