ハンドロード

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左から.50 BMG, .300 Win Mag, .308 Winchester, 7.62x39mm, 5.56x45mm NATO, .22LR.

ハンドロード(手詰め、リロード)とは、拳銃小銃機関銃散弾銃などの実包(実弾)を手作業で製作することをいう。ここでは、ライフル弾のハンドロード方法に併せて、散弾銃実包のハンドロードについても併記する。

ライフル・拳銃におけるハンドロードの目的[編集]

かつては特に命中精度が求められる、ベンチレスト競技やライフル射撃選手の場合、精度を向上させる目的でハンドロードを行うことが多かった。これは、工場で生産された実包は工場装弾(ファクトリーロード)と呼ばれ、大量生産であるため精度には限界があり、本当の意味での精密な射撃には使えなかったからである。現在ではファクトリーロードでも射撃競技用の高精度実包[1]が存在するが、非常に高価なため本番での使用が基本となる。特に練習において大量に実包を使用する場合は通常のグレードでも費用がかさむため、回収した薬莢に別売りの弾頭発射薬雷管(プライマー)を使い再使用すれば、手間は掛かるが新品を買うよりトータルで安く上がる。このような理由でもハンドロードが使われていたが、薬莢のわずかな歪みが出る可能性もあるため、使用回数には制限がある。

一般向けのライフル銃の銃身は、内径の公差±5/100ミリ程度で作られる。30口径、つまり7.62mmを正確に加工しようとしても、必ず大きめに出来たり、逆に小さめに出来たりする。その公差が大きくてもプラス百分の5ミリ、小さくても百分の5ミリと言う事になる。すなわち、同じメーカーの銃で同じ銃身であっても、厳密には微妙に内径が違うと言うことになる。そのため、同じ装弾を使っても内径の小さい銃身で撃てば、弾頭がライフリングに食い込む抵抗が大きくて火薬の圧力が高くなり、逆に内径の大きい銃身の場合、弾頭のライフリングに食い込む抵抗が少ないので、火薬の圧力はあまり上がらないという事になる。それぞれの銃身を初速で考えると、30m/秒程度の違いでしかないが、それでも命中精度には少なからず影響を与える。競技用の銃に使われる銃身は一般向けよりも精度は高いが、高価である。

軍の狙撃手など、目的や用途で弾頭の種類、重量、初速を変えたい場合には発射薬(無煙火薬)の種類や充填量を変更する必要があるが、これらすべての希望条件を満たした工場装弾は存在しないため、ハンドロードしか選択肢はなくなる。標的までの距離や火薬量が規定で決まっている射撃競技では、各種目用(50mピストル、300mライフルなど)に特化した高精度なファクトリーロード品が各社から販売されている。

その他の目的としては、一部の軍用銃(20世紀以前の黒色火薬銃の実包や、日本軍ドイツ国防軍などの第一次・第二次世界大戦の敗戦国の規格など)は、工場装弾と呼ばれる物が現在ではほぼ存在しないため、こうした銃の射撃を行う場合には、その都度その銃専用の規格の実包をハンドロードで制作する必要が生じる。

軍用装弾[編集]

安価で一般市場に出回っている軍用装弾は自動小銃機関銃に使用される目的で製造されており、その特性上全天候で使う事を想定している。そのために防水処理が施されており、弾頭と薬莢は樹脂の様な溶剤で接着してある。これは湿気の侵入と弾頭が機関銃などの振動で動かないようにするためである。

弾頭が接着してあるので抜弾抵抗が強くなり、初速は通常の物より30m/秒くらい加速されるが、発射時の抜弾抵抗にバラツキがあるため、命中精度から言うと良い結果は得られない。これは戦闘に使用される弾薬の特性上、精度を犠牲にしても耐久性、信頼性に重きを置く性質上の事である。

軍の狙撃手狙撃銃を使用し、大距離狙撃を想定した場合でも距離は1000m前後、想定される最小の目標は人間の頭部程度であろう。しかし、ベンチレスト競技やライフル射撃の選手は、この距離であってもミリ単位の集弾を競う必要があり、これくらい精密な射撃では、上述の理由により精度の悪い軍用装弾(軍用マッチアモを含む)を使用する選手は皆無なのが現状である。軍用装弾での入賞はまず望めない。ただし、命中精度を度外視した、いわゆる射撃の感覚を掴むための練習にはこれで充分である。実際軍からの払い下げ品は市場価格以下で売られることが多いため、そういう点でも感覚をつかむための練習にはよい。

必要機材[編集]

機材一例
シェルホルダー

リローディングキットが市販されているので、これを購入する事で最低限の基本的な制作は可能になる。一般的なキット内容は以下の通り。

  • プレス台
  • リサイジングオイル
  • パウダーメジャー
  • プライマートレー
  • ケーストリマー
  • ブラシ類

など。(内容はメーカー、グレードにより異なる。)

これ以外にも次のものが必要になる。

  • リローディングブック
  • 弾頭
  • 発射薬(無煙火薬など)
  • 空薬莢
  • 雷管
  • ダイスセット
  • ケースタンブラー
  • シェルホルダー など。

専用の机にボルトでプレスを止めるのが一番理想的であるが、不可能な場合は机にCクランプで止めると言う方法もある。

ライフル・拳銃実包のハンドロード方法[編集]

ダイスセット

一般的な作業工程は、以下の通り。

  1. リサイズ
  2. ケース研磨
  3. 雷管の装着
  4. 発射薬の装填
  5. 弾頭の装着

リサイズ[編集]

  • 一度使用した薬莢は発射の圧力で膨張しているため、もとの大きさまで整形し直す(リサイズ)する必要がある。ダイスセットは、薬莢を整形するフルレングスダイス、弾頭をシーティングする(はめ込む)シーティングダイスの2つでセットになっている。ネックサイザーは、薬莢全体の整形をしないで、ネックの部分だけをリサイズするダイスである。フルレングスダイスの役目は、薬莢の成形をすることと、雷管を抜くことである。従って雷管を抜くための、デキャッピングピンが付いているのがフルレングスダイスである。
  • ネックサイズだけでリサイズした方が命中精度が良い、あるいは薬莢の保ちがいいと考えられているようであるが、ネックサイズだけでリサイズしていると、薬莢が次第に大きくなり、最終的に薬室に入らなくなる恐れがある。
  • フルレングスサイズをかけても.308ウィンチェスター弾なら20回程度は使えるので特段薬莢の寿命に影響がある訳ではない。どうしてもネックサイザーを使いたいと言うのであればフルレングスダイスを使い、最後の2ミリ位クリアランスを付けて押し込めば、ネックの部分は整形できて、本体は整形しないようにするということが出来る。ネックサイズだけならこれで充分効果を果たせる。

リザイジングオイルの塗布[編集]

  • この油塗りの作業を怠ると、薬莢成形のフルレングスダイスに薬莢が焼き付いて抜けなくなる。
    • 油塗りは絶対に忘れてはいけない作業である。また、油は外側に塗ると同時にネックの内側にも塗るのを忘れてはいけない。これら薬莢の成型は、ネックの内径、薬莢の外形、この両方を同時成型するので両方に油を塗る事が必要である。
  • パッドと呼ばれるスポンジの上に塗り、その上で薬莢を転がして薬莢全体に油を塗る。
  • 油は塗りすぎても弊害は無く、せいぜいショルダーの所が溜まった油で内側に凹むくらいであり、凹んだ所で何の問題もない。むしろ塗り足らなくて焼き付いた場合、そのダイスは廃棄するしかないので注意を要する。
  • 焼き付いた薬莢を取り除くスタックケースリムーバーと言う工具も有るが、ダイスセットを改めて購入しても双方とも値段があまり変わらない場合が多い。

ケース研磨[編集]

発射済みの薬莢は火薬の煤で汚れている。単に再利用が出来れば良いとするならば研磨の必要性は薄いが、ハンドロード後に保管しておく場合など煤に起因するケースの腐食を防ぎたい場合には、ケースクリーナーと呼ばれる薬莢専用の洗浄液に漬け込むか、ケースタンブラーと呼ばれる洗浄機械を用いてケースの洗浄及び研磨を実施する。

ケースタンブラーは壺のような形状をした機械で、クルミ殻やトウモロコシ芯を細かく砕いた「メディア」と呼ばれる顆粒と、専用の研磨剤を混ぜて使用する。ケースタンブラーの大きさにもよるが、.308程度の大きさの薬莢であれば1回で100発前後を一度に研磨する事が可能である。

雷管の交換[編集]

古い雷管(プライマー)を抜く。発射の衝撃で変形した雷口を整形し、新しい雷管をダイスで圧入する。

発射薬の注入[編集]

目的に適合した発射薬(ガンパウダー)を所定の量を量って薬莢に注ぎいれる。ライフル弾の場合は薬莢の開口部ほぼ一杯で所定量となる場合がほとんどなので問題ないが、拳銃弾で速燃性の火薬だと薬莢内に隙間ができる場合がある(メジャーな9mmパラベラム弾、.45ACP弾両方共に振るとシャカシャカ音が鳴るようなスペースが存在する)。これを誤って所定量を超えて入れてしまうとダブルロード、下手をするとトリプルロードとなり、射手にも銃にも危険を及ぼすので注意が必要である。

逆に火薬を入れ忘れた場合は、雷管が発生させる圧力だけで弾頭は薬莢から抜けるが、銃身から飛び出すことなく途中で止まってしまう。これが不発だと思い再装填→射撃した場合、銃身が破裂するほどの異常圧力が発生し、銃や射手に危険が及ぶ可能性があるので、ダブルロードと同じく注意が必要である。

弾頭の装填[編集]

新しい弾頭をダイスで圧入して完成。

散弾銃におけるハンドロードの目的[編集]

散弾銃の場合はライフルのハンドロードとは若干意味合いが異なる目的でハンドロードが行われる。

散弾銃の実包には大きく分けて、バードショット、バックショット、スラッグショットの3種類があり、特にバード・バックショットは数多くの散弾径の規格が存在し、同じ散弾径でもそれぞれ薬量も複数種類が用意されている。また、スラッグショットにおいても、通常は銃口のチョーク(絞り)を保護する目的で、多くの工場装弾はシリンダー口径よりも小さな径(モデ・チョーク程度の外径)のスラッグ弾頭を採用する。

散弾銃のハンドロードは、バード・バックショットの場合、通常の工場装弾として入手できる規格は敢えてハンドロードで生産する必然性が薄いほど安価に販売されているため、弾薬費用の節約と言うよりも、工場装弾に無い特殊な散弾の組み合わせを実現する目的で行われる。バードショットの場合は、遠近両用の獲物に対応するため、1-4号などの大径散弾と5-9号の小径散弾をミックスした実包や、通常の工場装弾では生産されない5-9号相当の小径散弾でのマグナム装弾の作成を行う目的でハンドロードが行われることがある。また、バックショットの場合は工場装弾の最大規格である6粒・9粒弾よりもさらに大粒の弾で、3粒・4粒弾といった強力な弾を作成する目的でハンドロードが行われることがある。

スラッグショットの場合は本来の弾薬費用の節約という目的以外に、自身が所持するスラッグ銃の銃口径ぎりぎりの大きさのスラッグ弾頭の鋳型や、特殊な風切り溝を設けたスラッグ弾頭の鋳型を特注し、ライフルのハンドロードと似たような感覚で射撃精度を追求する目的でハンドロードが行われる事もある。

また、村田銃をはじめとする戦前の黒色火薬・真鍮ケースを使用する散弾銃の場合や、10ゲージ・16ゲージ・24ゲージ・28ゲージなどの現在市場の主流では無くなった口径の実包を使用する銃の場合には工場装弾自体が存在しないか極めて種類が限定される。そのため、こうした銃の射撃を行う場合には、その都度その銃専用の実包をハンドロードで制作する必要が生じる。

散弾銃実包のハンドロード方法[編集]

散弾銃実包の場合、ライフル・拳銃に比べ作業工程がかなり簡略化される。無地のケースが用意できない場合には、弾の種類を取り違えないためにも、実包作成後にマジックなどで作成した実包のサイズをケース側面やオーバーショットカードに明記しておく事が望ましい。

  1. 薬莢の選定
  2. ケース研磨(真鍮薬莢)
  3. 雷管の装着
  4. 発射薬の装填
  5. ワッズ・散弾の挿入
  6. 口巻き(クリンプ)の作成

薬莢の選定[編集]

  • 散弾銃の場合、日本国内においては空ケース単体を販売している例が少ないため、必然的にクレー射撃場などで空薬莢を集めて再利用する方法が主流となる。
  • 散弾銃は発射圧力がライフルに比較して低いので、1回程度の使用済み薬莢であればリサイズを行う必然性は低い。その為、薬莢の選定はロンデルの変形や錆、ケース割れなどが無い物を選別する程度でも十分である。
  • 一般的にケースが頑丈な物ほどスラッグ装弾の安定した発射に向いているため、猟用装弾などの強固なケースを使用した実包の空薬莢を猟期中や猟期後の残弾処理の際に集めておくのもよい。
  • プラスチックケースの場合、莢口がぼろぼろに傷んでいる場合はカッターで傷んだ部分を切り落とす。
  • 真鍮薬莢においては、ケースの極端な変形やへこみがある物は使用を避ける。莢口が変形している場合には、薬莢内径に合わせて制作された修正工具(丸棒)で修正を行う。薬莢側面のへこみでも、軽微なものであればこの丸棒である程度までは修正が可能である。
  • プラスチックケースが主流となる以前の「紙薬莢」においては、変形している物は「口締め器」を使ってリサイズを行う場合があった。

ケース研磨[編集]

  • 真鍮薬莢の場合、多くは黒色火薬を使用するため、発射後の薬莢には多量の煤が残っている。ケース外部の煤は薬室への張り付きを防ぐ為に事前に拭き取っておく必要があるが、ライフル薬莢のようにケースタンブラーを使用してまで徹底的な清掃を行う必要性は必ずしも無い。同じ薬莢で連続して射撃を行う場合には薬室装填、弾頭挿入に支障が無い程度煤を落とせば十分である。

プライマー交換[編集]

  • 基本的な作業はライフルと同じ。
  • 散弾銃用の雷管はライフル用の雷管に比べ長さが長いため、圧入不良には十分に注意する。もしも薬莢後端に雷管が飛び出していると、薬室閉鎖の瞬間に暴発する恐れがある。

発射薬の注入[編集]

  • 所定の量の発射薬を量って薬莢に注ぎいれる。黒色火薬・無煙火薬共にダブル・トリプルチャージ・入れ忘れに十分注意する点はライフル実包と同じである。
  • 黒色火薬を使用する古い銃の場合は、可能な限り古い文献を探しだし、その銃が使用されていた当時の規定薬量を守るように心がけること。

ワッズ・散弾・スラッグ弾頭の挿入[編集]

  • 今日のプラスチックワッズは散弾やスラッグなどの使用弾頭に応じて様々な形の物が用意されているため、使用弾丸に合わせて最適な物を選定すること。ブリネッキスラッグの場合には弾頭とワッズが一体となっている為、ワッズを別途用意する必要が無い利点がある。
  • 羊毛ワッズを使用する場合には、カードワッズ(ベースワッズ、下ふた)、クッションワッズ(中ふた)の順番を間違えないように挿入する。
  • 散弾にも薬量に合わせた規定量が存在するため、チャート表に従い一粒単位まで十分な調整を行って重量を計量した上で注ぎ入れること。
  • バックショットの場合には、コーン粉などを充填材として弾丸の隙間に詰めることもある。

口巻き(クリンプ)の作成[編集]

  • 市販のショットシェルリロードマシンには、一般的に工場装弾に用いられる「スタークリンプ」を作成する機能を有している場合が多い。この場合マシンのプレスで押さえるだけでクリンプを作成できる利点があるが、クリンプ後に装弾の種類が外部から判別できなくなるため、特にスラッグ弾を作成する場合には他の散弾実包と区別が付きやすいようにマーキングをしておく事が望ましい。
  • スラッグ弾頭を使用する場合には外部からの識別を容易にする目的で、卓上ボール盤に専用チャック(ロールクリンパー)を取り付けて「ロールクリンプ」を作成する場合もある。[2]スラッグ弾ではなく散弾を用いる場合には、散弾がこぼれ出さないように紙製のフタ(オーバーショットカード、上ふた)を使って散弾を押さえながらクリンプを作成する。
  • 真鍮薬莢の場合は多くの場合クリンプを作成しない。スラッグ弾頭の場合には直接弾頭に、散弾の場合にはオーバーショットカードで散弾を押さえた上になどを垂らして固定を行う。紙・プラスチックケースのクリンプに比べて固定が弱いため、ハンドロード後に莢口を下に向けて携帯する事は避ける。

脚注[編集]

  1. ^ 世界選手権のピストル種目で優勝した松田知幸によれば、フィンランド製よりイギリス製の方が精度が高いという。松田、報道陣多さにびっくり!ロンドンでも金狙う!…射撃
  2. ^ なお紙薬莢の場合はロールクリンプしか作成できない。プラスチックケースでも、莢口が傷んで切り詰めを行った場合にはスタークリンプが作成できなくなるため、この場合はロールクリンプを選択する必要がある。

外部リンク[編集]