ハーモニックドライブ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索
波動歯車装置の原理
(青:サーキュラ・スプライン、黄:ウェーブ・ジェネレータ、赤:フレックススプライン)

波動歯車装置であるハーモニックドライブ(登録商標)は、楕円真円差動を利用した減速機で、小型軽量高効率で多くのサーボモータに使われている。学術名もしくは一般名称は、波動歯車装置(Strain wave gearing)であり、ハーモニックドライブは、ハーモニック・ドライブ・システムズ社の商標(日本では商標登録番号第801166号と第943799号)である。

サーキュラ・スプライン(C/S)、ウェーブ・ジェネレータ(W/G)、フレクスプライン(F/S)から構成される歯車装置であり、特徴として高減速比、軽量、コンパクト、バックラッシュが少ないなどがある。これらの特徴により多くのロボットに使用されている。

歴史[編集]

  • 1957年 - ハーモニックドライブの原理がC.W.マッサー (Clarence Walton Musser) により発明される。
  • 1964年 - 株式会社長谷川歯車USM Co.,Ltdと技術提携を行い、日本で初めてハーモニックドライブの実用化に成功する。
  • 1970年 - 両社の共同出資により、ハーモニック・ドライブ・システムズ社が創立。

特長[編集]

  • 高回転精度・高位置決め精度
同時噛み合い歯数が多く、また180度対称の2ヶ所で噛み合っているため、歯のピッチ誤差や累積ピッチ誤差の回転精度への影響が平均化され、高回転精度・高位置決め精度が得られる。
  • 小型・軽量
他の減速機に比べ1/3以下の体積と、1/2以下の重量で同等のトルク容量と減速比が得られるため、小型・軽量である。
  • 高減速比
複雑な機構、構造を用いることなく、一段同軸上で1/30-1/320という高減速比をもつ。
  • 高トルク容量
他の減速機と違い、同時噛み合い歯数が総歯数の10%以上あり、かつ面接触するため、高いトルク容量が得られる。
  • ノンバックラッシュ
独創的原理により、歯の噛み合いに制御不能なバックラッシュがない。これは、制御機構には欠かせない特長である。
  • 高効率
歯の噛み合い部の滑りが極めて少ないため、摩擦による動力損失が少なく高減速比にもかかわらず高効率を維持し、駆動モータの小型化が可能である。
  • 静かな運転
歯の噛み合いの周速が低いことと、力のバランスがとれているため、静粛運転でかつ振動も極めて小さい。

部品[編集]

サーキュラ・スプライン (circular spline;C/S)
剛体リング状の部品。内周に歯が刻まれており、フレクスプラインより歯数が2枚多くなっている。通常、ケーシングに固定される。
ウェーブ・ジェネレータ (wave generator;G/S)
楕円状カムの外周に薄肉のボール・ベアリングを組み合わせた部品。ベアリングの内輪はカムに固定されているが、外輪はボールを介して弾性変形する。通常は入力軸に取り付けられる。
フレクスプライン (flexspline;F/S)
薄肉カップ状の金属弾性体の部品。開口部外周に歯が刻まれている。フレクスプラインの底をダイヤフラムと呼び、通常、出力軸に取り付けられる。

動作原理[編集]

動作説明

フレクスプラインは、ウェーブ・ジェネレータにより楕円状にたわめられ、長軸の部分でサーキュラ・スプラインと歯が噛み合い、短軸の部分では歯が完全に離れた状態になる。サーキュラ・スプラインを固定し、ウェーブ・ジェネレータ(入力とする)を時計方向へ回すと、フレクスプラインは弾性変形し、サーキュラ・スプラインとの歯の噛み合い位置が順次移動していく。ウェーブ・ジェネレータが1回転すると、歯数差2枚分だけフレクスプラインは反時計方向へ移動する。

種類[編集]

  • カップ型 - 標準形式で旋回駆動部に適用されることが多い。
  • シルクハット型
  • デファレンシャル型 - 中央部が空いているので、手首の振りや回転などの複数の伝達機構を内蔵するのに最適。
  • フラット型
  • シールド型

減速比[編集]

波動歯車装置の減速比は次のように求められる。

フレクスプラインを出力としたときの減速比 i は、サーキュラ・スプラインのピッチ円直径を D_c 、フレクスプラインのピッチ円直径を D_f とすると、

 i = \frac{\pi D_c - \pi D_f}{\pi D_f} = \frac{D_c - D_f}{D_f}

となる。

また、サーキュラ・スプラインの歯数を Z_c 、フレクスプラインの歯数を Z_f とすると、減速比 i は、

 i = \frac{Z_c - Z_f}{Z_f} = \frac{\Delta Z}{Z_f}

となる。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]