バーナード・L・マドフ

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バーナード・L・マドフ
Bernard Lawrence Madoff
生誕 1938年4月29日(76歳)
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国 ニューヨーク州クイーンズ
職業 NASDAQ元会長、
バーナード・L・マドフ・インヴェストメント・セキュリティーズLLC会長
配偶者 あり

バーナード・ローレンス・マドフ(Bernard Lawrence Madoff 1938年4月29日-)は、アメリカ合衆国の実業家、元NASDAQ会長。史上最大級の巨額詐欺事件の犯人として知られる。姓のカタカナ表記(マドフあるいはマードフ)はローマ字の誤読に由来する誤りで、正しくはメイドフ[1]

概略[編集]

自身が興した証券会社「バーナード・L・マドフ・インヴェストメント・セキュリティーズLLC」(バーナード・マドフ証券投資会社、Bernard L. Madoff Investment Securities, LLC)の会長兼CEOとして、30年にもわたって人々を騙し続けて[2]巨大な金額の金融詐欺事件を引き起こした人物である。

来歴[編集]

生い立ち[編集]

ニューヨークのクイーンズユダヤ系アメリカ人の家庭で生まれ育った。高校卒業後、アラバマ大学を経てホフストラ大学に入学し、政治学を学んだ。

犯行[編集]

1960年、大学を卒業したマドフはバーナード・マドフ証券投資会社を設立した[3]

その後、数十年間もの間、マドフは資金運用能力を持っていると投資家らから信じられ、称賛されてきた。2001年まで、マドフの投資運用会社はナスダック・ストック・マーケットの3大立役者として見なされていた。ニューヨークに住む多くの富豪・金持たちはマドフは信頼できる投資家なのだ、と見なしてきた[3]

ただ、マドフがあまりに夢のような高利回りを謳うので、果たしてそのような高利回りが現実的なものなのかかどうか、疑念を抱く投資家も存在していた[3]。マドフの会社に関してまともな大手監査法人が監査を行っていないことについて、一部の投資家は疑問を抱いた[3]。中には厳しく査定を行った結果、マドフの投資会社には透明性が無い、と判断し投資は見送った人もいる[4]一方で、それ以上に多くの人がマドフの手口に騙されていた。

マドフによる巨大な詐欺が発覚したきっかけは、サブプライムローン危機を受けた株価の下落を受けて、複数の投資家から計約70億ドル(約6300億円)の償還(払い戻し)を求められたことだった。マドフは投資家らに償還するための現金の確保ができず、とうとう不正を取り繕い隠しつづけることができなくなった[5]

逮捕[編集]

2008年12月11日に、詐欺の罪でFBIによって逮捕された。証券取引委員会は、マドフの会社の資産を凍結し、その調査に着手した。

調査で明らかになった被害[編集]

証券取引委員会による調査の結果、マドフが自ら運営する投資ファンドについて、「(運用によって)10%を上回る高利回り」などと虚偽の内容をうたい、投資家たちから多額の資金を集めたという事実が明らかになった。また、マドフは集めた資金を金融市場などで運用することをせず、既存の顧客たちへ支払わなければならない配当自転車操業的に回し、それによって巨額の損失を隠していた[5]。つまり、マドフはポンジ・スキームen:Ponzi scheme)と呼ばれる古典的な金融犯罪を行っていたのである。欧米のメディアや書籍ではマドフの犯罪は一般的にポンジ・スキームと表現されている。(日本のメディアではポンジ・スキームという用語・概念が日本人に十分に知られていないことに配慮してか、英語の報道原文で「ポンジ・スキーム」とはっきり言っている場合でも日本語にそれを翻訳する過程で「"ネズミ講のようなこと"を行っていた」や「"ネズミ講"を行っていた[5]」などと訳されてしまっていることも多い。)

マドフは逮捕当初は当局に対し、「顧客はわずか25名ほどしかいなかった」などと虚偽を述べたが、捜査の進展にともない、マドフによる資金運用の詐欺の被害に遭った人々の数は、数百人~数千人に及ぶことが明らかになった[3]。米サッカークラブのフィラデルフィア・イーグルズ元オーナーのノルマン・ブラマンニューヨーク・メッツのオーナーフレッド・ウィルポンゼネラル・モータース(GM)の金融サービス部門GMACの会長であるエズラ・マーキン、さらには映画監督のスティーブン・スピルバーグ、俳優のケヴィン・ベーコンといったセレブリティも被害にあっている。

マドフは一般の投資家のみならず、金融のプロフェッショナルたちや金融機関までを騙していたので、被害者のリストには金融機関や金融のプロの名前が並んだ。例えば、ロイヤルバンク・オブ・スコットランドBNPパリバ(フランス)、サンタンデール(スペイン)、日本の野村證券などの大手金融機関が被害にあっている[4]。日本では、あおぞら銀行住友生命保険三井住友生命三井安田生命あいおい生命保険太陽生命保険日本興亜損保富国生命保険なども資金をあずけて被害にあったという[要出典]

被害総額については見解が分かれているが、一説には500億ドル(約5兆円)、(ただし「これは架空の利益を含むので実際の元金の被害額は330億ドル程度(約3.3兆円)[要出典]」ともされた)、あるいは650億ドル(6兆円)[2]とされる。

マドフはユダヤ人社会で一目置かれている存在だったため、ユダヤ人コミュニティーの信用の輪の中で広がってしまい、ユダヤ人の慈善団体や学校などもマドフに資金を預けてかなりの額の被害を被った。また、ファンド・オブ・ファンズ(資金運用をするファンドが資金運用をまかせてしまうようなファンド)の存在によって、被害が連鎖的に広がった面もある[4]。ユダヤプログラムを支援する基金「the Robert I.Lappin Charitable Foundation」もマドフの法人に総額800万ドルを預けて被害にあっている。同基金の責任者は「(被害により、同基金は)もはや存続できない」と話したという。その他にもマドフに資金運用を任せた基金がいくつも存在する[3]

逮捕後[編集]

マドフは2009年6月12日、マンハッタン連邦地裁において650億ドル規模の投資詐欺について有罪であることを認めた後、収監された[6]。調査・捜査によって、総額約20億円とも見られる住宅をニューヨーク州マンハッタンロングアイランド、フロリダ州パームビーチフランスカプダンティーブなどに所有していることや、銀行口座に1700万ドル、さらに証券会社にも少なくとも4500万ドル持っていることが明らかになった[6][7]。それら100億円以上に相当する資産を当局は没収する意向を示した[6][7]

なお、証券取引委員会の職員が少なくとも1999年からマドフによる不正行為に関する情報を得ていた(職員に情報が寄せられていた)にもかかわらず、報告がなされていなかったことを証券取引委員会は明らかにした。そのため「証券取引委員会の怠慢が不正を助長した」などと米欧メディアでは指摘された[5]

2009年6月29日、アメリカ地方裁判所はマドフに対して詐欺資金洗浄などの150年の禁固の刑判決を下した[8]

現在、ノースカロライナ州刑務所服役中である[8]。連邦刑務所局の登録番号は61727-054。

2009年12月には、マドフ受刑者が他の受刑者から殴られ鼻の骨や肋骨を折られるという事件が起きたという。殴った男性はかつてマドフに投資したことがあり、損害を被っていたとされ、柔道の黒帯を持つボディービルダーで薬物犯罪で服役中だったという[8][9]

2010年12月11日早朝、ニューヨークの自宅アパートで長男のマークが首を吊って死んでいるのを発見された。この日は奇しくも父親の逮捕から丸2年だった。

出典・脚注[編集]

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  1. ^ http://www.forvo.com/word/bernard_madoff/ Bernard Madoff pronunciation: How to pronounce Bernard Madoff in English
  2. ^ a b 成甲書房刊『バーナード・マドフ事件:アメリカ巨大金融詐欺の全容』アダム・レボー著、副嶋隆彦監訳・解説、古村治彦訳(2010年4月25日)
  3. ^ a b c d e f IBTimes「マドフ元ナスダック会長逮捕、被害者数千人に拡大か」(2008年12月14日付)[リンク切れ]
  4. ^ a b c リッキーマーケットソリューション「Market Solutions Review Vol.2 No.1」P2「安全でリスクの低い商品?」
  5. ^ a b c d asahi.com(朝日新聞社)「米投資詐欺、止まらぬ被害拡大 SECへの批判強まる」(2008年12月28日付)※2010年12月11日キャッシュにて閲覧。
  6. ^ a b c 世界日報(ロイター通信電)「米巨額詐欺事件のマードフ被告、当局が財産没収の意向」(2009年3月17日付)
  7. ^ a b ロイター「巨額詐欺事件のマードフ被告、当局が財産没収へ(2009年3月17日付)
  8. ^ a b c イザ!(産経新聞電)「獄中で殴られたマドフ受刑者、麻薬とトップレス美女に溺れた過去」(2010年4月18日付)[リンク切れ]
  9. ^ 服役していた複数の元囚人らの証言などをもとにウォールストリート・ジャーナルアジア版が2009年3月19〜21日付で報じた内容だという

関連書[編集]

  • 成甲書房刊『バーナード・マドフ事件:アメリカ巨大金融詐欺の全容』アダム・レボー著、副嶋隆彦監訳・解説、古村治彦訳 ISBN 4880862622, ISBN 9784880862620

外部リンク[編集]