ネヴァンリンナ賞

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Médaille_Nevanlinna
ロルフ・ネヴァンリンナ賞のメダル

ロルフ・ネヴァンリンナ賞(ロルフ・ネヴァンリンナしょう、Rolf Nevanlinna Prize)は、以下のような情報科学数学的側面における優れた貢献に対して、4年に一度の国際数学者会議において授与される賞である。2022年より、IMUアバカス・メダル(IMU Abacus Medal)に改称された[1]

  1. 計算複雑性理論プログラミング言語の論理、アルゴリズム解析暗号理論コンピュータビジョンパターン認識情報処理、知能のモデル化など、計算機科学の全ての数学的側面。
  2. 計算科学数値解析数理最適化制御理論の計算的側面。計算機代数英語版

国際数学連合の実行委員会によって1981年に創設された賞で、創設の前年に亡くなったフィンランドの数学者ロルフ・ネヴァンリンナに因んで命名された。受賞者には金メダルと報奨金が授与される。フィールズ賞と同様に若手の数学者を対象としており、受賞年の1月1日時点で40歳未満の数学者のみが対象となっている[2]

メダル[編集]

メダルの表面には、ネヴァンリンナの横顔、"Rolf Nevanlinna Prize"という文字、そして"RH 83"という非常に小さな文字が刻まれている。"RH"はメダルをデザインしたライモ・ヘイノ英語版の名前を、"83"は初鋳造年を表している。裏面には、賞のスポンサーであるヘルシンキ大学に関係する2人の人物が刻印されている。メダルの縁には受賞者の名前が刻まれる[3]

名称の変更[編集]

世界数学競技連盟会長のアレクサンダー・ソイファー英語版は、ネヴァンリンナがヒトラーの支持者であり、第二次世界大戦中に武装親衛隊フィンランド義勇大隊英語版の代表として活動していたことから、ネヴァンリンナに因んだこの賞の名称に苦言を呈していた。ソイファーは2015年の著書の中でネヴァンリンナの戦時中の活動について論じており、個人的にも組織的にも賞の名称変更を求めるべきだとする要望をIMUの実行委員会に送った[4][5]。2018年7月、IMUの第18回総会で、ロルフ・ネヴァンリンナの名前を賞の名称から外すことが決定された[6]。その後、この賞はIMUアバカス・メダルに改称されることが発表された[1]

受賞者[編集]

ネヴァンリンナ賞

受賞者 国籍
1982年 ロバート・タージャン アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
1986年 レスリー・ヴァリアント イギリスの旗 イギリス
1990年 アレクサンドル・ラズボロフ英語版 ロシアの旗 ロシア
1994年 アヴィ・ヴィグダーソン イスラエルの旗 イスラエル
1998年 ピーター・ショア アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
2002年 マデュ・スーダン英語版 インドの旗 インド/アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
2006年 ジョン・クレインバーグ英語版 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
2010年 ダニエル・スピールマン[7] アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
2014年 スバス・コート英語版[8] インドの旗 インド/アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
2018年 コンスタンティノス・ダスカラキス英語版[9] ギリシャの旗 ギリシャ

アバカス・メダル

受賞者 国籍
2022年 マーク・ブレイヴァーマン英語版[10] イスラエルの旗 イスラエル

関連項目[編集]

脚注[編集]

  1. ^ a b Steckles, Katie (May 23, 2019). “IMU Abacus Medal”. Spektrum der Wissenschaft. https://scilogs.spektrum.de/hlf/imu-abacus-medal/. 
  2. ^ Rolf Nevanlinna Prize”. International Mathematical Union (2004年9月7日). 2008年5月13日時点のオリジナルよりアーカイブ。2007年1月30日閲覧。
  3. ^ Lehto, Olli (1998年8月12日). “History of the Rolf Nevanlinna Prize”. International Mathematical Union. 2008年5月13日時点のオリジナルよりアーカイブ。2007年1月30日閲覧。
  4. ^ The Secretive Life of the International Mathematics Union”. Alexander Soifer (2017年7月1日). 2020年4月29日閲覧。
  5. ^ The Scholar and the State: In Search of Van der Waerden, pages 189 and 286-288”. Alexander Soifer. Birkhäuser, Basel; 1st edition (2015年). 2020年4月29日閲覧。
  6. ^ Resolutions of the IMU General Assembly 2018 – Resolution 7”. International Mathematical Union. 2019年3月12日閲覧。
  7. ^ Live video of ICM 2010 Archived 2010-08-18 at the Wayback Machine.
  8. ^ Rolf Nevanlinna Prize 2014”. mathunion.org. 2020年4月29日閲覧。
  9. ^ Rolf Nevanlinna Prize 2018”. mathunion.org. 2020年4月29日閲覧。
  10. ^ Abacus Medal 2022 | International Mathematical Union (IMU)”. mathunion.org. 2022年12月25日閲覧。

外部リンク[編集]