パンスペルミア説

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パンスペルミア説

パンスペルミア説(パンスペルミアせつ、Panspermia)は、生命誕生に関する仮説のひとつ。

生命は宇宙に広くあまねく存在しており、地球の生命の起源は地球ではなく、他の天体で発生した微生物芽胞が地球に到達したものであるという説。

この用語は元はギリシア語: πανσπερμίαで、ギリシア語: πᾶν(pan パン = 汎) + ギリシア語: σπέρμαsperma スペルマ = 、タネ)という語の構造になっている。「(宇宙)汎種説」「胚種広布説」「宇宙播種説」などと訳されている。この仮説は《生命の起源》について多くの人々が無意識のうちに前提条件として地球の生命は地球で生まれたと思ってしまっていることについて注意を喚起するものである。

この説のアイディア自体は元々は1787年ラザロ・スパランツァーニ(スパランツァーニも自然発生説を否定した実験で有名である)によって唱えられたものである。この後、1906年スヴァンテ・アレニウスによって「panspermia」という名前が与えられた。この説の現代の有名な支持者としてはDNA二重螺旋で有名なフランシス・クリックほか、物理学者・SF作家のフレッド・ホイルがいる。

アレニウスは以下のように述べた。

「生命の起源は地球本来のものではなく、他の天体で発生した微生物の芽胞が宇宙空間を飛来して地球に到達したものである。」

パンスペルミア説はオパーリンの論じた化学進化よりも時代的に先行している生命の起源に関する仮説の一つであるが、仮説とするには余りにもブラックボックスが多いと考える学者は大勢いた。一見、判らないものは宇宙に由来させよう、という消極的な考えに見えるが、「地球上で無機物から生命は生まれた」ということを否定しているのみで、また化学進化は否定していない。

この説は化学進化と同様現在でも支持されている学説の一つである。このパンスペルミア仮説を支持する点は以下の通りであるという[要出典]

  • 38億年前の地層から真正細菌らしきものの化石が発見されている。地球誕生から数億年でこのようなあらゆる生理活性、自己複製能力、膜構造らしきものを有する生命体が発生したとは考えにくい。パンスペルミア説では有機物から生命体に至るまでの期間に猶予が持てる[要出典]
  • 宇宙から飛来する隕石の中には多くの有機物が含まれており、アミノ酸など生命を構成するものも見られる[1]。分析技術の発達により、これらの隕石中のアミノ酸がホモキラリティーを持つことも確認された。さらに彗星中のチリにもアミノ酸が存在することも確認されている[2]。これは地球上で汚染されたものであるという可能性が捨てきれなかったが、NASAなどの研究チームが南極で採取した隕石を調べたところDNAの基となる物質アデニングアニン、生体内の筋肉組織に含まれるヒポキサンチンキサンチンが見つかったため、この説を裏付けることとなった[3]
  • 地球の原始大気は酸化的なものであり、グリシンなどのアミノ酸が合成されにくいが、地球外にはユーリー-ミラーの実験に相当する還元的な環境があったかもしれない[要出典]
  • 酸化的な原始大気でも隕石が海に衝突する際の化学反応で、アミノ酸などの有機物が合成できるという発表もある。

特に、地球誕生後数億年で生命体が発生したと言う点で、パンスペルミア仮説が支持されることが多い[要出典][4]

2011年、日本の海洋研究開発機構で、大腸菌など、5種類の細菌を超遠心機にかけ、超重力下での生物への影響を調べる実験が行われた。その結果、5種とも数千から数万Gの重力の下でも正常に増殖することが確かめられ、中には40万3627Gもの重力下でも生育した種もあった。地球に落下する隕石の加速度は最大30万Gに達すると予測されており、この実験は、パンスペルミア仮説の証明とはならないが、このような環境を生き延びる可能性を示している[1]

脚注[編集]

  1. ^ 1969年、オーストラリアのメルボルン北方に落下したマーチンソン隕石(炭素質コンドライトと呼ばれる)から、アミノ酸、炭化水素、核酸塩基などの有機化合物、脂質で包まれた細胞膜に似た泡が発見されている(池谷仙之・北里洋著『地球生物学 ー地球と生命の進化ー』)東京大学出版会 2004年 81ページ)
  2. ^ http://www.nasa.gov/mission_pages/stardust/news/stardust_amino_acid.html
  3. ^ http://www.cnn.co.jp/fringe/30003666.html
  4. ^ だが、この数億年は生命の発生にとって短いのか、長いのか、その辺りの論証がなされない以上、パンスペルミア仮説の妥当性を判断するのは難しいと言える。[要出典]

関連項目[編集]