トーテム

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バトルベイの朽ち果てたトーテムポール(カナダ・ブリティッシュコロンビア
パドン族の村の入り口を守る木製の人形

トーテム(英語:totem)とは、特定の集団や人物、「部族」や「血縁血統)」に宗教的に結び付けられた野生の動物や植物などの象徴のこと。

概要[編集]

日本の神道を含めた自然崇拝の信仰形態において、部族や血縁に対し、生きる縁を与えるものとしてLife・Index あるいはLife・Tokenと呼ばれる、「自分と似たようなもの」が祝福あるいは生命力を与えると考えられた。[1]彼らは、部族ごとに石、光線、動物、植物とさまざまな形で表され、異なる世界から来るマナを、共有していると考えられた。また、説明体系として「われわれは○○の子孫である」というものがあるため、ハレの日にその動物を食べる、逆に食べない、といったタブーが存在する。 南方熊楠によれば、起源は諸説あるものの、

  • a説 - 人が、ある種の動植物に似た特徴を持つためにあだ名のように言われたから。

また

  • b説 - 古代、性行為によって子はできず、聖母マリアが天主ヤハウェによってイエスを生んだように、ある種の介在物が子を作ると考えられ、それが族霊とされた。

という妥当な説の、まずa説のような説明が発生し、後にb説と説明しなおされた、とする[2]

20世紀におけるトーテムの重要な批判者に文化人類学者のレヴィ・ストロースがいる。レヴィ・ストロースは、これまで神秘主義的なまどろみとされていたトーテムを、一定の理論性を持った為政者による部族団結の装置と考えた。精神分析創設者のフロイトにはトーテムとタブーという論文がある。

語源[編集]

「トーテム」という言葉は19世紀人類学者ガラティンの造語であり、オジブワインディアンオジブウェー語(Ojibwe)である、「あれは私の一族のものだ」という意味のototemanに由来する。

トーテミズム(英:Totemism)[編集]

トーテム・ポール

トーテムを信仰の対象、基礎とし、崇拝する信仰形態を指して「トーテミズム(トーテム信仰)」と呼ぶ。また、食のタブーにも結びついている。

ただし、これはある一定の「トーテム信仰である特徴」に該当している宗教形態全てを指すのであって、一つの宗教、または固有の宗派を指して用いられるのではない。

トーテミズムは主に未開社会古代文明に多くみられるが、発展を遂げた社会に身をおきながら、同族間の伝統儀礼として現代でもトーテミズムを継承している地域も存在する。

トーテミズムの具体的なものとしては、カナダ西海岸部からアメリカ北西部のインディアン部族が製作するトーテム・ポールがあげられる。これは崇拝の対象や、父祖の霊を彫り物として表現し、偶像化したものである。

また、アメリカのインディアン部族には、氏族(クラン)を「狼」や「亀」、「ざりがに」といったトーテムで分けたものが多い。またトーテムから姓名を引用するものもあり、こうした習慣は大自然や超常現象から特別な力と加護を授かりたいと願うトーテミズムのひとつだともいえる。

トーテミズムの世界的な例[編集]

日本[編集]

南方熊楠は、トーテムを族霊と訳し、日本にトーテミズムがあるとしたが、発表したものが、「個人の守護霊」であり、部族の守護霊ではないという批判があったため「トーテムと人名」で、改めて論じ直し[3] 大物主は、明らかに蛇トーテムであり、三島の神池での鰻取り、祇園の氏子とキュウリ、富士登山の際のコノシロのタブーをトーテムとした[4]

古代中国[編集]

古代中国王朝は青銅器の生産と加工が盛んであり、遺跡からは動物を模ったものが大量に出土した。これら鋳造の青銅器へ施された動物のモチーフ銅像古代中国において祭政一致の「神権政治」が行われていたことの裏付けだとされ、世界で最も古いトーテミズムのひとつである。

インド[編集]

宝蔵陀羅尼に、兎を族霊とする描写であるらしい記述がある。

アジア[編集]

 諸民族に、比較的トラを族霊とする者が多い。また、医療に携わる特殊な集団が、トラをトーテムとしトラのような格好で近隣住民の治療を行う、という例もある。

オーストラリア[編集]

アボリジニにおいては、「ドリーミング」と呼ばれるトーテムが各部族にあり、「性行為によってではなく、各ドリーミングの介在によって」子を為すという信仰があった。

欧州[編集]

 英国では、ガチョウ、ウサギ、ニワトリが族霊とされた。 また、エンブレムに描かれる犬は、それをトーテムとする 名残であるらしい。

脚注[編集]

  1. ^ 折口信夫 『折口信夫全集』ノート編第5巻57~8頁 中央公論社
  2. ^ 南方熊楠『南方熊楠全集』第3巻 450頁
  3. ^ 南方熊楠全集 第3巻 446頁
  4. ^ 南方熊楠 『南方熊楠全集』第2巻 119頁

関連項目[編集]

外部リンク[編集]