ドラグノフ狙撃銃

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ドラグノフ狙撃銃
SVD Dragunov.jpg
ドラグノフ狙撃銃
ドラグノフ狙撃銃
種類 狙撃銃
製造国 ソビエト連邦の旗 ソビエト連邦
設計・製造 エフゲニー・F・ドラグノフ
イズマッシュ
年代 1960年代-現代
仕様
種別 セミオートマチックライフル
口径 7.62mm
銃身長 620mm
ライフリング 4条右回り
使用弾薬 7.62x54mmR弾
装弾数 10発(箱型弾倉
作動方式 ガス圧利用方式
全長 1,225mm
重量 4,310g
銃口初速 830m/秒
有効射程 600m
歴史
製造期間 1964年-現在
配備期間 1964年-現在
配備先 ソビエト連邦軍
ロシア連邦軍
関連戦争・紛争 ソ連のアフガン侵攻
第一次チェチェン紛争
第二次チェチェン紛争
南オセチア紛争など
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ドラグノフ狙撃銃(ドラグノフそげきじゅう、ロシア語: Снайперская винтовка Драгунова、ラテン文字表記:Snajperskaja Vintovka Dragunova、SVD)は、ソビエト連邦が開発したセミオート狙撃銃である。

開発[編集]

ソビエト連邦では、第二次世界大戦時にモシン・ナガンM1891/30を使用した市街戦における狙撃手の有効性が確認されたため、1950年代ソ連軍指導層は、小隊規模での選抜射手と対応するセミオート狙撃銃が必要であると考え、後継機種を兼ねた選抜射手専用ライフルの採用デザインコンテストが行われた。

セルゲイ・シモノフ、アレキサンダー・コンスタンチーノフ、エフゲニー・F・ドラグノフの三人の銃設計者がそれぞれ試作品を提出し最終的にドラグノフ設計の試作品であるSSV-58が選ばれ、1963年に制式採用された。

設計[編集]

西側のセミオート狙撃銃と比較して細身で、軽量化や運搬性向上のため銃床は中央部に大きな穴を空けたスケルトンストック型の直銃床である。銃床上部にはスコープを使用した際の照準を容易にするため、着脱式のチークピース(頬あて)を装着できる。作動方式はガス圧利用方式で、銃身上方に平行にして取り付けられているガス・シリンダーへ銃身中央部に位置する小さい穴から発射ガスの一部を誘導、ガス・ピストンを起動させる。ピストンの動きをオペレーティング・ロッドを通じてボルト・キャリアーに伝え、ボルトを作動させる。

長期的な酷使を前提としてAK-47を参考に作られたため、部品数は少なく、頑丈で信頼性が高い。しかし、AK-47とはガスチューブの形状などが異なり、部品に互換性はない。AK系突撃銃とは異なり、オペレーティング・ロッドとボルト・キャリアーを別部品とするショートストローク方式を採用しているが、ロッキング方式はAKと同様にボルト・キャリアーの前後動作に従って回転するロータリー・ボルト方式である。

弾丸は、モシン・ナガンM1891/30カラシニコフ汎用機関銃と共通の7.62x54mmR弾(Rは「Rimmed(リムド)」もしくは「Russian(ロシアン/ラシアン)」の略)を使用するほか、精密射撃には狙撃用の7N1[1]や後継の7N14も使用できる。ガスシステムは腐食を防ぐためにクロムメッキ処理されている。

公称上の最大有効射程は800m程度とされるが、遠距離の精密狙撃能力よりも、市街地(100-400m)での速射性を優先した造りとなっている。アメリカ陸軍が使用しているM24 SWSレミントンM700の軍用版)などの狙撃銃は、光学照準器の使用が前提で金属製照準器が省略されている(アイアンサイト取り付けのベースが有るため装着は可能)が、ドラグノフには1,200m程度まで対応可能な照準器が備えられており、近距離での照準や光学照準器が破損した場合に使用される。こうした特徴から、ドラグノフは選抜射手が用いるマークスマン・ライフルに近い性質も持つ。光学照準器(PSO-1)も付属し、サイドレール・ブラケットへ容易に取り外しできる。ロシア軍では、AK系の有効射程の短さと、連射時の命中精度の低さを補う目的で分隊ごとに1丁のドラグノフが配備され、それぞれの有効戦闘距離を、AK系は300m、SVDは600mと想定している。

備品[編集]

PSO-1 スコープ
PSO-1
4x24倍率の標準的なスコープ。サンシェードを含む全長は375mm。夜間には照準線をバッテリーで点灯させることができる。初期のモデルは赤外線検知フィルターを内蔵し、敵の赤外線照射装置を発見できたが、大掛かりな赤外線照射装置を必要とする暗視装置が廃れたため、現在のモデルでは省略されている。
POSP
8x42倍率で、より高倍率のスコープ。
NSP-2
初期の暗視装置で、大掛かりな赤外線照射装置を使用した。
1PN-58(NSPUM-2)
第一世代の暗視スコープ。
1PN-51(NSPU-3)
第二世代パッシブ方式の暗視スコープ。
銃剣
一部のモデルには着剣装置が付属しており、AK用の銃剣を装着できる。

運用[編集]

初期生産である200丁を除き、1964年からイズマッシュ社によってライン生産される。ワルシャワ条約の関係上、東側国家を中心に多くの国で採用され、また、親ソ連の第三世界諸国にも多数供与された(詳細は運用国の項を参照)。

後に製部分を塗りのポリマー素材としたものが標準仕様となり、特殊部隊用に透明素材を用いたものもある[要出典]。イズマッシュ社からは反動の軽減などを図った近代化モデルが発売され、ロシア軍もこれを採用したが、従来の設計のままでは精度を向上させることが難しいため、1998年よりボルトアクション方式SV-98 狙撃銃が製造されている。

派生モデル[編集]

ここで紹介するのはドラグノフ狙撃銃の発展型であり、AKをベースにしたマークスマン・ライフル狙撃銃の類は紹介しない。

ロシア製[編集]

SVDS
SVDS
折りたたみ可能な銃床に変更したモデル。イズマッシュ造兵廠で生産された。全長1,135/875mm、重量4.68Kg。
SVU
SVU(OTs-03), SVU-A(OTs-03A), SVU-AS(OTs-03AS)(Snajperskaja Vintovka Ukorochennaja - Avtomat)
KBP社がSVDをブルパップ化し、全長を短縮したモデル。サプレッサーも装着できる。SVU-Aはフルオート機能を持つ。
SVDM
イズマッシュによる近代化モデル。7.62x51mm NATO弾(.308ウィンチェスター)に対応した輸出モデルも生産されている。
SVDK(7.62mmモデルと弾庫の形が大きく違う)
SVDK
イズマッシュによる近代化モデル。9.3x64mm弾に対応。
タイガー(Тигр, Tigr, Tiger)
ロシアの民間モデル。主に猟銃として用いられる。西欧を含む海外への輸出も視野に入れて.308ウィンチェスター弾を使用するモデルもラインナップされる。
VS-121
イズマッシュがSVDをベースに開発したブルパップ狙撃銃。レシーバーはSVDのものを流用したタイプである。ハンドガードは4面ピカティニー・レールが搭載されており、今まで光学機器が限られていたSVD系統にとっては良い改良点である。



外国製[編集]

79式狙撃歩槍
中国ノリンコ(中国北方工業公司)社がライセンス生産したもの。
85式狙撃歩槍
79式狙撃歩槍の発展モデル。
NDM-86
ノリンコ社の輸出モデル。EM3517.62x54mmR弾仕様、EM3527.62x51mm NATO弾仕様である。
FPK(PSL)を構えるエチオピア軍兵士と、観測手を務めるアメリカ陸軍兵士
FPK(PSL)
ルーマニアで開発された狙撃銃。作動方式はガス圧作動式で、ボルトを回転させ銃身を閉鎖するロータリー・ボルト・ロッキングが組み込まれているなど基本的な構造はSVDに近く、中央部をくり抜いたスケルトンストックと細身の銃身はSVDを思わせる。しかし、ハンドガードが上下に分離でき、マガジンもトリガーガードの隣にあるなど外見的にAKと共通する部分があり、ボルトキャリアー、オペレーティングロッド、ガス・ピストンが一体化しているなどの内部構造もAKとの同様の設計が見られる。SVDは必要に応じて着脱可能なチークピースを装備していたが、FPKの銃床はチークピースと一体となっている。そのため、FPKはAK-47を大型化した狙撃銃といえる[2]
ツァスタバ M91
ツァスタバ M91
ユーゴスラビアツァスタバ(Zastava)社製発展型。レシーバーの構造からAKから発展したものともとらえられる。



日本での所有[編集]

軍用モデル(写真上)と狩猟用モデルのタイガー(写真下)

日本では民生向けモデルが猟銃ライフル銃)としての取得が可能であり、イズマッシュのタイガーは所持許可の実績もある。用途は狩猟目的に限定され、弾倉の装填数を5発以内にする改造、ライフル銃取得に必要な資格(狩猟免許など)および適当な経歴を要する。

なお、ほかの軍用狙撃銃をベースにした民間向きライフルも、日本では上記の条件が通れば所持は可能ではあるが、ほとんどが弾庫の脱着機能を備えたものであり、審査が通らず、所持できないケースがほとんどである。


画像[編集]

運用国[編集]

登場作品[編集]

脚注[編集]

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  1. ^ 弾頭の名称である。[1]
  2. ^ 床井雅美『軍用銃事典 改訂版』並木書房 ISBN 9784890632138
  3. ^ つくば戦略研究所・編集、監修『世界のカリスマGUNバイブル』 笠倉出版社 2009年 ISBN 978-4-7730-9961-4

関連項目[編集]

外部リンク[編集]