ニホンカワウソ

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ニホンカワウソ
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 哺乳綱 Mammalia
: ネコ目 Carnivora
: イタチ科 Mustelidae
亜科 : カワウソ亜科 Lutrinae
: カワウソ属 Lutra
: ユーラシアカワウソ L. lutra
亜種 : ニホンカワウソ L. l. nippon
(北海道産亜種)L. l. whileleyi
学名
Lutra lutra nippon
Imaizumi et Yoshiyuki, 1989
Lutra lutra whileleyi
(Gray, 1867)
和名
ニホンカワウソ
英名
Japanese River Otter

ニホンカワウソ日本川獺)は、日本に生息していたカワウソの一種である。ユーラシアカワウソの一亜種 Lutra lutra nippon または独立種 Lutra nippon とされる。全国に広く生息していたが、1979年以来目撃例がなく、2012年絶滅種に指定された。愛媛県の県獣でもある。

分布[編集]

かつては礼文島北海道本州四国九州壱岐島対馬まで日本中の陸地から島々に至るまで広く生息していた。

1964年6月27日に、日本国の天然記念物に指定された[1]。最後の捕獲例は1975年4月8日に愛媛県宇和島市九島で保護されたもので、その後は捕獲されていない。1979年6月の最後の目撃例は高知県須崎市の新荘川におけるもので、それ以後生息の確認は得られていない。1993年には同じ新荘川の支流でフンと食べ残しの痕跡の報告例があるが、他の動物によるものである可能性もある。

2012年8月に絶滅種指定をされた後、愛媛県では多数目撃情報が寄せられており、生存の可能性を指摘する専門家もいる[2][3]。平成9年には北海道・天塩郡幌延町の別寒牛川にてカワウソらしき動物が目撃されたとの報告もある。[4]

形態[編集]

体長64.5-82.0cm、尾長35-56cm、体重5-11kg。外部計測値は韓国産のユーラシアカワウソとほぼ同じだが、頭骨形状に特徴があった[5]。眼を水面から出して警戒できるよう、眼と鼻孔が顔の上方にあった。鼻孔は水中で閉じることができた。毛皮は二層からなり、外側に見える部分は粗い差毛、内側は細かい綿毛であった。差毛は水中で水に濡れて綿毛を覆い、綿毛に水が浸入するのを防いだ。このことにより水中での体温消耗を防ぐ効果があった。この良質な毛皮を目的とした乱獲が、絶滅の要因となった。

生態[編集]

ニホンカワウソの骨格標本(国立科学博物館所蔵)

河川の中下流域、砂浜や磯などの沿岸部に単独で生息していた。

主に夜行性で、魚類テナガエビカニカエルなどを食べていた。1頭の行動域は十数kmにもおよび、この中に「泊まり場」と呼ばれる生活の拠点(岸辺近くの大木の根元の穴や岩の割れ目、茂みなど)を3、4か所もっていた。縄張り宣言のために、定期的に岩や草むらの上など目立つ位置に糞をする習性があった。

春から初夏にかけて水中で交尾を行い、61-63日の妊娠期間を経て2-5頭の仔を産んでいたと考えられている。仔は生後56日程で巣から出るようになり、親が来年に新たな繁殖を開始するころに独立していたと推定される。

分類[編集]

ニホンカワウソは、ユーラシアカワウソ Lutra lutra の一亜種として分類されている。日本本土亜種 Lutra lutra nippon と北海道亜種 Lutra lutra whiteleyi に分ける考え方が有力である。環境省レッドリストでは、その分類で記載されている。Lutra nipponという独立したとして取り扱う考えもあるが、生息が確認されていないだけに、分類に関する再評価は進んでいないのが現状である。

鈴木知彦らが行ったシトクロムb遺伝子の塩基配列の比較では、ユーラシアカワウソ3亜種間の差異が4塩基、ホンドイタチチョウセンイタチの差異が6塩基であるのに対して、ユーラシアカワウソ3亜種とニホンカワウソのそれは7-9塩基であった[6]

人間との関わり[編集]

人間にとって身近な存在であり、河童伝説の原型になったと考えられているほか、カワウソそのものも伝承に登場する。また、アイヌ語では「エサマン」と呼ばれ、アイヌの伝承にもしばしば登場している。

江戸時代の料理書『料理物語』には、「獣の部」において「川うそ」の名が記載されており、かつては食用となっていたとみられる。

ニホンカワウソの毛皮は保温力に優れているため、この毛皮を求めて大正から昭和初期にかけて乱獲が進み、生息数が激減した。このため、1928年に捕獲禁止となっている。第二次世界大戦後、香川県から愛媛県にかけての沿岸部、および高知県南西部の沿岸部にわずかに生息域を残すのみとなったが、農薬や排水による水質悪化、高度経済成長期における周辺地域の開発、河川の護岸工事等により、生息数の減少に更なる拍車がかかった。さらに、漁具による溺死や生簀の食害を防ぐための駆除も、大きな打撃となったと見られる(最後の個体群は当初猟師だけが知っていたもので、細々と密猟されていた)。

種の保全状態評価[編集]

昭和まで生息していた哺乳類が「絶滅種」に指定されたのは初めて[7]

脚注[編集]

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  1. ^ 1964年(昭和39年)6月27日文化財保護委員会告示第40号「天然記念物に指定する件」
  2. ^ “ニホンカワウソ:十数件の目撃情報 愛媛県が本格調査”. 毎日新聞. (2013年1月10日). http://mainichi.jp/select/news/20130110k0000e040194000c.html 2013年1月10日閲覧。 
  3. ^ “ニホンカワウソ目撃情報相次ぐ 県内”. 愛媛新聞. (2013年5月30日). http://www.ehime-np.co.jp/news/local/20130530/news20130530396.html 2013年5月30日閲覧。 
  4. ^ 北海道ニホンカワウソを探す会
  5. ^ 『ニホンカワウソ 絶滅に学ぶ保全生物学』、50頁。
  6. ^ 『ニホンカワウソ 絶滅に学ぶ保全生物学』、51頁。
  7. ^ ニホンカワウソ「絶滅種」に 30年以上行方知れず 環境省 産経新聞 2012年8月28日閲覧
  8. ^ 1965年(昭和40年)6月24日文化財保護委員会告示第23号「天然記念物カワウソを特別天然記念物に指定する件」

参考文献[編集]

  • 今泉忠明『野生動物観察事典』、東京堂出版、2004年、216-221頁。
  • 安藤元一『ニホンカワウソ 絶滅に学ぶ保全生物学』、東京大学出版会、2008年

関連項目[編集]

外部リンク[編集]