トラピストビール

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トラピストビールは、トラピスト会修道院で作られる上面発酵ビールの呼称である。 世界の171あるトラピスト会修道院のうち8箇所のみで生産されている。 これらの醸造所では、トラピスト会修道士の協会によって定められた規則を遵守することで、トラピストビールのロゴが入ったラベルと名称の使用が認められている。

歴史[編集]

ヨーロッパでは飲用に適した水を確保するのが難しかったため、代わりとなる飲料が発達した。修道院でも中世の頃から保存の利く飲み物としてビールワイン等が作られふるまわれてきた。 修道院でのビールの醸造は11世紀頃に現在のシメイ (ベルギー)にあるスクールモン修道院で作られ出したのが始まりといわれている。フランス革命の際には修道院の破壊や修道士の追放もあったが、19世紀頃には製法が確立した。20世紀に入ると第一次世界大戦で醸造用設備の略奪などがあり製造の中断もあったが、積極的な再建が行われ現在にいたる。

概要[編集]

トラピストビールの呼称は1962年ベルギー貿易通商裁判所が承認し法的に保護されたものである。 1997年には名前の乱用を防ぐため国際トラピスト会修道士協会(ITA)を設立し、基準を満たした商品にのみロゴが印刷されたラベルの使用を許可する取り決めをしている。 基準とは下記の通りである。

  • ビールトラピスト会修道院の手により生産するか、直接指導の元に行うものとする。また修道院敷地内の設備によって醸造されなければならない。
  • 醸造所、醸造銘柄の選択や商品展開は修道院内のコミュニティーにより決定されなければならない。
  • ビール製造は収益事業ではなく、利益は修道院の運営や援助に使うものでなくてはならない。

特徴[編集]

トラピストビールは上面発酵のエールで、瓶詰後に発酵熟成が行われる点に特徴がある。 そのため、瓶のサイズや、製造からの日数、年数により同じ銘柄でも味が異なってくる。 各醸造所毎に個性的で多彩なビールを醸造しているが、全体としてはアルコール度数が比較的高い傾向がある。 専用のグラスは概ね聖杯型のデザインである。

醸造所[編集]

現在ではトラピスト会製品のロゴとトラピストビールの名称を使用できるのは8つの修道院(醸造所)のみとなっている。

6箇所はベルギーにあり、ラ・トラッペのコニングスホーヴェンはオランダ、グレゴリウスのシュティフト・ エンゲルスツェルはオーストリアにある。

1996年、ラ・トラッペは高齢化と人手不足もあり民間業者と契約し製造スタッフを外部から迎え入れた。 修道士が製造に携わらなくなったため、同年12月1日から名称とロゴの使用を取り消されている。 しかしコニングスホーヴェン醸造所はロゴの使用を続けたため問題となっていた。 民間業者との話し合いや国際トラピスト会修道士協会の合議の結果、コニングスホーヴェン修道院では修道士が毎日数時間、醸造に携わり指導しコントロールすることで合意し、2005年9月9日から再び正式にトラピストビールを名乗っている。

ウェストフレテレンは一切ラベルの無いデザインになっている。

グレゴリウスは2012年に醸造を開始し(なお、1929年までは醸造を行っていた)、ロゴも同年に取得した。