デボン紀

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デボン紀(デボンき、Devonian period)は、地質時代の区分のひとつである。デヴォン紀とも書かれる。古生代の中ごろ、シルル紀の後、石炭紀の前の時代。約4億1600万年前から約3億5920万年前までの時期を指す[1](ただし、始まりと終わりの時期は資料により若干の違いがある)。イギリス南部のデヴォン州に分布するシルル紀の地層と石炭紀の地層にはさまれる地層をもとに設定された地質時代である。デボン紀は、魚類の種類や進化の豊かさ、さらに出現する化石の量の多さから、「魚の時代」とも呼ばれている。

目次

[編集] デボン紀の環境

デボン紀の大陸

約4億2000万年前、複数の陸塊同士が衝突したことにより、巨大な山脈を有した大陸が赤道直下に誕生していた[2]。この山脈が、大気の流れを大きく遮ることにより、恒常的な降雨を周辺地域にもたらし、長大な河川が出現した。この河川に沿って、動植物が大陸内部まで活動範囲を拡げていくことができた。

[編集] 森林の誕生

前代のシルル紀には植物の陸棲化は開始していた。デボン紀にはシダ状の葉を持つ樹木状の植物アーケオプテリス(またはアルカエオプテリス、Archaeopteris)が河川に沿って植生域を拡げ、最古の森林を形成していった。この森林の拡大にしたがい湿地帯も同時に形成されていった。この河川と森林そして湿地帯の存在が、後述する昆虫類硬骨魚類、さらには両生類の進化をうながした。

[編集] 海洋環境

海洋では河川から流れてくる栄養もあり、コケムシサンゴ[3]が大規模なコロニー個体群)を形成していった。このコロニーに、腕足類ウミユリ三葉虫甲殻類、直角殻のオウムガイなどが生息し、豊かな海を形成していた。アンモナイトもこの時代に誕生した。この豊かな海の時代に、板皮類などの古いタイプの魚類が繁栄を極めていた。サメなどの軟骨魚類もこの時代の海に出現した。

[編集] 生物の進化

[編集] 硬骨魚類の進化と両生類の出現

現世の魚類の大部分が属する硬骨魚類も、この時代に出現した。前述の大陸河川域で、棘魚類から分岐、進化したと考えられている。[4]河川があったとはいえ、大陸内部の気候は、現在の熱帯地域と同様に乾季も存在していた[5]。そういった時期には水中の酸素濃度(溶存酸素)の低い環境が続いたため、湿地帯でも生存できるように、ハイギョシーラカンスなどの肺を持った肉鰭類が出現した。さらにデボン紀後期には、ハイギョ類のエウステノプテロン(またはユウステノプテロン)か近傍の種[6]から、アカントステガ(またはアカンソステガ)やイクチオステガといった両生類が出現した[7]

ちなみにアジタイなど現世の大部分の硬骨魚類が属する条鰭類真骨類には肺がない。これは、遊泳力向上のために肺が浮き袋に変化しているからである。デボン紀の硬骨魚類は、条鰭類であっても肺があり、空気呼吸をしていたと思われる。実際、デボン紀に出現し現生する最古の条鰭類ポリプテルス目や、同じく原始的な条鰭類であるガー目アミア目は、空気呼吸ができる。

[編集] 昆虫の出現

前代のシルル紀には、既に多足類ダニムカデなど)が陸上に出現しており、節足動物の陸棲化は脊椎動物よりも進んでいた。さらに約4億年前のデボン紀前期には、昆虫が出現した。

この昆虫を含む六脚類の起源は、先行して上陸していた多足類だと以前は考えられていた。しかし、近年の遺伝子解析から甲殻類カニエビなど)かその近縁の鰓脚類ミジンコフジツボなど)が、六脚類により近いと判明している。この結果から、後期シルル紀の淡水域には、現生の淡水のミジンコと昆虫の共通の祖先がおり、そこから分岐したと考えられる。

その祖先種が、前述の河川と陸上の境界域で進化を重ね、地上に進出したのが昆虫だと考えられる。実際、出現当初の昆虫類の化石は、淡水域と陸上であった場所でしか発見されていない。また、現生の昆虫のほとんどが陸棲である。

デボン紀の昆虫は、現在発見されている化石からはの獲得はみられず、原始的な形態であった。現在の昆虫類は、動物種の大半を占めるほど多種であるが、その多様な進化は石炭紀以降で顕著になったと思われる。

[編集] サメの出現

サメなどの軟骨魚類は、前期デボン紀には存在していた[8] 。ただし、歯の化石[9]などには、それより古いシルル紀末期のものもあるため、厳密に言えば、起源は前代のシルル紀にあると考えられる。

サメの祖先は不詳であるが、板皮類に求める説が強い。例えば2008年には、現生のサメが持つ胎生能力を板皮類も持っていたことが発見され、共通の起源が示唆されている。

中期デボン紀には、クラドセラケ[10]が登場した。捕食生物であり、7対の鰓[11]を有し、硬い歯、背びれ、尾びれの形状と、現生のサメと変わらない形態をしていた。

[編集] 大量絶滅

デボン紀後期から石炭紀初期は、5大大量絶滅の一時期であり、海洋生物種の82%が絶滅した。

その中には、デボン紀に繁栄したダンクルオステウス(またはダンクレオレステス)[12]などの板皮類[13]や、原始的な脊椎動物である無顎類の大部分[14]や、プロエタス目を除いた三葉虫の大部分[15]が含まれる。

炭素、酸素、ストロンチウムなどの同位体測定による古環境解析から、8から10回、気候の寒暖、海水面の後退、乾燥化、低酸素化などの大きな環境変化が発生したことが判明している。しかし、どれが決定的な大量絶滅の要因となったのかは不詳である。

[編集] 脚注

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  1. ^ 地質年代表‐古生代による
  2. ^ 現在の北アメリカ東海岸、グリーンランドスコットランドがその大陸の一部であった。
  3. ^ このときのサンゴは後に起こったペルム紀大絶滅により全て絶滅した。現在のサンゴはこれらとは系統が異なる。
  4. ^ デボン紀における棘魚類の主な活動域が淡水域であり、そのためデボン紀から生息する古代魚淡水魚が多い。
  5. ^ デボン紀には大規模な乾燥期も存在した。
  6. ^ パンデリクティスティクタアリクなどはより四足動物に近いとされる
  7. ^ ただし、デボン紀の両生類は完全水棲の種がほとんどである。
  8. ^ MILLER R. F., TURNER S., CLOUTIER R., "The oldest articulated chondrichthyan from the Early Devonian period", Nature, 2003, 425, 6957, 501-504
  9. ^ サメの軟骨硬骨魚類の骨格に比べて化石として残りにくく、歯だけが化石になることが多い。
  10. ^ クラドセラキー、クラドセラキとも書かれる。クラドセラケが、長らく最古のサメとして扱われてきた。
  11. ^ 現生のサメは5対(ラブカは6対)
  12. ^ ダンクルオレステス(Dunkleolestes)、ディニクティス(Dinichthys)と呼ばれることもある。当時の海では生態系の頂点に立っていた。
  13. ^ これを生き残った一部の種も、石炭紀前期(ミシシッピ紀)に全て絶滅した
  14. ^ 現世では、無顎類としてわずかにヤツメウナギ目とヌタウナギ目が存在するのみ。
  15. ^ プロエタス目も繁栄を取り戻せず、ペルム紀末(古生代末)に絶え、三葉虫は絶滅した。

[編集] 参考文献

[編集] アーケオプテリスに関して

  • MEYER-BERTHAUD B., SCHECKLER S. E., WENDT J., "Archaeopteris is the earliest known modern tree", Nature, 1999, 398, 6729, 700-701

[編集] 魚類の進化に関して

  • 島本 信夫「魚類の進化」『日本海洋生物研究所 年報,2008』([1] PDFファイル)

[編集] 昆虫の起源に関して

  • Henrik Glenner, Philip Francis Thomsen, Martin Bay Hebsgaard, Martin Vinther Sorensen, Eske Willerslev, "The Origin of Insects",Science, 2006, 314, 5807, 1883-1884
  • Michael S. Engel and David A. Grimaldi,"New light shed on the oldest insect",Nature, 2004, 427, 6975, 627-630

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク

  • 仲田崇志 (2009年10月29日). “地質年代表”. きまぐれ生物学. 2011年2月14日閲覧。

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