ビニロン

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ビニロン(vinylon)は、ポリビニルアルコールアセタール化して得られる合成繊維の総称である。

概要[編集]

北朝鮮・興南の2.8ビナルロン連合企業所(2010年8月撮影)。北朝鮮はビニロン生産に力を入れている

京都帝国大学桜田一郎および共同研究者の李升基、大日本紡績(現・ユニチカ)の川上博、鐘淵紡績(現・クラシエホールディングス)の矢沢将英らによって1939年に初めて合成された。ナイロンに2年遅れで続き世界で2番目に作られた合成繊維であり、日本初の合成繊維である。当初は「合成一号」や「カネビアン」と呼ばれていたが、1948年に「ビニロン」と改称された。工業化の研究は戦争のため遅れ、桜田と友成九十九、川上らの研究によって倉敷レイヨン(現・クラレ)、大日本紡績(現・ユニチカ)で工業生産が開始されたのは1950年のことであった。

戦後に李升基を受け入れた北朝鮮では、ビニロンは同国の発明品とされ、同国主席の金日成が命名したビナルロン(비날론)という名称で呼ばれる。北朝鮮では、「主体科学」の先駆けとしてビナロン繊維産業に力を入れており、同国で生産される軍用を含んだ被服類に多く使われているといわれている。

性質[編集]

合成繊維中、唯一親水性で吸湿性であるという特徴を持っており、綿に似た風合いの繊維である。そのほかに、高強度・高弾性率、耐候性、耐薬品性といった性質を併せ持っている。ただし、化学変化や熱に強い反面、染色しにくくごわごわするという短所があり、衣料用の繊維としては使用しにくい。そのような性質から、産業用資材として用いられることが多い。主な用途としては、ロープ海苔網、ゴムプラスチックの補強繊維、石綿に代わるセメント板の補強材などが挙げられる。

また、フィルム状にした場合の平面性や光学的透過性を生かして液晶表示装置の偏光板など、繊維以外の使用法も開発されている。

湿った状態からアイロン等の熱源で加熱加圧することにより糊付けしたような肌触りを持つことから業務用シーツの素材に使用したり、熱に強い性質を利用して難燃素材として作業服等に使用されている。

合成法[編集]

ビニロンの合成

ポリビニルアルコールに酸触媒の存在下でホルムアルデヒドを反応させる。それにより、ポリビニルアルコールの1,3-ジオール部でホルマール化が起こり、環状の1,3-ジオキサン構造が導入される。なお、この際に確率的には13.5%のヒドロキシル基が未反応のまま残る。

用途[編集]

1996年の日本におけるビニロンの生産量は4万tである。学生服レインコートロープ漁網[1]繊維補強コンクリートの補強用繊維、外科用縫合糸などに、また非繊維用途として農業資材や水溶性樹脂素材等にも用いられている。自衛隊の幌、幕舎(テント)、作業服にもビニロンとの混紡製品がある。

出典[編集]

  1. ^ ソウル駐在特別記者・黒田勝弘 北核開発の父は京大OB”. 産経ニュース (2012年5月19日). 2012年5月19日閲覧。