トレイルランニング

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トレイルランニング: Trail running)は、陸上競技の中長距離走の一種で、舗装路以外の山野を走るものをさす。トレラントレイルランと略される。

概要[編集]

不整地を走るランニングスポーツとしては、以前からクロスカントリーがある。欧米では盛んだが日本ではあまり知られていない状態であった。その後マラソンブームや登山ブームの波にのって、両者の要素を併せ持つ「トレイルランニング」が知られるようになっている。

日本においては、様々な経緯からか、本来の英語のTrail runningの意味からずれたものも含めて広くトレイルランニングと表現していることが多くみられるので注意を要する。

さまざまなタイプ[編集]

Trail running米国での呼称)
Fell running英国での呼称)
山岳の登山道でのランニング。Fell Runners Association は、山登り・山下り・傾斜度・距離などでカテゴリを分けている。Fellは北部イングランドの山岳の光景の意味。
Cross country running
草原など舗装していないところを走る長距離陸上競技。日本では単に「クロスカントリー」とも呼ばれている。
スカイランニング
標高2000m以上のトレイルを走ること。
Mountain marathon
さらに本格的な山登りマラソン。二日に渡ることや、食糧やテントを携行するものもある。
Adventure running
超長距離など冒険的な要素が強いもの。
ウルトラトレイル
距離が100km以上のもの。
バーティカル
急勾配の斜面を登るもの。

装備[編集]

マラソンと同様にほとんど装備を持たずに走るクロスカントリーとは異なり、トレイルランニングでは専用の小型リュックサックに必要な装備を入れて走ることが普通である。

黎明期では「ランニング登山」と称して、通常登山靴や、登山用のなどを装備して登るようなを、Tシャツに短パンスパッツ、ランニング・シューズといったランニングのスタイルで入山して走っていた。

しかし近年のトレイルランニングの普及によって専用の装備も開発されるようになり、トレイルランニング製品の市場も拡大しつつある。例えば、シューズでは、登山靴でもランニングシューズでもない、軽く走りやすくグリップの良いトレイルランニング用シューズを使うことが認知されてきた。また、水筒の代わりにチューブを使って給水できるハイドレーションシステム、走りをサポートするストックなども、使われるようになってきている。

下記装備が、ほぼ必須とされる。

  • トレイルランニングシューズ - ロード用よりもグリップ力が強く、横方向のサイドステップにも強い
  • ラン用のウェア
  • ウィンドブレーカー(最低限の防水の物) - 突然の雨天対策。山頂だけ天気が悪いこともあり、降水確率0%でも持って行くべき。
  • グローブ - 岩場などをつかむ
  • バックパック - トレイランニング用の小型の物が発売されている
  • ハイドレーションシステム、もしくは、何らかのボトルを収納する方法 - ハイドレーションシステムでは手を使わずに給水できる。ボトルを手に持って山道を走るのは危険。
  • 行動食 - エナジージェルなど
  • ヘッドライト - たとえ短時間山に入る場合でも万が一の遭難や日没に備え持って行くべきであり、万が一の故障に備え小型の物でも良いので2つ目を持って行くべきだと考える人もおり、UTMFなどの大会では2つ以上持参することが必須。
  • ファーストエイドキット
    • バンドエイドなど
    • テービング用のテープ - 捻挫や骨折用
    • ポイズンリムーバー - 蜂用
    • ティッシュ
  • 遭難対策
    • 携帯電話 - 遭難時に110番通報するのに使用。圏外では電池の消費量が多いため、機内モードもしくは電源を切ると節電になる。
    • 紙の地図 - 専用機器やスマートフォンなどのGPS付の地図は便利であり通常時は問題ないが、故障したり電池切れになるので、紙の地図も必須
    • コンパス
    • ホイッスル - 救助を呼ぶため
    • サバイバルシート - 片面が保温用、裏面が熱中症対策になっており、救助を待つ間に使用する
    • 健康保険証
    • 山岳保険への加入
  • 熊鈴 - 動物対策という面もあるが、加えて、一般のハイキングの人にランナーが近づいていることを知らせるという目的も兼ねる

必須ではないが、下記装備なども持って行く人も多い

  • ランニング用タイツ - 膝などのサポート、木の枝や虫から足を守るため
  • トレイルランニング用ストック
  • トレイルランニング用ソックス - 水の中に入っても大丈夫な物、まめができにくい物などがある
  • キャップやサンバイザー
  • サングラス - 木の枝から目も守ることを兼ねる
  • 行動食以外の食料

50cm程度以下の積雪であれば、より厚着のウェアと軽アイゼン(チェーンアイゼン)などが追加になる。積雪量が多すぎる場合は雪山登山になる。

競技[編集]

トレイルランニングが競技としても実施されている。日本語では、山岳マラソン山岳耐久レースという訳で紹介されることもある。アメリカ合衆国では、草レースはもちろんのこと賞金レースが存在するほか欧州陸上競技協会の公認レースも存在する。

日本の代表的なレース[編集]

ウルトラトレイル・マウントフジウルトラトレイル・ワールドツアーの1つであり、海外のエリートランナーが多数参加している。

ウルトラトレイル(100km以上)
名称 運営 都道府県 距離 制限時間 定員 創設 開催月 備考
上州武尊山スカイビュー・ウルトラトレイル
川場村 山田昇メモリアルカップ(山田昇杯)
みなかみ町スカイビュートレイル60(みなかみハピネスカップ)
片品村スカイビュートレイル30(尾瀬ほたかカップ)
実行委員会 群馬県 120km
66km
30km
34時間
16時間
8時間
500人
500人
500人
2014年
(2011年)
(1990年)
9月 前身は2011年より上州武尊山スカイビュートレイル(50km, 25km, 4km)、さらにその前身は1990年より山田昇記念杯登山競争大会(14.8km, 10km)
ウルトラトレイル・マウントフジ
(Ultra-Trail Mt.Fuji, UTMF)
実行委員会 山梨県 168km
88km
46時間
24時間
1200人
1000人
2012年 4月 富士山の周りの山岳地帯を山梨県富士河口湖町八木崎公園から1周。
OSJおんたけウルトラトレイル100K 実行委員会 長野県 100マイル
100km
24時間
20時間
100人
800人
2008年 7月 長野県王滝村を舞台に午前0時にスタートする。
信越五岳トレイルランニングレース 実行委員会 長野県 110km 22時間 600人 2009年 9月 信越高原新潟県妙高市長野県長野市信濃町飯綱町飯山市)を舞台とする。ペーサーの伴走許可など、他のレースと異なる点がある[1]
トランス・ジャパン・アルプス・レース 実行委員会 富山県 420km 8日 30人 2002年 8月 北・中央・南アルプスを通って、富山湾から駿河湾まで。
SJSスカイランナージャパンシリーズ
名称 運営 都道府県 距離 制限時間 定員 創設 開催月 備考
スリーピークス八ヶ岳トレイル 実行委員会 山梨県 38km
23km
10時間
9時間30分
400人
350人
2013年 6月
富士登山競走 富士吉田市 山梨県 21km
15km
4時間30分
3時間30分
2500人
1776人
1948年 7月 富士吉田市役所〜富士山頂。
OSJおんたけスカイレース 実行委員会 長野県 37km 11時間 800人 2006年 8月
バーティカル(急勾配)
名称 都道府県 標高差 水平距離 最大斜度 制限時間 定員 創設 開催月 備考
鹿沢VERTICAL500 群馬県 500m 2500m 40度 1時間30分 150人+50人 2012年 5月
一般の大規模な大会(100km未満)
名称 運営 都道府県 距離 制限時間 定員 創設 開催月 備考
ハセツネ(長谷川恒男)カップ
日本山岳耐久レース
日本山岳スポーツ協会 東京都 71.5km
32km
24時間
6時間30分
2000人
1500人
1993年 10月
4月
奥多摩の山地。
陣馬山トレイルレース 実行委員会 東京都 23.54km 4時間 1500人 2001年 11月
高尾山天狗トレイル 実行委員会 東京都 16km なし 1000人 2004年 2月
青梅高水山トレイルラン 実行委員会 東京都 30km
15km
4時間50分
なし
1100人
1100人
1999年 2月
みたけ山トレイルラン 実行委員会 東京都 15km 2時間30分 1200人 2000年 12月
大山登山マラソン 実行委員会 神奈川県 9.0km 2時間 2000人 1986年 3月
東丹沢宮ヶ瀬トレイルレース 実行委員会 神奈川県 32.1km 7時間 1000人 2009年 4月
西丹沢アドベンチャーラン42K&21K 実行委員会 神奈川県 42km
21km
8時間30分
5時間
500人+50組
500人+50組
2012年 6月
北丹沢12時間山岳耐久レース 実行委員会 神奈川県 44.37km 12時間 2000人 1998年 7月 神奈川県の丹沢山系北部の1500m級。
房総丘陵トレイルランレース 実行委員会 千葉県 30km
18km
6時間
4時間30分
900人
400人
2009年 3月
鋸山トレイルランレース 実行委員会 千葉県 28km
14km
6時間30分
4時間
700人
300人
2010年 12月
道志村トレイルレース 実行委員会 山梨県 41.3km
20.2km
4時間30分
3時間30分
800人
300人
2009年 5月
伊豆トレイルジャーニー 実行委員会 静岡県 75km 15時間 1500人 2013年 3月
菅平スカイライントレイルランレース 実行委員会 長野県 42km
21km
5km
15kmリレー
10時間
7時間
2時間
5時間
400人
400人
200人
20組
2008年 6月
信州戸隠トレイルランレース 実行委員会 長野県 45km
28km
6km
18kmリレー
10時間
8時間
2時間
5時間
350人
350人
200人
50組
2009年 9月
白馬国際トレイルラン 実行委員会 長野県 50km
30km
20km
7km
10時間
7時間
6時間
4時間30分
700人
500人
300人
200人
2011年 9月
国頭トレイルランニング 実行委員会 沖縄県 19km
12km
6km
6kmウォーク
4時間
3時間
1時間
なし
450人
230人
100人
150人
2014年 2月

その他にも、北アルプス黒部ダム - 立山間、雲取山縦走38km、ニセコアンヌプリ30km、平尾台40km・17kmなど、いろいろな団体主催の競技が行われている[2][3][4]

海外の主なレース[編集]

100km以上のウルトラトレイルにおいては、ウルトラトレイル・ワールドツアー(UTWT)[5]がエリートランナーの主要な大会となっている。その中でも、特にウルトラトレイル・デュ・モンブランが注目される。

ウルトラトレイル・ワールドツアー
名称 距離 累積標高差 創設 開催月
Vibram Hong Kong 100 香港 100km 4500m 2011年 1月
The North Face Transgrancanaria スペイン 125km 8500m 2003年 3月
Vibram Tarawera 100 km Ultramarathon ニュージーランド 100km 2776m 2009年 3月
サハラマラソン モロッコ 240km 1985年 4月
ウルトラトレイル・マウントフジ 日本 161km 9000m 2012年 4月
The North Face 100 Australia オーストラリア 100km 2008年 5月
The North Face Lavaredo Ultra-Trail イタリア 119km 5850m 2007年 6月
ウェスタンステイツ・エンデュランスラン 米国 161km 5486m(登り)
7000m(下り)
1973年 6月
The North Face ウルトラトレイル・デュ・モンブラン フランスイタリアスイス 168km 9600m 2002年 8月
La Diagonale des Fous フランス 164km 9900m 1989年 10月

標高2000m以上のスカイランニングはスカイランニング・ワールドシリーズが組まれている[6]

スカイランニング・ワールドシリーズ
区分 名称 距離 開催月
SKY Maratòn Alpina Zegama-Aizkorri スペイン 42km 5月
Dolomites SkyRace イタリア 22km 7月
Course de Sierre-Zinal スイス 31km 8月
Matterhorn Ultraks スイス 46km 8月
Limone Extreme SkyRace イタリア 23km 10月
ULTRA Transvulcania Ultramarathon スペイン 83km 5月
Ice Trail Tarentaise Mizuno-Val d’Isère - フランス 65km 6月
Hoka One One Speedgoat アメリカ 50km 7月
Kima Trophy イタリア 50km 8月
The Rut 50K アメリカ 50km 9月
VERTICAL Transvulcania Vertical Kilometer スペイン 5月
VK Face de Bellevarde フランス 6月
Dolomites Vertical Kilometer イタリア 7月
Lone Peak Vertical Kilometer アメリカ 9月
Vertical Grèste de la Mughéra イタリア 10月

プロ選手・有力選手[編集]

技術[編集]

トレイルはロードとは異なる技術が必要。

下りに関しては下記の方法などが提案されている。

  • 腕は脱力させ、バランスを取るのに使用する[8]
  • 重心を後傾にしない。重心を後ろにすると転倒しやすくなる[9][10]
  • ストライドを短くして走る方法[9][10]
  • 登山道は真ん中だけでなく、広く、端も使用する[8]
  • 足を進行方向に対して斜めにしたり、サイドステップを使って減速する方法。靴の縦方向に滑ると転倒しやすいが、横方法は転倒しにくく、横方向にエネルギーを逃がす。トレランシューズはサイドステップを取りやすくなっている。登山道を広く使用する方法を併用して、スキーの小回りのパラレルターンと似た原理で減速できる[8][10]
  • ギャロップ走法。減速のためや、足をおける場所が不均等の時などに使用する[10]

下りは木の根っこに足を引っかけると転倒したり、浮き石を強い力で踏むと捻挫したりすることに注意が必要。

安全対策[編集]

過酷なコースで行われるため、最終的な安全の確保は競技者の自己責任に任されることとなる。心臓発作はもちろんのこと登山道から転落して死亡する例もあるため、出場者に対し、万が一の際に他者に責任を求めない旨の承諾書を求める例も存在する。

日本における普及状況と課題[編集]

大会において、一時的にせよ競技者が狭隘な登山道を多人数で占拠することとなるため、登山者やトレッキング愛好者から拒絶反応を受けることも珍しくない。例えば、国内の有力レースに成長すると期待されたOSJハコネ50Kレースは、主催者調べで登山者からのクレームはゼロでコースもほとんど荒れなかったとの見解に対し、環境省箱根自然環境事務所は「箱根の歩道(登山道)利用に関するガイドライン」を元に大会開催の自粛を要請したため、2007年に第1回開催を果たしたのみでその後は開催不可能になった[11]。競技を通じて登山道が損傷したり、周辺の植生に悪影響を及ぼすはずだと考える地元関係者も存在する。競技主催者や愛好者は、こうした懸念を取り除くための努力を続けている。

トレイルランニングの普及に尽力している競技主催者や愛好者がいる一方、毎年11月に開催されている神戸市主催の六甲全山縦走大会[12]において、大会ルールで明確に走ることを禁止しているにも関わらず、一部の心無いトレイルランナーが大会に参加し、ルールを破って走っている為に、トレイルランナー自体の印象を悪くしている。

脚注[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]