ノーウッドの建築業者

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ノーウッドの建築業者
著者 コナン・ドイル
発表年 1903年
出典 シャーロック・ホームズの帰還
依頼者 ジョン・ヘクター・マクファーレン
発生年 1894年?
事件 ジョナス・オールデイカー氏殺害(冤罪
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ノーウッドの建築業者」(ノーウッドのけんちくぎょうしゃ、"The Adventure of the Norwood Builder")は、イギリスの小説家、アーサー・コナン・ドイルによる短編小説。シャーロック・ホームズシリーズの一つで、56ある短編小説のうち26番目に発表された作品である。イギリスの『ストランド・マガジン』1903年11月号、アメリカの『コリアーズ・ウィークリー』1903年10月31日号に発表。1905年発行の第3短編集『シャーロック・ホームズの帰還』(The Return of Sherlock Holmes)に収録された[1]

岩崎書店版(亀山龍樹訳)、青空文庫版(枯葉訳)では「ノーウッドの建築家」となっている。


あらすじ[編集]

死亡したと思われたホームズロンドンへ戻ってきた、「空き家の冒険」事件から数ヵ月後のある日の朝。「モリアーティを倒して以後、入って来る依頼がどれもこれもつまらなくなった」とこぼし、ワトスンに「だがその平和は君によってもたらされた」と宥められているその真っ最中、ブラックヒースに住む弁護士の青年ジョン・ヘクター・マクファーレンが息を切らして飛び込んでくる。身に覚えのない殺人の嫌疑をかけられ、ホームズに助けを求めに来たという。

彼を逮捕しに追って来たレストレード警部を「事情を聞く位の時間はくれたってよかろう」と押し留め、ホームズは事件のあらましをマクファーレンから聞き出した。彼の話によると、見ず知らずの人物であるジョナス・オールデイカーが彼の事務所に現れて、簡単な書類を正式に遺言書として写してほしいと依頼してきた。だがその遺言書の内容は、自身が没した場合、全遺産をマクファーレンに譲るというものだった。オールデイカーは若い頃マクファーレンの両親と知り合いで、今は身寄りもないので遺産をマクファーレンに譲りたいのだという。

その後、オールデイカーの住むノーウッドに呼ばれて手続きを済ませたマクファーレンだが、翌朝新聞を広げてみると、オールデイカーがまさに自分と会っていた深夜に殺害された上に放火され、焼死体が発見されたという記事が載っていた。驚いたマクファーレンはホームズに救いを求め、事務所に駆け込んできたのだった。

マクファーレンはレストレード警部に連行されてしまうが、ホームズは彼の依頼を引き受けることにする。しかし状況証拠はマクファーレンに不利なものばかりで、ホームズの焦燥の色は濃くなってゆく。そこへレストレード警部から「決定的な証拠を見つけた」との電報が入った。現場からマクファーレンの血のついた指紋が発見されたというのだ。だが勝ち誇るレストレード警部を他所に、その指紋を見たホームズの目は逆に爛々と輝き出した。

実は、ホームズはレストレードが行く前日に、オールデイカーの屋敷を調べ、その指紋は存在しなかったことを確かめていたのだ。つまりオールデイカーは生きていて、屋敷の中に潜んでいることになる。茶目っ気を起こしたホームズは、自分を凹ませたつもりのレストレードの天狗鼻をへし折るために、理由は一切明かさず、レストレードに制服警官2人を呼びにやらせ、屋敷の中で焚火をさせ「火事だ!」と3度一斉に叫ばせる。立ち込める煙。3回目を叫び終わったその瞬間、隠し部屋から大慌てで飛び出して来た、死んだはずのオールデイカーにレストレードは目を白黒。

オールデイカーは知人達から出資金を集めてヤミの投資信託をしていたが運用に失敗。出資者達から資金の償還を繰り返し求められていたため、死んだことにして人生をやり直そうと企んでいたのだった。隠し部屋の設置も、建築家だったからこそ可能だった。

TV版の設定[編集]

焼死体に関しての種明かしが、原作では若干無理のあるものとなっているが、英国グラナダTV製作版の「シャーロック・ホームズの冒険」ではその部分の設定を変更し、蛇足ではあるが、真犯人の狡猾さと残忍さを描くポイントとしてストーリーが加筆されている。

備考[編集]

この事件は、科学捜査が未発達な19世紀だったからこそ可能なトリックである。現代ならば、法医学検視鑑定によって焼死体が人間か動物かはすぐに判断出来る。

脚注[編集]

  1. ^ ジャック・トレイシー『シャーロック・ホームズ大百科事典』日暮雅通訳、河出書房新社、2002年、249頁

外部リンク[編集]