ハナオコゼ

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ハナオコゼ
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 条鰭綱 Actinopterygii
: アンコウ目 Lophiiformes
: カエルアンコウ科 Antennariidae
: ハナオコゼ属 Histrio
Fischer, 1813
: ハナオコゼ H. histrio
学名
Histrio histrio
(Linnaeus, 1758) [1]
英名
Sargassum fish

ハナオコゼ(花虎魚、Histrio histrio)は、カエルアンコウ科ハナオコゼ属に属する魚類。ハナオコゼ属は単型亜熱帯熱帯海域の流れ藻(主にホンダワラ属)の間で生活する[2]。学名はラテン語histrio(俳優)に由来し、獲物を追跡する際の行動を表している[3]

概要[編集]

ハナオコゼのイラスト

姿は他のカエルアンコウ類に似るが、より流れ藻での生活に適応している。

体は側扁し、20cm程度まで成長する。体色は変化に富むが、通常は明色の皮膚に黄・緑・茶の斑紋が入る。鰭には暗色の縞が入る。体色は、背景に応じて明色から暗色まで急速に変えることができる[4]。皮膚は滑らかだが、全身を海藻に似た突起が覆っている。背鰭は3棘条、11-13軟条。第1棘条は誘引突起(イリシウム)に変化している。鰓裂を持たないため、頭部と胴部の区別は曖昧である。胸鰭後方に鰓孔がある[5]。尻鰭に棘条はなく、7-13軟条。腹鰭は大きい。胸鰭は9-11軟条で柄があり、物をつかむことができる。尾鰭の外側の鰭条は分岐しないが、内側は分岐する[4][6][7]

和名に「オコゼ」を含むが、ハオコゼオニオコゼオニダルマオコゼなどとは異なり、棘条に毒はない。

分布[編集]

汎存種であり、熱帯、亜熱帯海域の深度10m以浅に生息する。西部大西洋ではメイン湾からウルグアイにおよぶ。ノルウェー北部でも報告されているが、北大西洋海流に流されてきたものと考えられる[1][4]

生態[編集]

待ち伏せ型の捕食者であり、肉食性である[4]。共食いをすることもあり、16匹もの同種小型魚を捕食していた例がある[7]。獲物を追う際には、体色が保護色となる。腕状の胸鰭を持ち、海藻の茎にしがみ付いたりよじ登ったりすることができる。疑似餌を用いて小魚やエビをおびき寄せ、鰓孔から水を噴射して襲いかかる。口を瞬間的に大きく広げることができるので、自身と同じくらいの獲物も吸い込むことができる[7]

雌雄異体であり、繁殖時にオスはメスの周囲を泳ぎ回る。産卵の準備ができるとメスは急いで海面に上がり、ゲル状の粘液に包まれた卵塊を産み落とす。卵塊は流れ藻に接着され、オスによって受精が行われる。孵化した幼生は球形の外皮に包まれ、大きな頭部を持つ。鰭は完全に形成されている。成長すると、外皮は皮膚と融合する[5]

天敵は大型魚や海鳥である。水中の捕食者を避けるため、流れ藻の上に跳び上がることもあり、水上でもある程度の間は生存できる[5]

出典[編集]

  1. ^ a b Bailly, Nicolas (2010年). “Histrio histrio (Linnaeus, 1758)”. 2012年1月4日閲覧。
  2. ^ Ayling, Tony; Geoffrey Cox (1982). Collins Guide to the Sea Fishes of New Zealand. Auckland, New Zealand: William Collins Publishers. ISBN 0-00-216987-8 
  3. ^ Histrio Charlton T. Lewis, Charles Short, A Latin Dictionary. Retrieved 2012-01-04.
  4. ^ a b c d Frogfish (Histrio histrio) Marine Species Identification Portal. Retrieved 2012-01-04.
  5. ^ a b c Biological profiles: Sargassumfish Florida Museum of Natural History. Retrieved 2012-01-04.
  6. ^ Histrio histrio - (Linnaeus, 1758) FishBase. Retrieved 2012-01-04.
  7. ^ a b c Nature's Fast Feeder: The Frogfish Bahamas Wildlife. Retrieved 2012-01-04.