ドラァグクイーン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索
異性装 > ドラァグクイーン
舞台や映画でも活躍するニューヨークベースのドラァグクイーン、リプシンカ

ドラァグクイーン: drag queen)は、男性が女性の姿で行うパフォーマンスの一種。

概要[編集]

ドラァグクイーンの起源は、男性の同性愛者が性的指向の違いを超えるための手段として、ドレスやハイヒールなどの派手な衣裳を身にまとい、厚化粧に大仰な態度をすることで、男性が理想像として求める「女性の性」を過剰に演出したことにあるといわれる。

本来はサブカルチャーとしてのゲイ文化の一環として生まれた異性装の一つであるため、ドラァグクイーンには男性の同性愛者両性愛者が圧倒的に多い。しかし近年では男性の異性愛者や女性がこれを行うこともある。また趣味としてこれを行う者からプロのパフォーマーとして活躍する者まで、ドラァグクイーンの層も厚くなっている。

MtF のトランスジェンダー(肉体は男だが心は女である人)が女物の服を着るのは「女性になる」または「女性として見られる」ことが目的であるのに対し、ドラァグクイーンのそれは「女性のパロディ」あるいは「女性の性を遊ぶ」ことを目的としている点が大きく異なる。

語源[編集]

英語の drag が「女装した男性」を意味するようになったのには三つの説がある。

  1. 演劇界の隠語だとするもの。1870年に初出の記録がある。当時舞台上で女性の役を演じる女優が不足した時は、子役や背の低い若作りの俳優が女装してこれを務めたが、無骨な脚が観客に見えないようにロングスカートを履いた。ところがスカートの履き方に慣れていなかった彼らは裾を床に引きずっても平気な顔をしていた。それが滑稽だったのでこの名がついたというもの。英語の名詞 drag の本来の意味はこの「引きずる」である。これが最も一般に普及している説。
  2. ドイツ語で「着る」を意味する tragen が、イディッシュ語の trogn となり、これが英語化して drag となったとする説。現代口語英語にはイディッシュ語を経由したドイツ語を源とすることばが多いことを背景とした説だが、変化した際の子音交換が必ずしも音声学の法則に沿っていないところもあり、こじつけだとする見方が一般的。
  3. 英語の句「dressed as a girl」(女性のように装う)の略語だとする説。英語圏以外で巷間に流布している説だが、これはいわゆる俗説である(正しい英語では「dressed like a girl」という)。

なお drag queen という成語の初出は1941年である。

表記[編集]

英語の「drag」を片仮名表記するとき、標準的な転記法に則って「ドラッグ」とする場合もあるが、LGBTのメディアでは通常「ドラァグ」という表記をすることが多い。これは dragdrug(ドラッグ、違法薬物)に関係あるかのように誤解されないよう、あえて差別化しているのがその理由である。

日本で最初にこの「drag」を「ドラァグ」と表記することを提唱したのは、元『Badi』編集長の「マーガレット」こと小倉東であると言われている。またこれ以前から独自のドラァグ文化が存在した主に関西方面では、今日でも「ドラッグ」と表記することが多い。

以下本記事では便宜上、関東関西を問わず「ドラァグ」を使う。

日本におけるドラァグクイーン[編集]

歴史[編集]

背景[編集]

歌舞伎女形の伝統がある日本では古くから男性が女装して人前で芸を披露する伝統があった。また畿内では女舞が主体である上方舞の伝統が根ざしており、そうした中からは人間国宝吉村雄輝のような舞手も出ている。この吉村の一人息子が1969年『薔薇の葬列』で衝撃的なデビューをしたピーター(池畑慎之介)である。ピーターはデビュー後しばらくは女装でさまざまな芸能活動を行ったが、一歩カメラの前を離れると通常は男装または中性装(ただし派手なものだったが)で、しかも自らのセクシュアリティを一切芸の中には持ち込まなかった。この点で途中から常時女装になり同性愛者を公言していた美輪明宏などとは一線を画していた。

このような背景を下地に、既成の「芸能人ドラァグ」には飽き足らなくなった一般の人々が、この新しい分野の芸を自ら体現してみせるようになり始めたのは、時代が下って1980年代の終わり頃、いわゆるバブル全盛の時代のことだった。

黎明期[編集]

日本におけるドラァグクイーン第一号は、ミス・グロリアスだと言われている[要出典]。ミス・グロリアスは90年代初頭から京都を拠点にしてドラァグを広めていく[要出典]。同じ頃、東京ではマーガレットこと小倉東がアメリカのゲイ文化としてのドラァグを紹介していた。そして関西では「Diamonds Are Forever」というクラブイベント[要出典]、関東では「Gold」という伝説的クラブでドラァグを行う者が多く現れ始めた。その中にはJINCOママやKEIKOママがいてマドンナやユーミンを熱唱した[1]。因みに「Badi」(1998年5月号)「同じゲイなら踊らにゃソンソン」には、「ドラァグ・ショウの誕生はゴールドから」「日本のクラブでのドラァグクイーン文化はミス・ユニバースコンテストから」とあり、ゴールドのフライヤーやミス・ユニバースコンテストの写真が掲載されている。

この頃のドラァグには、関西と関東でその毛色に違いがあった。関西では主にレヴュースタイルやアート的な要素が強く[要出典]、一方の関東ではクラブの盛り上げとしてパーティ的、あるいはミスコン的なお祭り騒ぎであるものが主流であった。

折しも映画『プリシラ』のヒットなどと共に1990年代のゲイブームが到来、ドラァグはゲイカルチャーになくてはならない存在となった。1990年代半ば以降はスーパーモデルばりにキレイなドラァグクィーンが主流になっていった。「歌モノハウス」が隆盛を極め、そのためクラブイベントでのドラァグは、洋楽女性DIVAリップシンクや、お立ち台へのお供えが中心となっていった。

その一方で、UC(アッパーキャンプ)と呼ばれる従来のドラァッグとは一線を画すドラァグが東京に現れ始める。UCの出現によりドラァグは、日本の女優をオマージュしたセクシャルなショーに変化。流行アイドルのリップシンクや、テレビドラマのパクリなど、ネタ色が強く、しかも誰もが知っているようなネタにより、これがファン層を広げることにもなった。

2000年代以降[編集]

2000年代後半に入り、マツコ・デラックスやミッツ・マングローブが容姿のインパクトに加え、鋭い切れ味を持つご意見番的なオネェ系という存在で娯楽メディアでも大きな立場を担い始めた。

2010年代に入り、マツコ・デラックスやミッツ・マングローブの人気や、かねてからのオネェ系のブームにより、様々なドラァグが主にバラエティ番組を通してメディアへ露出するようになった。その結果、オネェ系のひとつの形としてドラァグの存在が社会的に認知され始めた。

著名なドラァグクイーン[編集]

日本[編集]

  • ミス・グロリアス(日本のドラァグクイーン第一号といわれる)
  • シモーヌ深雪(シャンソン歌手、存命する日本では最古参)
  • オナン・スペルマーメイド(関東でアート要素を取り入れ演劇的手法を用いたドラァグクイーン)
  • マダム・ボンジュール・ジャンジ(日本初、女性のドラァグクイーン)
  • クリスティーヌ・ダイコ(元祖・オオバコの女王)
  • ホッシー(MISIA のコンサートツアーに参加)
  • マーガレット(元『Badi』編集長・小倉東、MISIA のコンサートツアーに参加)→ 画像
  • ヴィヴィアン佐藤(文化、アート系ドラァグクゥイーン)
  • ルチアーノ(アメリカから北海道に帰りドラァグを広めた札幌ドラァグ第一号)→ 画像 (左)
  • オナペッツ(1990年代にテレビを中心に活動)
  • チッコーネ
  • メデューサ
  • ブルボンヌ(UPPER CAMP / Campy!)→ 画像
  • 剥栗サセコ
  • エスムラルダ(ホラー系ドラァグクイーン・ライター、東京都公認大道芸人)
  • 肉乃小路ニクヨ
  • マツコ・デラックス(コメンテーター・コラムニスト、140-140-140)
  • バブリーナ(元祖コギャル女装)
  • 梅垣義明(俳優。パフォーマンス時のキャラクターとして)
  • アンジェリカ(名古屋系女装の第一人者)
  • リリー・チャン(ハイレグと下着の女王・只今は福岡で活動中)
  • 肉襦袢ゲブ美(松坂慶子や Dream で有名)→ 画像
  • エンジェル・ジャスコ(昭和系歌謡曲ショーが定番)→ 画像
  • メイリー・ムー(生歌からお笑いまでソツなくこなす)→ 画像
  • ミッツ・マングローブ(中森明菜や工藤静香のリップシンクが得意)→ 画像
  • ダイアナ・エクストラバガンザ
  • バビ江ノビッチ
  • ギャランティーク和恵(歌謡歌手)→ 画像
  • 楓(ヒールと鬘で身長2メートル、現在ファッションショーなどでも活躍)→ 画像
  • 紫泉サブカルチャーファッションサイバーファッション」の第一人者。「DJ SiSeN」としてゴシックイベントを中心にクラブDJ・ファッションモデルとして活動している。)
  • ナジャ・グランディーバ(2011年より関西テレビ「ハピくるっ!」コメンテーター)
  • キムコ・ヒルトン (UC)
  • 博多あやや(生歌アイドル女装、現在休業中)
  • 山田髭美(主にアマチュアによる動画での出演が多かった。2007年に引退)

オーストラリア[編集]

  • デイム・エドナ・エバレッジ(1955年デビュー、70歳を越えた現在でもテレビ・映画・舞台などで現役活動中。本国はもとより、イギリス、カナダ、アメリカなどで絶大な人気を誇るメガスター。)

アメリカ[編集]

イギリス[編集]

スウェーデン[編集]

ドラァグクイーンが登場する作品[編集]

映画[編集]

洋画[編集]

邦画[編集]

テレビドラマ[編集]

楽曲[編集]

脚注[編集]

  1. ^ Badi1998年5月号P52「同じゲイなら踊らにゃソンソン」。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]