デソモルヒネ

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デソモルヒネ
IUPAC命名法による物質名
4,5-α-epoxy-17-methylmorphinan-3-ol
臨床データ
胎児危険度分類  ?
法的規制 Schedule I (US)
識別
CAS登録番号 427-00-9 ×
ATCコード None
PubChem CID 5362456
ChemSpider 4515044 チェック
UNII 7OP86J5E33 チェック
別名 Desomorphine, Dihydrodesoxymorphine, Permonid
化学的データ
化学式 C17H21NO2 
分子量 271.354 g/mol

デソモルヒネ(Desomorphine, ジヒドロデオキシモルヒネ、Dihydrodesoxymorphine, Permonid)は1932年にモルヒネ誘導体としてアメリカで開発された鎮痛剤の一種。非常に強力な鎮痛作用をもつ薬物であり、それはモルヒネの8倍から10倍とされる[1][2][3][4] 。日本においては「麻薬及び向精神薬取締法」で定められた麻薬として指定されている[5]


また、入手が比較的容易な鎮痛剤であるコデインを材料にした粗悪な合成デソモルヒネ、通称「クロコダイルロシア語: крокодил、クラカジール)」がロシアをはじめとする北中欧の貧困層に出回っており、強力な依存と、極めて凄惨な副作用を伴うにも関わらず、中毒患者が年々増加して深刻な社会問題となっている。


クロコダイル[編集]

デソモルヒネは2010年からロシアで密造による被害が問題になりはじめているが、理由としては処方箋なしで購入できる僅か100ルーブル程度(数百円)のコデインを含む市販のせき止め薬を材料として、素人でも自宅で簡単に合成できる製造方法がインターネット上で広まったことが挙げられている。コデインヨードリン酸塩から密造されることは[6]プソイドエフェドリンからメタンフェタミンを密造する過程に似ているが、デソモルヒネはさらにガソリンを使用するなど劣悪な環境で製造されるため、毒物、腐食性がある不純物を含んでいる。ロシアでは密造されたデソモルヒネは「クロコダイル」と呼ばれているが、これは乱用で皮膚が糜爛して黒や緑に変色し、ワニの皮のような外観を示すことからその名前が付いたとも言う[7]。「クロコダイル」を常習的に使用すると、静脈炎から筋肉・細胞組織の深刻な破壊をもたらす。長期に使用すれば注射していた部位の壊疽を引き起こして骨が露出し、凄惨な症状を示すため「flesh eater drug(生身を喰いつくす薬物)」の異名を持つ。高確率で死亡にいたる致命的な結果を招き、常習者の平均余命は2-3年を下回るといい[8][9][10]、回復しても四肢の切断など、重大な後遺症をもたらす。

密造デソモルヒネの乱用は、2002年にシベリア東部で報告されたが、以来ロシアと旧ソビエト連邦地域で汚染が広がっている。2011年10月には、「クロコダイル」の乱用がドイツにも広がっていることが判明し、いくつかの報道機関によると、すでに多くの死者が出ているとの主張もある。[11]

コデインからのデソモルヒネ合成法


脚注[編集]

  1. ^ Casy, Alan F.; Parfitt, Robert T. (1986). Opioid analgesics: chemistry and receptors. New York: Plenum Press. p. 32. ISBN 978-0-306-42130-3. 
  2. ^ Bognar, R; Makleit, S (1958). “Neue Methode für die Vorbereitung von dihydro-6-desoxymorphine [New method for the preparation of dihydro-6-desoxymorphine]” (German). Arzneimittel-Forschung 8 (6): 323–5. PMID 13546093. 
  3. ^ Janssen, Paul A. J. (1962). “A Review of the Chemical Features Associated with Strong Morphine-Like Activity”. British Journal of Anaesthesia 34 (4): 260–8. doi:10.1093/bja/34.4.260. PMID 14451235. 
  4. ^ Sargent, Lewis J.; May, Everette L. (1970). “Agonists-antagonists derived from desomorphine and metopon”. Journal of Medicinal Chemistry 13 (6): 1061–3. doi:10.1021/jm00300a009. PMID 4098039. 
  5. ^ 日本法医学会 法医中毒学ワーキンググループ 4.規制薬物一覧
  6. ^ Savchuk, S. A.; Barsegyan, S. S.; Barsegyan, I. B.; Kolesov, G. M. (2011). “Chromatographic study of expert and biological samples containing desomorphine”. Journal of Analytical Chemistry 63 (4): 361–70. doi:10.1134/S1061934808040096. 
  7. ^ Priymak, Arthur (2011年6月23日). “Desomorphine, drug for the poor, kills all of its victims”. プラウダ. http://english.pravda.ru/hotspots/crimes/23-06-2011/118296-desomorphine-0/ 
  8. ^ Walker, Shaun (2011年6月22日). “Krokodil: The drug that eats junkies”. The Independent. http://www.independent.co.uk/news/world/europe/krokodil-the-drug-that-eats-junkies-2300787.html 
  9. ^ Shuster, Simon. “The Curse of the Crocodile: Russia's Deadly Designer Drug”. Time. http://www.time.com/time/world/article/0,8599,2078355,00.html 2011年6月20日閲覧。. 
  10. ^ Дезоморфин последствия – фото” (Russian) (2011年2月9日). 2011年11月24日閲覧。
  11. ^ “Deutschland kämpft gegen neue todesdroge [Germany fights new death-drug]” (German). ビルト. (2011年10月14日). http://www.bild.de/news/inland/ueberdosis/deutschland-kaempft-gegen-neue-todesdroge-20456878.bild.html 2011年11月10日閲覧。 

関連項目[編集]

外部リンク[編集]