バイエルンの高地から

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

バイエルンの高地から』(From the Bavarian Highlands作品27は、エドワード・エルガーが作曲した合唱と管弦楽のための楽曲。『バイエルンの風景』とも呼ばれる。

概要[編集]

1894年の秋、エルガーは一家でオーバーバイエルン、中でも特にガルミッシュで過ごしており、その休暇の想い出に6曲からなり『バイエルンの高地からの情景』(Scenes from the Bavarian Highlands)と名付けられた合唱曲集を書き上げた[1]。エルガーの作曲した音楽に対して妻のキャロライン・アリス・エルガーが歌詞を付けた。詩の題材には「Volkslieder[注 1]とSchnadahüpfler[注 2]から採った」言葉が用いられており[2]、舞踊の精神を手本として書かれている[3]。アリスは休暇の間に訪れたお気に入りの場所の回想として、各曲に副題をあつらえた。この曲集は元来ピアノ伴奏用に編曲されたが(1895年)、後に管弦楽伴奏編曲が生まれた(1896年)。曲集は、エルガー一家が滞在したガルミッシュの宿を切り盛りしていたSlingsby Bethell夫妻に献呈されている[4]

楽譜はノヴェロ社(Novello & Co)が出版を断ったため、ジョゼフ・ウィリアムズ社(Joseph Williams & Co.)から1895年12月に出版された[5]

曲集の初演は1896年4月21日、作曲者自身が指揮するウスター音楽祭合唱協会の歌唱で行われた[6]

楽曲構成[編集]

ガルミッシュから聳える山々を臨む。

6曲は以下の通りである。

  1. The Dance (Sonnenbichl)[注 3] - アレグレットジョコーソ
  2. False Love (Wamberg) - アレグレット・マ・モデラート
  3. Lullaby (In Hammersbach) - モデラート
  4. Aspiration (Bei Sankt Anton) - アダージョ
  5. On the Alm[注 4] (True Love, Hoch Alp) - アレグロピアチェーヴォレ
  6. The Marksmen (Bei Murnau) - アレグロ・ヴィヴァーチェ

後年、第1曲、第3曲及び第6曲は管弦楽用組曲『3つのバイエルン舞曲』としても出版されている。

演奏や録音は原典版のピアノ伴奏版、改訂版の管弦楽伴奏版のいずれによっても行われている。

脚注[編集]

注釈

  1. ^ Folk-songs、民謡。
  2. ^ "Schnadahüpfl"(南ドイツの言葉で、様々な綴りがある)とはヨーデルを含む4声の小規模な歌で、おそらく収穫の踊りとして生まれたものだろう。というのも"Schnader"とは"Getreide-Schneider"、すなわち大鎌で穀物を刈り取る人(農夫)のことであり、"Hüpfer"とは小さな踊りのことだからである。
  3. ^ "Sonnenbichl"とはガルミッシュの一地域の名前。
  4. ^ 作曲者の注によれば「高い山の牧草地」。

出典

  1. ^ Percy M. Young, Elgar O.M., p. 72
  2. ^ On the title-page
  3. ^ Moore, p. 184
  4. ^ Percy M. Young, Elgar O.M., p. 71
  5. ^ Moore, p. 190
  6. ^ Kennedy, Portrait of Elgar, p. 282

参考文献[編集]

  • Kennedy, Michael (1987). Portrait of Elgar (third ed.). Oxford: Clarendon Press. ISBN 0-19-284017-7 
  • Moore, Jerrold N. (1984). Edward Elgar: a Creative Life. Oxford: Oxford University Press. ISBN 0-19-315447-1 
  • Young, Percy M. (1973). Elgar O.M.: a study of a musician. London: Collins. OCLC 869820 

外部リンク[編集]