ハーツ (トランプ)

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ハーツ(英語:Hearts)は、トランプを用いて行うトリックアボイダンスゲームの一種で、特定のカードを取るのを避けるのが目標となる。様々な変種があり、その全てをハーツという場合とその代表例であるブラック・レディブラック・マリアとも呼ばれる)のみをいう場合がある。なお本によっては「ハーツ」ではなくハートと表記されることもある[1]。まず代表例であるブラック・レディのルールを説明する。

Microsoft Windows付属アプリケーションとしても知られている。Xbox 360のXboxLiveアーケードにてHardwood Heartsがダウンロード配信されている。

ブラック・レディのルール[編集]

人数[編集]

3 - 6人程度。4人がベスト。

使用するもの[編集]

ジョーカーを除いたトランプ1組52枚から、人数に従ってさらに以下のカードを抜いたものを使う。

  • 3人の場合 : 2♣もしくは2♦を抜く。
  • 4人の場合 : 何も抜かない。
  • 5人の場合 : 2♣2♦の両方を抜く。
  • 6人の場合 : 2札を4枚全て抜く。

この他、得点の記録のために筆記具を使う。

ゲームの目的[編集]

このゲームでは以下の札がマイナス点となる。目標はマイナス点を取らないようにすることである。

  • A~Kの札 : マイナス1点
  • Q : マイナス13点

何度もゲームを繰り返し、誰かが定められたマイナス点(一般的にはマイナス100点)を越えるまで続ける。この時点で獲得したマイナス点に応じて順位を決定する。

配札[編集]

ディーラーに指定されたプレイヤーは、カードを切り、自分の左隣りから順に1枚ずつ全てのカードを配る。誰がディーラーをしてもよいが、通常は各ディール(=手札を配ってからプレイが終了するまで)ごとに時計回りにディーラーが交代する。

カードの交換[編集]

各プレイヤーは、手札から3枚のカードを任意に選んで裏向きにして左隣りのプレイヤーに渡し、代わりに右隣りのプレイヤーから3枚のカードを受け取り、自分の手札に加える。なお、左隣りのプレイヤーに渡すカードを選ぶ前に右隣りのプレイヤーからのカードを見てはならない。

プレイ[編集]

各トリックは切り札のない通常のトリックテイキングゲームのルールに従う。すなわち、トリックと呼ばれる以下のミニゲームを手札がなくなるまで繰り返す。

  1. 定められたプレイヤーが手札から任意の1枚を場に表向きに出す(「リードする」という)。
  2. その後、時計回りに各プレイヤーが手札からカードを1枚ずつを表向きに場に出す。この際と同じスートのカードがある場合はそれらの中から任意の一枚を出し(「フォローする」という)、そうでなければ任意の一枚を出す(「ディスカードする」という)。リードされたスートの札があるのにそのスートの札を出さないのは反則である(「マストフォロー」ルール)。
  3. 全員が一枚ずつ出し終わったらそのトリックは終了である。場に出された札は、リードされたスートの札の中で最も強いカードを出したプレイヤーのものになる。このプレイヤーは場の全て札を集め、手元に裏向きに置いておく。これらのカードは以後のゲームでは使わない。

カードの強さは上から順にA→K→Q→J→10→9→8→7→6→5→4→3→2である。

カードを獲得したプレイヤーが次のトリックのリードを行う。なお、最初のトリックのリードは(カードの交換の後で)クラブの2を持っているプレイヤーが行う。

以上のミニゲームを繰り返し、手札がなくなったらそのディールは終了である。各プレイヤーは獲得した札の中にあるマイナス点を数え、紙に書き加える。それが終わったらカードを配りなおし、次のディールを行う。

誰かが定められた点数(通常、マイナス100点)に達したらゲームは終了で、この時点でマイナス点が少ない方から順に順位がつく。

スラム[編集]

上述のように、このゲームでは獲得したマイナス点の札に応じてマイナスの得点がつくが、例外的に各ディールで一人のプレイヤーが全26点のマイナス点を全て集めた場合はスラムと呼ばれ、そのプレイヤーにはマイナスではなくプラスの26点がつく。なお、スラムは「シュート・ザ・ムーン」、「ゴーイング・フォー・コントロール」、「ランニング・ハーツ」などとも呼ばれる[2]

オプショナル・ルール[編集]

主要なオプショナル・ルールとして以下のものがある。

  1. マイナス点の札がプレイされるまで(または、手札がマイナス点の札だけになるまで)は、ハートのカードをリードすることができない。マイナス点の札をプレイすることを「ハートをブレークする」という。
  2. ラウンドの最初のトリックではペナルティ・カードをプレイすることはできない。ただし、手札がすべてペナルティ・カードの場合は例外である。
  3. 特定のカード(通常はクラブの2かスペードのQ)を交換できないことにしているグループもある。

以上のルールはハーツをプレイするグループごとに決めるものである。ゲームを始める前に、どのルールを使うのか確認しておくとよい。

ローカル・ルール[編集]

オープニング・リード[編集]

最初のトリックでは2♣を持っているプレイヤーに戦略の自由度がないため、2♣の代わりに、ディーラーを基準にしてオープニング・リードを行うプレイヤーを決める方式の方が好まれることもある。この方式では、ディーラーの左側のプレイヤーがオープニング・リードを行い、戦略を考えて自由に最初に出すカードを選ぶことができる(ペナルティ・カード以外)。このバリアントを使う場合は、ディーラーの順序をしっかりと記録しておく必要がある。

カードの交換[編集]

誰にカードを渡すのかは地方ルールにより、カード交換を行わないルールもある[2]。Windowsに付属しているハーツのソフトでは、誰にカードを渡すのかがディールに依存しており、カードを渡すプレイヤーが左隣り、右隣り、対面、カード交換無しの順番で繰り替えされる。(注 : このソフトでは参加人数は4人。)

また分割パスとよばれるローカルルールでは、カードを交換する際、ホールドの前に「分割パス」という交換方法を追加する。「分割パス」のカード交換では、ほかの3人のプレイヤーに1枚ずつカードを渡す。

カードの交換方法のバリアントには、ディーラーがそのラウンドの交換方法を決める方式もある。交換するカードの枚数には上限を決めることが多いが、ディーラーはカードの交換方法を型にはまることなく自由に決めてよい(「左側に2枚、右側に1枚」など)。ただし、ディーラーは自分の手札を見る前に交換方法を決めなければならない。

バリアント[編集]

ブラックレディとの違いのみを述べる。

  • 基本ハーツ[1]: ハートの札はマイナス1点だが、Q♠はマイナス点の札ではない。
  • オムニバスハーツ[1]: 10♦(ルールによってはJ♦[2])が(マイナスではなく)プラス10点の札になる。10♦はスラムの達成の為には必要ない。
  • ピンクレディ[1]: Q♠(ブラックレディ)のみならずQ♥(ピンクレディ)もマイナス13点の札になる。他のハートはマイナス1点。10♦(ルールによってはJ♦[2])はプラス10点。

キティ・ハーツ[編集]

ディーラーは、52枚のカードをよく切ってすべて配る。ただし、その際にカードを1枚裏向きにしてテーブルの中央に置く。このカードを「キティ」といい、各プレイヤーは17枚のカードを受け取る。最初のトリック(または、最初にペナルティ・カードの出たトリック)の勝者はキティも獲得し、そのプレイヤーだけがキティが何か見ることができる。このルールでは、状況によってはキティのカードを取ることにもメリットがあるため、オープニング・リードでは2♣を出す必要はない。オープニング・リードについては何らかのバリアント・ルールを使用する。

ハイロー・ジョーカー・ハーツ[編集]

このバリアントでは、2枚のジョーカーを加えた54枚のカードを使用する。カードは各プレイヤーに18枚ずつ配り、キティは存在しない。ジョーカーはハートとして扱う。ただし、最初に出たジョーカーは「ハイ」で、Aより強い。2番目に出たジョーカーは「ロー」で、2より弱い。得点に関しては、ハートのカードが計15枚になるため、Q♠の得点を15点に上げることが多い。実際にどうするかは、「紳士協定」ルールと同様にゲームの開始前に決めておく。このバリアントは、「ハロー・ハーツ」ともいう。

キャンセレーション・ハーツ[編集]

これは大人数用(6人以上)のバリアントである。このバリアントではトランプを2組使用し、ペナルティ・ポイントは合計52ポイントになる。1回のトリックで同じカードが出された場合、2枚とも「キャンセル」され、トリックの勝敗には影響しない。リードされたスートのカードで、キャンセルされなかったカードのうち最も強いカードが勝つ。リードされたスートのカードがすべてキャンセルされた場合は、そのトリックのリードをしたプレイヤーが次のトリックでもリードし、そのトリックの勝者が前回のトリックのカードも獲得する。カードがキャンセルされるのはトリックの勝敗を決める場合だけで、キャンセルされたカードにもペナルティ・ポイントは発生する。

手札は、各プレイヤーに均等に配る。カードの交換方法は人数に合わせて変える必要がある。残ったカードは表向きにして置いておき、最初のトリックの勝者がそのカードも獲得する。たとえば、7人のプレイヤーで2組のトランプ(104枚)を使う場合、各プレイヤーは14枚の手札を受け取り、残りの6枚は表向きにして残しておく。

シュート・ザ・ムーンを達成した場合は、他のプレイヤーの得点に52ポイント加算する。しかし、キャンセレーション・ハーツではこれは滅多に起きない。

プレーヤーの数が11人以上になると、トランプは3組必要になってくる。キャンセルのルールは同様に適用されるが、同じカードが3枚とも1回のトリックで出された場合は、最初の2枚だけがキャンセルされ、3枚目は有効となる。トランプを3組使う場合は、シュート・ザ・ムーンの得点は78ポイントになり、通常はこれでゲームが終了するか、終了に大きく近づくことになる。しかし、シュート・ザ・ムーンは2組のトランプを使う場合よりもさらに起きにくくなる。4組以上のトランプを使用する場合にも同様にキャンセルのルールを適用することはできるが、それほど多くの枚数が必要になることはあまりないだろう。

得点のバリアント[編集]

ターゲット・スコア[編集]

これは、合計得点が特定の値ちょうどになった場合にボーナスを得るというバリアントである。あるプレイヤーの得点がちょうど50になった場合は0に、100になった場合は50に減らされる。

クラブの10[編集]

10♣もペナルティ・カードで、10♣を獲得したプレイヤーはそのラウンドのポイントが2倍になる。オムニバスのルールを使用している場合10♣はそのプレイヤーが獲得したカードに応じてペナルティにもボーナスにもなりうる。このルールは今ではあまり使われていない。

シュート・ザ・ムーン[編集]

全てのハートとQ♠を取るとボーナスとして自分を除く全員に26ポイントが加算される。

シュート・ザ・サン[編集]

トリックをすべて獲得した場合、ボーナスは通常の26ポイントの倍の52ポイントになる。

スポット・ハーツ[編集]

これは、強いハートほどペナルティ・ポイントも大きくなるというバリアントである。具体的には、各ハートはその数字と同じポイントになる(2♥ = 2、…、K♥ = 13、A♥ = 14)。Q♠は25ポイントのペナルティになる。これによって、各ラウンドで計129ポイントが割りふられることになり、通常は誰かの得点が500ポイント以上になるまでゲームを続ける。「シュート・ザ・ムーン」については、ボーナスを全カードのポイントの合計値にするか、単にこのルールは使用しない。また、ポイントを2♥ = 2、…、10♥ = 10、J♥ = 10、Q♥ = 10、K♥ = 10、A♥ = 15、Q♠ = 25とするバリアントもある。

複素数ハーツ[編集]

これは、リチャード・ガーフィールドが考案したとされるバリアントである。

複素数ハーツのルールは通常のハーツと同じであるが、得点計算には複素数を使用する。カードの得点は、ハートは1枚につき1ポイント、Q♠は 13i ポイント、J♦は-10ポイントとなる。10♣を獲得したプレイヤーは、そのラウンドの得点に 2i をかける。最初に得点の絶対値が100を超えたプレイヤーが敗者となる。勝者は、この時点で得点の絶対値が最小のプレイヤーである。 なお、複素数 a + bi の絶対値は \sqrt{a^2 + b^2}である。

この方式では、J♦が常にボーナス・カードになるとは限らないし、ペナルティ・カードも常に有害とも限らない。たとえば、10♣とQ♠を同時に獲得すると-26ポイントになり、ペナルティ・ポイントを減らすことができるかもしれない。同様に、合計得点の実部がマイナスになったプレイヤーにとってはJ♦はペナルティ・カードになるし、ハートのカードがボーナス・カードになる。また、ペナルティ・ポイントの虚部を打ち消すにはJ♦と10♣を同時に獲得するしかない(この場合、-20i ポイントになる)。そのため、Q♠は特に危険である。

複素数ハーツでの「シュート・ザ・ムーン」のルールにはさまざまなものがある。そのうちのひとつは、「シュート・ザ・ムーン」を達成したプレイヤーが \pm 13 \pm 13i の符号を決め、各プレイヤーの得点に加えることができるというものである。

参考文献[編集]

  • 松田道弘『トランプゲーム事典』東京堂出版、1988年

出典[編集]

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  1. ^ a b c d 松田道弘『トランプゲーム事典』
  2. ^ a b c d 英語版

外部リンク[編集]