トミー・ジョン手術

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トミー・ジョン手術: Tommy John Surgery, 側副靱帯再建手術)は靱帯断裂に対する手術術式。損傷した肘の靱帯を切除し、正常な移植する[1]ことにより患部の修復を図る。

1974年フランク・ジョーブによって考案され、初めてこの手術を受けた投手トミー・ジョンにちなんでこう呼ばれている。投球の際にひじの側副靭帯に大きな負担がかかる野球の投手が受けることの多い手術である。

術式と予後[編集]

損傷した靱帯を切除したうえで、患者の反対側の前腕(長掌筋腱など)や下腿などから正常な腱の一部を摘出し、移植する。最初にジョンがこの手術を受けた際は成功率1%未満とされていたが、現在では手術後に完全復活する割合は約90%と言われ[2]、さらには術後に2mphから4mph(約3km/hから6km/h)ほど球速が上がった例も数多い[3][4]。成功率向上と球速増加の要因としては手術そのものの技術的進歩があったからではなく、リハビリテーションの知識と方法の著しい進歩と改善があったからだとされている[5]

移植した腱が靱帯として患部に定着するまでには時間がかかるため、術後には長期に渡るリハビリを行う必要がある。まず、おおよそ2か月をかけてひじの可動域を元に戻していくトレーニングを行い、日常生活において支障なく腕を動かせるようにした後、軽めのウェイト・トレーニングを開始する。徐々にウェイトの量を増やしていくのと並行し、腕全体を強化するための様々なトレーニングを始め、日常生活や通常の運動ができるまでに回復したと判断された時点で投球を再開することになる[3]。通常、ここまでの回復に約7か月を要するため、実戦復帰には12か月から15か月が必要となる(そのため、1シーズンから2シーズンを棒に振ることになる)。実戦復帰後も球団によって厳しく球数を制限されるため、完全復帰は翌シーズン以降になる。ただし、これは患者が投手の場合で、野手の場合はより短い期間で復帰できる場合が多い。

また、日本人選手の術後については、アメリカのスポーツ医学に携わる外科医から「アメリカや中南米の選手とアジアの選手の細胞が組成していくスピードは違うため、日本人選手を12か月から16か月で復帰させたとしても、靭帯の強度や周辺の組織の復元度はアメリカや中南米の選手とは同じにならない。日本人選手には時間的な猶予を多く与えることが必要だ」という意見もある[6]

普及と批判[編集]

2003年のデータによれば直近2年間にメジャーリーグで投げた投手のうちトミー・ジョン手術を受けたのは75人、9人に1人に及ぶ[7]。しかし全体で見れば近年手術を受けている選手の半数を大学生や高校生ら若年者が占めており、これについて批判的な意見も多い[5][8][9]

この手術を経験した主な野球選手[編集]

メジャーリーグ投手[編集]

メジャーリーグ野手[編集]

日本球界[編集]

脚注[編集]

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  1. ^ 「トミー・ジョン手術」はジョーブ考案
  2. ^ 出村義和,成功率90%、進化したトミー・ジョン手術,Number Web,2010/03/20閲覧
  3. ^ a b じん帯断裂のストラスバーグ。「トミー・ジョン手術」は大丈夫か?生島敦、スポーツ・インテリジェンス原論、Number Web、2010年9月6日
  4. ^ 手術、米では少ないマイナス印象日刊スポーツ、2011年6月2日
  5. ^ a b トミー・ジョン手術 大成功の功罪『月刊スラッガー』2010年6月号、日本スポーツ企画出版社、雑誌15509-6、90頁。
  6. ^ 『メジャーリーグで輝く日本人選手』 宝島社、2013年、52頁。ISBN 978-4-8002-1801-8
  7. ^ Tommy John surgery: Pitcher's best friend
  8. ^ TRAININGROOM - Training Room:' Tommy John' surgery”. ESPN.com. 2008年2月28日閲覧。
  9. ^ Tommy John surgery: Pitcher's best friend”. USA TODAY. 2008年2月28日閲覧。