デュアルシステム

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内, 検索

デュアルシステムとは、ドイツを発祥とする教育職業訓練を同時に進めるシステムである。日本においても導入が始まっており、ここではその取り組みについて解説する。

目次

[編集] 日本版デュアルシステムとは何か

日本版デュアルシステムは、文部科学省モデル事業として、主に専門高校(専門教育を主とする学科などを置く高等学校等。農業高校工業高校等)で行っているものと、厚生労働省独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構を通じて行っているものとがある。後者は、さらに職業能力開発大学校等の専門課程(2年間。有料。2008年度は6校[1])によるもの、職業能力開発促進センター(6ヶ月。無料)によるもの、民間の専修学校等が委託訓練として行うもの(標準4ヶ月。無料)とがある。

文部科学省、厚生労働省ともに、日本版デュアルシステムと称しているが、内容は大きく異なる。まず、文部科学省のモデル事業は、高校生就職率の低下を受け、キャリア教育の必要性が認識されたことから、2004年度に始まったもので、2007年度までに20都道府県、25校で実施されたが、東京都立六郷工科高等学校を除いて、試行の域を出ていない[要出典]。デュアルシステムは企業での長期の実地訓練(On the Job Training,OJT)を行うことが必須であり、実際ドイツでは昼間は企業で訓練生として働き、夜学ぶという体制になっている。だが、モデル事業ではせいぜい年に1週間程度のインターンシップを行う程度にとどまっており、職業能力を養うことは望めない。唯一の例外である六郷工科高等学校は、もともと東京都が独自に先行して始めたという経緯があり、他の高校とは異なり、デュアルシステム科が設けられている。開校した2004年が、文部科学省のモデル事業開始と重なったためにモデル校の指定を受けたにすぎない。

六郷工科高等学校のデュアルシステムは、1年生は3社で各10日間のインターンシップ、2年生は原則として1年生のときに選択した企業の中から1社で2カ月間通してOJTを受ける。3年生次には同様に1社で2カ月間のOJTを2回行う。このインターンシップとOJTによって、24単位を取得できる。なお、現行の法律では企業で長期のOJTを受けることができるのは定時制高校に限られる。六郷工科高等学校は、実際には全日制と同様に昼間の学校であるが、定時制であるために夜学と勘違いされることもある。

一方、厚生労働省の日本版デュアルシステムは、2003年6月に文部科学省, 厚生労働省, 経済産業省, 内閣府によって発表された「若者自立・挑戦プラン」を受けて考案されたもので、いわゆるニートフリーターの就業支援として始められたものである。したがって、職業教育というよりは職業訓練の性格が強い。ただし、実施主体によってその仕組みは異なり、専修学校等に委託して行うものは、平均して3カ月の座学と1カ月のOJTで構成されているのに対し、職業能力開発大学校等で行うものは原則2年間と長期の訓練になっている。

[編集] 日本版デュアルシステムの成果

ドイツのデュアルシステムは、多くの場合、最終的にはマイスターの資格取得を目指すものであるが、日本にはマイスター制度がなく、どの程度OJT先の企業への就職に結びつくかが評価の指標となろう。日本版デュアルシステムがスタートしてから日が浅く、とくに文部科学省の方は依然としてモデル事業にとどまっているので、評価する時期にはない。

唯一、デュアルシステム科を設けている都立六郷工科高校の場合、協力企業に就職したものは2006年度が卒業生16人中8人、2007年度が同20人中12人となっている。デュアルシステムがあったから就職できたのかどうかは定かではないが、企業でのOJTによって「自分に自信がもてるようになった」とする生徒やその保護者も多く、一定の成果があったものと思われる。一方、厚生労働省の方は全国的な集計がなく、はっきりしないが、就職に結びつきやすいという意見が協力企業や専修学校からは聞かれる。もっとも、2004年度以降、新卒者の採用状況は改善しており、デュアルシステムの効果であるかどうかは分からない。

マイナスの評価としては、厚生労働省が当初目論んだようなニート・フリーターの就業支援にはなっていないことが上げられる。その日の生活で手一杯のニートやフリーターにとって、デュアルシステムの訓練生になることは収入の道を絶たれることになるからである。また、周知活動がほとんどされておらず、とりわけニートやフリーターにどうすれば情報を届けられるか、その方法を知らなかったことも一因と言える。結局、職業訓練に新しいコースが一つできただけで終わっているといえよう。

なお、日本版デュアルシステムの本来の目的ではないが、訓練生を受け入れる企業にとっては、有力な採用の手段となっている。とくに採用活動に多くの時間や人材を割けない中小企業にとっては、互いの良さを分かった上で採用に結びつけることができるだけに、定着率も高まると期待されている。

[編集] 日本版デュアルシステムの課題

文部科学省版については、今後どう展開していくのかわからない[要出典]が、六郷工科高等学校が一定の成果を上げていることを考えればモデル事業の段階を脱して、実践に移すべきという声がある[要出典]

その際、問題となるのは協力企業の確保である。デュアルシステムの特徴は、企業で実践的な職業教育を受けることにあるのだから、協力企業の確保は不可欠である。協力企業は地元の中小企業である。大企業は、独力で採用活動を行う力があり、デュアルシステムに参加するメリットがない。中小企業にとっては、採用のツールとなりうるメリットがある。ただ、現在OJTにかかる費用はすべて企業側の負担となっている。また、訓練先の企業に就職する生徒が多いとはいえ、全員が訓練先に就職するわけではない。つまり、現在のデュアルシステムは企業の善意によって支えられているのである。これでは維持できないのではないのかという疑問の声もある[要出典]。訓練生を受け入れる負担が大きいことは、厚生労働省版でも同様である。こちらは、訓練生を受け入れれば1人当たり月24,000円の補助金が支給されるが、一方で訓練生に給与を支給しなければならないこともあり、やはり訓練コストは企業の負担となる。それでも、厚生労働省版のデュアルシステムは、既卒者を対象としているだけに就職につながりやすいのが、企業にとっては救いである。また、厚生労働省版については、本来の目的である無業者の支援にどう結びつけるかが大きな課題である[要出典]

[編集] 脚注

[ヘルプ]

[編集] 外部リンク

個人用ツール
名前空間

変種
操作
案内
ヘルプ
ツールボックス
他の言語