バーゼル問題

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索

バーゼル問題(バーゼルもんだい、Basel problem)とは級数の問題の一つで、平方数逆数全ての和はいくつかという問題である。1644年Pietro Mengoli によって提起され、1735年レオンハルト・オイラーによって解かれた。バーゼルとはオイラーの故郷であり、この問題を解くのに失敗したベルヌーイ一家の地でもある。

オイラーはこの問題の一般化を解決した。ベルンハルト・リーマンはそのアイディアを取り入れることでゼータ関数を定義し、その性質を調べることに繋がった(1859年の論文「与えられた数より小さい素数の個数について」)。

求める平方数の逆数和を記号で書くと、次のようになる。

\sum_{n=1}^\infin \frac{1}{n^2} =\lim_{n\to \infty} \left( \frac{1}{1^2} + \frac{1}{2^2} +\cdots +\frac{1}{n^2} \right)

これは、ゼータ関数

\zeta (s)=\sum_{n=1}^\infty {n^{-s}}

s = 2 における値 ζ(2) でもある。答えは、円周率π とすると \frac{{\pi}^2}{6} (= 1.644934…) である。 オイラー積によれば

\sum_{n=1}^\infin \frac{1}{n^2} = \prod_{p:\mathrm{prime}} \frac{1}{1-p^{-2}} =\frac{1}{{1-(\frac{1}{2}})^2} \cdot \frac{1}{{1-(\frac{1}{3}})^2} \cdot \frac{1}{{1-(\frac{1}{5}})^2} \cdots \frac{1}{{1-(\frac{1}{p}})^2} \cdots

となる。

収束することの証明[編集]

\begin{align}
\sum_{n=1}^\infty \frac{1}{n^2} &=1+\frac{1}{2\cdot 2} +\frac{1}{3\cdot 3} +\frac{1}{4\cdot 4} +\cdots \\
&<1+\frac{1}{2\cdot 1} +\frac{1}{3\cdot 2} +\frac{1}{4\cdot 3} +\cdots \\
&=1+\sum_{n=2}^\infty \frac{1}{n(n-1)} \\
&=1+\sum_{n=2}^\infty \left( \frac{1}{n-1} -\frac{1}{n} \right) \\ 
&=1+\left( \frac{1}{1} -\frac{1}{2} \right) +\left( \frac{1}{2} -\frac{1}{3} \right) +\left( \frac{1}{3} -\frac{1}{4} \right) +\cdots \\ 
&=2 \\
\end{align}

したがって \sum_{n=1}^\infty \frac{1}{n^2} <2 であり、この級数は収束する。一般にゼータ関数 ζ(s) は s > 1 の範囲で収束する。

オイラーの解法[編集]

オイラーは、sin xマクローリン展開を利用して解く方法を編み出した。まずは sin x

\sin x=\frac{x^1}{1!} -\frac{x^3}{3!} +\frac{x^5}{5!} -\frac{x^7}{7!} +\cdots

と展開する。この両辺を x で割ると

\frac{\sin x}{x} =\frac{1}{1!} -\frac{x^2}{3!} +\frac{x^4}{5!} -\frac{x^6}{7!} +\cdots \quad -(1)

左辺は x = ±nπn自然数)で 0 であるから、右辺を形式的に以下のように「因数分解」できる。

\frac{\sin x}{x} =\left( 1-\frac{x}{1\pi} \right) \left( 1+\frac{x}{1\pi} \right) \left( 1-\frac{x}{2\pi} \right) \left( 1+\frac{x}{2\pi} \right) \left( 1-\frac{x}{3\pi} \right) \left( 1+\frac{x}{3\pi} \right) \cdots

隣接する2項を掛け合わせると

\frac{\sin x}{x} = \left(1 - \frac{x^2}{1^2 \pi^2}\right) \left(1 - \frac{x^2}{2^2 \pi^2}\right) \left( 1-\frac{x^2}{3^2 \pi^2} \right) \cdots \quad -(2)

(1) = (2) であり、両辺の x2 の係数を比較すると

(2):-\left( \frac{1}{1^2 \pi^2} +\frac{1}{2^2 \pi^2} +\frac{1}{3^2 \pi^2} +\cdots \right) =-\frac{1}{\pi^2} \sum_{n=1}^{\infty} \frac{1}{n^2}
(1):-\frac{1}{3!} =-\frac{1}{6}

これらは等しいはずなので

-\frac{1}{\pi^2}\sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{n^2} = - \frac{1}{6}

ゆえに、求める級数の値は

\sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{n^{2}} = \frac{\pi^2}{6}

なおオイラーは、一般的に k 番目のベルヌーイ数Bk とすると

\sum_{n=1}^{\infty} \frac{1}{n^{2k}} =(-1)^{k+1} \frac{B_{2k}(2\pi)^{2k}}{2(2k)!}

が成り立つことも示した。

フーリエ解析を用いた解法[編集]

放物線フーリエ級数で表す方法を用いる。

f(x)=\frac{x^2}{4} \ (-\pi <x<\pi)

を考える。この放物線は偶関数であるからフーリエ係数 bn は 0 である。a0

\frac{1}{2\pi} \int_{-\pi}^{\pi} \frac{x^2}{4} dx=\frac{{\pi}^2}{12}

であり、an (n ≥ 1) は

\frac{1}{\pi} \int_{-\pi}^{\pi} \frac{x^2}{4} \cos nxdx=\frac{(-1)^n}{n^2}

ゆえに、f(x) のフーリエ級数は

\begin{align}
f(x) &=\frac{{\pi}^2}{12} -\cos x+\frac{1}{2^2} \cos 2x-\frac{1}{3^2} \cos 3x+\cdots +(-1)^n \frac{1}{n^2} \cos nx+\cdots \\ 
&=\frac{{\pi}^2}{12} +\sum_{n=1}^{\infty} \frac{(-1)^n}{n^2} \cos nx \\
\end{align}

両辺に x = π を代入すると

\frac{{\pi}^2}{4} =\frac{{\pi}^2}{12} +\sum_{n=1}^{\infty} \frac{1}{n^2}

ゆえに、バーゼル問題の解

\sum_{n=1}^{\infty} \frac{1}{n^2} = \frac{{\pi}^2}{6}

が得られる。

関連項目[編集]