バーティミアス

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バーティミアス」三部作(BARTIMAEUS TRILOGY)は、イギリス小説家ジョナサン・ストラウドによるファンタジー小説である。この作品は世界30か国以上で出版され、ベストセラーとなっている。日本語版は理論社から2003年から2005年にかけて出版された。翻訳は3作とも金原瑞人松山美保ミラマックス社が映画化権を獲得。2009年公開予定だったが製作は中止された。

  1. 『バーティミアス サマルカンドの秘宝』(The Amulet of Samarkand) ISBN 4-652-07735-1
  2. 『バーティミアスII ゴーレムの眼』(The Golem's Eye) ISBN 4-652-07746-7
  3. 『バーティミアスIII プトレマイオスの門』(Ptolemy's Gate) ISBN 4-652-07769-6

目次

概説 [編集]

歴史改変ものの要素があり、その物語世界はソロモン王ローマ帝国グラッドストーンアメリカ独立戦争など現実世界とよく似た歴史を持つ。舞台となる都市はイギリスロンドンチェコプラハなどである。中心となる時代は、科学技術など現代に近いが、政治体制や国際情勢は現状とかなり異なる。

例えば、1936年に消失しているはずのクリスタルパレスがロンドンに現存している。しかし、物語が始まるのはグラッドストーンの死(1898年)から100年以上たった時代であり、1936年以前であるはずはない。またロンドン塔が依然、監獄として使われている。世界の覇権を握っているのは大英帝国であり、フランスやドイツ、イタリアはその領土となっている。

ロンドンでは2つの階級からなる階級社会が形成されている。

魔術師は支配階級であり、政府の重要な役職を占めている。魔術師が自身の力で使える魔術はあまり強力なものではなく、様々な種類の妖霊を召喚・束縛・使役することによって魔術を用いることが多い。魔術師は貧しい家の子供を弟子にとり、魔術を教え込み、政府に貢献する魔術師として育成する。

一般人は魔術の能力を持たない人々であり、被支配階級である。魔術師たちは恐怖と無知によって一般人を統制している。また一般人の中には魔術に対する抵抗力を持っていたり、魔術の存在を知覚できたりする者もいる。

この種の作品では主人公となる魔術師の側が善良な存在として描かれることが多いが、本作では魔術師の腐敗を描いているのが特徴である。現在のロンドン(大英帝国)の繁栄の以前にはチェコの時代があり、同じような魔術師の帝国が築かれていた。バーティミアスによれば、この世界の歴史は、

  1. 魔術師が一般人を支配し、妖霊の力によって君臨する
  2. 時がたって、魔法に抵抗力をもつ一般人が現れ、魔術師に対して反乱を起こす
  3. 魔術師の支配が終わり、妖霊はあちらの世界に帰っていく
  4. また新しい支配者が現れ、新しい支配が始まる

ということを何度も繰り返してきたという。

物語はバーティミアスの一人称と、ナサニエル、キティなどの視点からの三人称で進行し、バーティミアス視点の部分では、バーティミアスの独り言が注釈として付くのが特徴である。

あらすじ [編集]

サマルカンドの秘宝 [編集]

魔術師たちが支配する街、ロンドン。両親によって売り飛ばされた少年ナサニエルは、国家保安省の役人でもあり、政府公認の魔術師でもあるアーサー・アンダーウッドの家へ弟子入りさせられる。魔術師としての修業を積みながら、その意義と使命を教えられたナサニエルは、偉大な魔術師となって成功することを夢見る。一流の魔術師サイモン・ラブレースにひどく恥をかかされたナサニエルは、周囲の大人への反発を感じ、復讐を誓う。そして、覚えたての魔法の力で、ベテランの妖霊「ジン」バーティミアスを呼び出し、強力な「サマルカンドのアミュレット」をラブレースから盗み出す。しかし、単なる復讐だったのだが「サマルカンドのアミュレット」をどうしても必要とするサイモン・ラブレースと命がけの戦いを繰り広げることになってしまう。

ゴーレムの眼 [編集]

「サマルカンドの秘宝事件」から時がたち、ナサニエルは政府の内務省の一員として働くエリートとなっていた。ロンドンでは魔術師の支配に対する反逆の兆しとみられる事件が頻発する。「レジスタンス団」とよばれる事件の首謀者たちは一般人ながら魔法に抵抗力を持ち、政府の捜査への障害となっていた。そんな折、ロンドンの商店で大規模な破壊事件が発生し、警察官に死者が出た。レジスタンス団を犯人だとみなす政府は、無能な上司に代わってナサニエルに、レジスタンス団を探し出し、破壊活動を停止させるよう命じた。1巻でも出ていたキティことキャサリン・ジョーンズが主役として登場。

プトレマイオスの門 [編集]

ナサニエルはこれまでの功績から、一流の魔術師に出世し、閣僚の一角を占めるまでになっていた。しかし一般人の間では政府に対する不満が高まり、反乱の兆しは日に日に濃くなっていた。一方、キティは身分を偽ってロンドンに潜伏し、魔法や妖霊について学んでいた。以前に見た、バーティミアスという変わった妖霊のことを思い、人間と妖霊の敵対的な関係を終わらせることができるのではないかという希望を持つようになっていた。キティはついにバーティミアスを呼び出すことに成功し、人間と妖霊の和解の可能性について問うが、バーティミアスに否定される。

妖霊 [編集]

妖霊(ようれい)は魔法の力を持つ存在で、魔術師たちの力の正体ともいわれる。基本的に妖霊は2つかそれ以上の四元素(火、水、空気、土)でできているが、一つの四元素だけでできている四元素の霊もいる。四元素の霊は粗削りで圧倒的な力がある。悪魔とも呼ばれるが、バーティミアスなど妖霊自身にはその呼び方を嫌うものも多い。妖霊たちの住む世界はこの世界とは別のものであり、存在が明確な実体をとらない世界である。それゆえ、明確な実体を必要とするこちらの世界に存在することは、妖霊にとって苦痛となる。妖霊は魔術師によって使役されることを基本的に嫌い、隙を見つけると自分を召喚した主人を殺して元の世界に帰ろうとする。このため、妖霊の使役にはその妖霊に応じた力と経験が要求される。体は成分と呼ばれる物質でできており、あらゆるものに姿を変えることができ、見えなくなれる妖霊もいる。通常の人間の眼には見えない妖霊や魔術を見るには、第三の眼や第四の眼といった第二以上の眼が必要となり、より高度な魔術を捉えるにはより高次の眼が必要となる。例えばバーティミアスは第七の眼までもっている(ただしセブンリーグブーツの動きは第七の眼でも捉えられなかった)。人間がこれらを知覚するには魔法の力をもった特殊な道具を使用するなどの必要があるが、稀に人間の中にも自然の状態で、ある程度のレベルまでの魔術を知覚できる者が出現することがある。

妖霊の召喚はペンタクル五線星の魔法陣)を描き、妖霊の真の名を唱えることで行われる。このために妖霊の名前を集めた事典も存在する。召喚において、ペンタクルの図が正確なものでないと、支配が不完全なものとなり、その魔術師は妖霊に殺されてしまう。真の名もまた重要で、それは妖霊の本質を表したものであり、これを魔術師が知り、かつ魔術師自身の本名を妖霊に知られないようにすることで、妖霊の支配が完全となる。そのため、魔術師にとって自分の本名をライバルの魔術師に知られることは危険となるので、公の場では公式名と呼ばれる別の名を名乗る。妖霊に与える指示は、妖霊に都合良く解釈されないよう、その解釈が一通りに定まるものでなければならない。このために複数の言語で同じ文章を繰り返すこともある。また、妖霊が仕事を拒んだり、指示に従わない場合は魔術によって体罰が与えられる。例えば「皮膚の反転」「成分の拷問」「成分の牽引」「針のむしろ」「罰のパンチ」「宇宙の万力」「死のコンパス」「揺らめくコイル」「焼尽の魔法(陰気な炎)」「のこぎりのふりこ」「ぞうきんしぼり」「ぐるぐるまわし」などがある。

妖霊はその力や(こちらの世界での)姿、性格などによって様々に分類される。魔術師が召喚する妖霊は、低級な順に

  1. インプ
  2. フォリオット
  3. ジン
  4. アフリート
  5. マリッド

の5種類に分けられる。これらの階級は妖霊の性質に基づいた固定的なもので、階級が異動することはない。また、マイトと呼ばれるものなど、インプ以下の妖霊も多く存在するが、魔術師が召喚することはめったにない。逆にマリッド以上の力を持つものも存在するが、使役が困難なため、これも召喚されることはめったにない。本作登場の妖霊では、ラムスラ、ヌーダなどがそれにあたる。ウィトウィックやグール、モウラーなどの亜種も存在する。

一般的に妖霊は生身の人間よりも丈夫だが、金属、特にに弱く、銀のナイフなどで突き刺せば殺すこともできる。他にも個々の妖霊の性質により、ローズマリーなどの薬草や、土と触れることを嫌うといった傾向もある。

妖霊については魔術師たちにもわかっていないことが多く、その分類も不完全なものである。しかし大半の魔術師は妖霊を道具として使役すること、短絡的には妖霊から己が身を守るすべのみに興味を持ち、妖霊を学術的な対象として研究する者は少なく、ましてや人格のある個人としてあつかう者はなおさら少ない。

登場人物 [編集]

主人公 [編集]

バーティミアス
齢5010になる妖霊(ジン)。古代から魔術師に仕え、かつてはエジプトのソロモン王らに奴隷にされた。地球に呼び出されたときはガーゴイルやプトレマイオスの姿をとることが多い。抜け目なく狡猾で毒舌だが、妙な所でドジをふむ。
別名に、「レカイト」「ニコー」「銀の翼をもつヘビ」「ジン族のサカル」「ヌゴーソ」など。悪魔と言われるのをきらう。
ナサニエル(公式名:ジョン・マンドレイク)
魔術師。権力志向が強い野心家。若くして出世し、そのためか性格に難がある。他人には気取った顔しか見せないが、悪友のような関係のバーティミアスに対しては素直な顔も見せる。2作目では髪が長く、3作目には短く刈り込んである。ダークスーツがお気に入り。: 「ナサニエル」が本名で「ジョン・マンドレイク」が公式名。
キティ(本名:キャスリン・ジョーンズ)
一般人。魔術への抵抗力を持ち、レジスタンス団の一員として魔術師への反抗計画に参加した。第2巻にてナサニエルの命を救った。その後、バーティミアスに興味を持ち、召喚しようとする。

魔術師 [編集]

アーサー・アンダーウッド
ナサニエルの1人目の師匠。国家保安庁の役人。気難しい性格で、魔術師としてのレベルが低く、ナサニエルに軽蔑されていた。サイモン・ラブレースの陰謀によって死亡。
マーサ
アーサー・アンダーウッドの妻で、ナサニエルの母代わり。ナサニエルに深い愛情を見せていたがサイモン・ラブレースの陰謀によって死亡。
サイモン・ラブレース
若手エリート魔術師。クールな策略家。ある事件でナサニエルから恨みを買う。
ルパート・デバルー
英国の首相。ナサニエルに目をかける。
ジェシカ・ウィットウェル
ナサニエルの2人目の師匠。やり手の女魔術師で、国家保安庁を管轄下に置く治安省の大臣。ロンドン塔の管理者でもある。
ヘンリー・デュバール
警察庁長官。ウィットウェルのライバル。自身もオオカミに変身できる。
ジェーン・ファーラー
デュバールの弟子。ナサニエルとはライバル同士。首相のお気に入りである。
クェンティン・メイクピース
首相と親しい劇作家。
グラッドストーン(ウィリアム・グラッドストン
伝説の魔術師。グラッドストーンの杖をつかい、かつてプラハを制圧した。ナサニエルの憧れの人物でもある。自身の骨に墓荒らし対策の為にアフリートであるホノリウスを取り込んだ。
プトレマイオス
エジプト王朝期の少年魔術師。バーティミアスの数多い主人の中でも、特別な存在。

一般人 [編集]

テレンス・ペニーフェザー
レジスタンス団のボス。普段は画材店を経営する老人。魔術師に妻を殺されたことで、魔術師に恨みを持つ。
クレム・ホプキンス
レジスタンス団の協力者。国立図書館の司書で魔術師の情報に詳しい。印象に残りにくい顔をしている。
ヤコブ・ハーネック
キティの幼なじみの少年。プラハからの移民の子供。キティとともに悲惨な事件に遭う。第2巻の最後に親戚のいるブルッヘに渡った。
あごひげ男(ヴェロク)
金さえあればなんでもする殺し屋。黒いマントを纏い、セブンリーグブーツ(一歩踏み出しただけでかなりの距離を歩ける)を履いている。魔術への抵抗力がかなり高い。

妖霊 [編集]

フェイキアール
バーティミアスのライバル。地球ではコック姿と厨房が定番。
ジャーボウ
好戦的な妖霊。得意技は爆撃。単細胞でジャッカル頭の姿をとっている。
アスコーボル
オカマの低級ジン。キュクロープスの姿をとっている。
クィーズル
ジン。バーティミアスとはプラハ時代からの戦友。
ホノリウス
グラッドストーンに仕えたアフリート。
ヌーダ
冷酷で恐ろしい力を持つ妖霊。メイクピースによって召喚される。
ラムスラ
サイモン・ラブレースによって召喚される。とてつもない力をもっており、魔法や物の性質を変る力を持つ。
ウラジエル
[指輪]に封じ込まれている妖霊で、とてつもない力をもっている。

魔法(呪文) [編集]

地獄の業火
妖霊の使用する魔法で、辺りを焼き尽くす力をもつ。
爆破の魔法
当たった物を爆破する光線を放つ魔法。
震動の魔法
当たったものを震動させ、粉々にする魔法。
盾の魔法
相手の魔法などから身を守る魔法。
闇の結び目
空中に黒い結び目を作り対象物を吸い込む魔法。生きているものが吸い込まれた場合、吸い込まれてから死ぬまで時間にズレが生じる場合がある。

魔道具 [編集]

サマルカンドのアミュレット
ナサニエルがバーティミアスを利用してサイモン・ラブレースから盗み出したアミュレット。鎖の先に楕円形のこまかい押し型模様の金がついており、そこに翡翠がはめ込まれたデザイン。中心の翡翠は、所持しているだけでほぼ全ての魔力を吸収する事ができる。ラブレースがラムスラ召還時に使用した後は、貴重品陳列室に保管されていた。
召喚用の角笛
サイモン・ラブレースがクーデターを企てた時に使用した。笛を吹くだけでその者の力の及ぶ妖霊を召喚することができる。しかし最初に笛を吹いた者が妖霊の言いなりになる必要があるのでめったに見かけない。ラムスラを解放する時点でナサニエルが破壊。
占い盤
ナサニエルがインプを封じ込めて作った簡単な魔道具。鏡状のもので、ジンの様子を観察(監視)するときなどに使用していた。
セブンリーグブーツ
一歩踏み出すだけで常人の七倍を進めるブーツで、ゆらめく光が宿っている。あごひげ男(ヴェロク)が使用していた。
グラッドストーンの杖
強大な魔力を秘めた木製の杖で、その正体はマリッドなどの複数の強力な妖霊を<封印の呪文>で封じ込めたもの。杖を握る魔術師の意志で妖霊たちの制限であるかせを弱める事でその力を利用できる。貴重品陳列室に保管されていたが「プトレマイオスの門」にてナサニエルが持ち出す。最終的には、ヌーダを倒す際、バーティミアス開放と同時にナサニエルが杖を折り、妖霊を開放する事となった。
[指輪]
異世界との即席の門で、ソロモン王が指にはめていて、金と黒曜石でできている。いつも異世界からすきま風がふいているために、はめた時や使用時には、はめているものに激痛をもたらす。はめている時に[指輪]をまわすと強大な[指輪]の霊が現れ、ただ触れるとジンやマリッドなどが出てきて、はめている者の願いを叶える。

外部リンク [編集]