ディスレクシア

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ディスレクシア(英語:Dyslexia、ディスレキシアとも)とは学習障害の一種である。失読症難読症識字障害読字障害ともいう。1884年ルドルフ・ベルリン(Rudolf Berlin)によって報告され命名された。

目次

[編集] 概要

知的能力及び一般的な学習能力の脳内プロセスに特に異常がないにもかかわらず、書かれた文字を読むことができない、読めてもその意味が分からない(文字と意味両方ともそれぞれ単独には理解できていることに注意)などの症状が現れる。逆に意図した言葉を正確に文字に表すことができなくなる「書字表出障害(ディスグラフィアDysgraphia)」を伴うこともある。また簡単な計算ができない「計算障害」を伴うことも多い。左脳内の文字と意味の相関関係を司る特殊なプロセスに何らかの障害が発生していると考えられているが、はっきりした原因はまだ突き止められていない。なお家族性の発症例も古くから知られており、遺伝マーカーとの関連に関する研究も行われている。

識字プロセスには文字や単語を構成する音に結びつけて分析する「音韻的処理」(ひらがなカタカナアルファベットなど主に表音文字)から、単語、文章そのものからダイレクトに意味を理解する「正字法的処理」(漢字のような表意文字も含む)までいくつかの段階がある。ディスレクシアはそれらいろいろな段階での症例が報告されており、例えば2つの文字の違いが分からない、文字や単語の理解まで非常に時間がかかる、読むことはできるが書くことはできない(これは一般的な言語学習段階上の経験として覚えのある向きもあろう)、文字の並びが歪んで見える、文字自体が二重に見えるなどさまざまである。

現在は特に英語圏で問題とされており、アメリカ合衆国では人口のおよそ1割の人が何らかの程度でディスレクシアを抱えているとも言われる[1]。ディスレクシアは言語によっても現れ方が異なることが示唆されており、イタリア語など(文字がほぼ発音通りに綴られる)では英語やフランス語(綴りと発音の間に複雑な関係がある)より顕在化しにくい可能性が指摘されている。また日本語におけるディスレクシアの多くは、このような音韻に関係したディスレクシアとは異なるタイプとの見方もある。海外留学中の人が初めてディスレクシアと診断されたなどの例[1]もあり、英語教育の普及などによりこれから顕在化してくる可能性もある。今のところ日本では、成人のディスレクシアの判定法は確立されていない。

この障害を持つ人で大学などの通常の高等教育を受けている場合も少なくない。しかしながら現代の高等教育はその殆どが文字媒体により情報を交換する手段に頼っているので、制約が著しいことは否めない。これを補完するためにDAISY等(後述)の補助アプリケーションが開発されているが、これらは主に画一化された教材を用いる初等教育を視野に入れたものであり、現段階では多種多様な書籍を読むことが求められる高等教育の習得をこれらにのみ頼ることは出来ない。他人に顕著ではないこれらの症例であるために、社会的に思わぬ差別や蔑視、阻害を受けることも少なくない。そのため、彼らの権利を擁護する団体が国内、国外問わず活動している。

現在では視覚・聴覚能力の訓練や体性感覚と関連付けた学習、神経生理学的研究によって、障害を克服できた例が増えてきている。映画俳優のトム・クルーズが、ディスレクシアを抱えていたことを告白したこともあった[2]

スウェーデン国王のカール16世グスタフは、自分の名前すら満足に書くことができなかった[要出典]。その子供である長女のヴィクトリア王女や、長男のカール・フィリップ王子も同障害であった[要出典](国王及びその子女がディスレクシアを抱えていることについては、1997年にシルヴィア王妃がテレビ番組のインタビューの中で正式に認めている)。これらの事例から、家系的にそういうものがあるのではという見方もある。

イギリス国王・エリザベス2世の孫であるベアトリス王女も自身がディスレクシアであることを2004年に公表しているが、学業では優秀な成績を残している。

オーランド・ブルームは幼少期にディスレクシアで悩まされたが、聖書の朗読などで、現在では改善されつつある[要出典]。また、キーラ・ナイトレイは、録音読書で学習したり色付き眼鏡をかけて文章の文字が混じって見えないように工夫し読書している[要出典]

古生物学者のジャック・ホーナーも読字障害の一人とされる[1]。恐竜が鳥類に近い生き物であったことを証明し、映画ジュラシックパークの恐竜博士のモデルともなった人物。ジャック・ホーナーの読み書き能力は小学3年生程度で、読字障害への対応として普段は文書を一度コンピューターに打ち込み、読み上げソフトを使用し文書を聞き取るかたちで読んでいる。

一方でディスレクシア障害者は一般人に比べて映像・立体の認識能力に優れていると言われ、工学や芸術の分野で優れた才能を発揮している者も多い。これは左脳の機能障害を補う形で右脳が活性化しているためと考えられており、最近は若年者の治療において障害の克服と共にこうした能力を伸長させる試みも行われている。

その他、ウォルト・ディズニーも読字障害だったといわれている。

[編集] 対策

これらの障害を抱えた人をサポートするために、文字そのものを音声化して理解させる工夫が行われている。例えば、DAISY[3]などのコンピューター上の画面で文字を音声化して読み取るアプリケーションの開発が行われている。ただし特に日本語の場合、同音異義語が多く、欧米系の言語のようにそのままテキスト化された情報をそのまま音声化しただけでは情報を正確に取得することは難しいという側面もある。このほかボランティアによる文字の音読された教科書が作成されており、著作権法の改正によりこれらのメディアの発行は容易になっている。

[編集] ディスレクシアであることを公言している著名人

[編集] 脚注

  1. ^ a b c NHKスペシャル「病の起源 第4集 読字障害~文字が生んだ病~」
  2. ^ [1][リンク切れ]
  3. ^ (財)日本障害者リハビリテーション協会(JSRPD)
  4. ^ "Times of India". Aamir praises Abhishek. December 19 2007 閲覧。
  5. ^ "The Orlando Bloom Files". Learning Disability. July 1 2006 閲覧。
  6. ^ "Detroit Free Press". FAMILY, FORDS AND FASTBALLS: Tigers starter Jeremy Bonderman stays true to small-town, blue-jeans roots. July 1 2006 閲覧。
  7. ^ Branson, Richard (1999). “A family that would have killed for each other. 1950 - 1963”, Losing My Virginity: How I've Survived, Had Fun, and Made a Fortune Doing Business My Way, 1st, Three Rivers Press. ISBN 0-8129-3229-3. 2006-08-30 閲覧。 
  8. ^ Slaughter, Adele (2001-05-22). “Erin Brockovich scripts victory over dyslexia”. USA Today. http://www.usatoday.com/news/health/spotlight/2001-05-22-brockovich-dyslexia.htm 2008-08-25 閲覧。 
  9. ^ "A time to rejoice: Sweden's King Carl XVI Gustaf at 50" by Michael Jagerblom in Scandinavian Review, autumn 1996 [2]
  10. ^ "Cannell Helps "Cobra" Star Find Ways Around Dyslexia". October 9 2006 閲覧。
  11. ^ Cher, The First Time, ISBN 0-684-80900-1
  12. '^ "Books That Made a Difference to Anderson Cooper". 'As a child, I had a problem reading. I had a mild form of dyslexia where I would see some letters backward, and I had to go to a special reading instructor'.. July 2005 閲覧。
  13. ^ "MSN". Cruise credits Scientology for his success. July 2 2006 閲覧。
  14. ^ Samuel R. Delany, The Motion of Light in Water: Sex and Science Fiction Writing in the East Village ISBN 0-8166-4523-X
  15. ^ "Medicine.net". Patrick Dempsey Reveals His Dyslexia. July 2 2006 閲覧。
  16. ^ Joseph Fiennes
  17. ^ "telegraph.co.uk". I don't want dyslexia to be an issue. July 2 2006 閲覧。
  18. ^ "Famous people with Dyslexia". DyslexiaOnline.com. 2007-04-05 閲覧。
  19. ^ "Last". WashingtonPost.com (2007-09-09). 2007-10-29 閲覧。
  20. ^ "American eagle latitudes". The One and Only Anthony Hopkins. July 2 2006 閲覧。
  21. ^ "Queen's university of Charlotte". John Irving Captivates Sold-out Crowd at Queens. July 2 2006 閲覧。
  22. ^ Official Bruce Jenner Website
  23. ^ "Mirror.co.uk". IKEA king is world's richest man. July 2 2006 閲覧。
  24. ^ Famous Dyslexics
  25. ^ "Tough Enough". Keira Knightley has overcome childhood challenges -- including dyslexia -- to become an actress. Yet the 20-year-old says she can't be a role model.. March 13 2007 閲覧。
  26. ^ Famous Dyslexics
  27. ^ "HOME BUSINESS Magazine". Jay Leno: Leading With His Chin Success Secrets from the Host of The Tonight Show. July 2 2006 閲覧。
  28. ^ "BBC News". Profile Jamie Oliver. July 2 2006 閲覧。
  29. ^ Famous Dyslexics
  30. ^ Appleyard, Bryan (November 27, 2005). “Blizzard of Oz”. The Sunday Times Magazine. http://www.timesonline.co.uk/article/0,,2099-1879431,00.html 2006-09-17 閲覧。 
  31. ^ "Allmusic". Biography. July 2 2006 閲覧。
  32. ^ Famous Dyslexics
  33. ^ "bbc.co.uk". Dyslexia. July 2 2006 閲覧。
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  36. ^ Famous Dyslexics
  37. ^ Robert David Jaffee (2006). “Jersey-raised director Bryan Singer lives a dream in bringing Superman back to the big screen”. New Jersey Jewish News. http://www.njjewishnews.com/njjn.com/062906/ltFanOfSteel.html 2008-12-28 閲覧。 
  38. ^ The Herald newspaper (Glasgow), 'Sir Jackie, was not diagnosed with dyslexia until he was 42'
  39. ^ "Joss Stone Gets In Touch With Witchy Side For Film Debut In 'Eragon'". VH1 (December 12 2006). 2007-03-04 閲覧。
  40. ^ "National library of medicine". July 2 2006 閲覧。
  41. ^ Famous Dyslexics
  42. ^ "USAToday.com". Lindsay Wagner defeats dyslexia. July 2 2006 閲覧。
  43. ^ [3]

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク