バロック・ポップ

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バロック・ポップとは1960年代中ごろからはじまった音楽の様式。その特長は、クラシックの要素をロックミュージック作曲録音にもちこむことである[1]。バロック・ロック、イングリッシュ・バロック 、チェンバー・ロック、チェンバー・ポップともよばれる。ハープシコードオーボエチェロフレンチホルンなどのロックにはなじみのない楽器が演奏される。バロック・ポップの最盛期は、シンセサイザーサンプラーの導入以前、さまざまな楽器が「実際に」セッション・ミュージシャンによって演奏されていたときである。プログレッシブ・ロックも同様にクラシックで用いられる楽器を取り入れているが、バロック・ポップの曲構成は普通のポップスのように単純で、歌詞の内容も後期プログレッシブ・ロックに見られるような抽象的なものではない。バロック・ポップはサンシャイン・ポップとも似通っているが、それよりもメロドラマチックで暗い曲調である場合が多い。

初期[編集]

バロック・ポップの正確な起源は、確信を持って判断することは困難である。1960年代初頭、バート・バカラックは「ウォーク・オン・バイ」(1963)でフリューゲルホルンを使うなどの実験的な試みをしていた。フィル・スペクターも、自身の「ウォール・オブ・サウンド」のためにクラシックで用いられる様々な楽器を導入していた。ビーチ・ボーイズブライアン・ウィルソンはそれに呼応するように、1963年のアルバム『サーファー・ガール』でストリングスを用いている。

イギリスのゾンビーズが1964年にリリースしたシングル「シーズ・ノット・デアー」は、クラシックで用いられる楽器は使用していないにも関わらず、後のバロック・ポップで表れる特徴的なハーモニーがよく出ているため、このジャンルの初期の例としてよく引用されている[2]。ニューヨークのバンドであるレフト・バンクのメンバー、マイケル・ブラウンはそれに触発され、1966年発表のシングル「ウォーク・アウェイ・レネ」でハープシコードとストリング・カルテットを導入する。これが、一般的にバロック・ポップの誕生だといわれている[2]。またビートルズは、クラシックの素養のあるプロデューサー、ジョージ・マーティンの手によって、楽曲「イエスタディ」や「エリナ・リグビー」でのストリングス・カルテットを導入したり、「イン・マイ・ライフ」ではハープシコードのような電子ピアノを使ったりした。

1966年にローリング・ストーンズがリリースした「レディ・ジェーン」では、ブライアン・ジョーンズがダルシマーを演奏している。

ブライアン・ウィルソンは、1965年の『トゥデイ』『サマー・デイズ』から、ハープシコードやツィターなどでオーケストアレンジを使い始め、特に翌1966年に発表の『ペット・サウンズ』での強烈なインパクトは、後のプロデューサーたちから模倣されることになる。

バロック・ポップの現在[編集]

バロック・ポップは、1970年代のパンク・ロックエレクトロニック・ミュージックが人気を博すにつれて、次第に姿を消していったが、R.E.M.のようなバンドの作品がきっかけになってまた復活しはじめた。現在において、オーケストラアレンジやクラシック曲の構成をもちいたバロック・ポップは、1990年代に人気を博したローファイブームへの反発として、インディー楽曲において一般的になっている[1]。ときにはポップにおける通常の楽器は完全に使われない。過去20年におけるバロック・ポップに分類された多くのアーティストは、インディー・ロックオルタナティブ・ロックフォークアメリカーナブリットポップサイケデリックドリーム・ポップなどのさまざまな分野に分類されることもある。

脚注[編集]

  1. ^ a b "Baroque pop", Allmusic Guides, retrieved 2012-07-14.
  2. ^ a b R. Stanley, 'Baroque and a soft place', Guardian 21/09/07, retrieved 13/04/09.

関連項目[編集]