ティラノサウルス

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?ティラノサウルス

ティラノサウルスの全身骨格化石標本、
その頭部(フランス、パリの科学技術博物館[1]
種の保全状態評価
絶滅(化石
地質時代
約6,800万-約6,500万年前
中生代白亜紀末期〈マーストリヒト期〉)
分類
動物界 Animalia
脊索動物門 Chordata
亜門 脊椎動物亜門 Vertebrata
爬虫綱 Reptilia
亜綱 双弓亜綱 Diapsida
下綱 主竜形下綱 Archosauromorpha
上目 恐竜上目 Dinosauria
竜盤目 Saurischia
亜目 獣脚亜目 Theropoda
下目 テタヌラ下目 Tetanurae
(階級なし)コエルロサウルス類 Coelurosauria
ティラノサウルス科 Tyrannosauridae
ティラノサウルス属 Tyrannosaurus
学名
Tyrannosaurus rex 
Osborn, 1905
シノニム
Manospondylus Cope, 1892

Dynamosaurus Osborn, 1905 ?Nanotyrannus Bakker, Williams
et Currie, 1988

Dinotyrannus Olshevsky, 1995 Stygivenator Olshevsky, 1995

和名
ティラノサウルス
  • ティラノサウルス・レックス
    T. rex Osborn, 1905 (模式種)

ティラノサウルスTyrannosaurus)は、約6,800万- 約6,500万年前(中生代白亜紀末期〈マーストリヒト期〉)の北アメリカ大陸画像資料[2])に生息していた肉食恐竜。 大型獣脚類の一種である。 他に「ティランノサウルス」「チラノサウルス」など数多くある呼称については第一項にて詳しく述べる。

現在知られている限りで史上最大級の肉食恐竜の一つに数えられる[3]。 恐竜時代の最末期を生物種として約300万年生きたが、中生代を終わらせた大絶滅によって最期を迎えている。

恐竜の代名詞と言えるほど有名な存在で、『ジュラシック・パーク』等の恐竜をテーマにした各種の創作作品においては、脅威の象徴、あるいは最強の恐竜として描かれ、高い人気を誇っている(詳しくは「関連項目」を参照)。

目次

[編集] 呼称

Tyrannosaurus という名称は特に断りのない場合は属名を指す。 Tyrannosaurus として広く認められているのは現在のところ rex のみであり、正しくニ名法で表記された学名 Tyrannosaurus rex が近年のポピュラー・カルチャーで多用されたことから、著名な恐竜としては例外的に属名と種小名を併せた名称が一般に浸透している。 また、学名の略記である T. rex にちなみ、英語日本語では「T・レックス(ティー・レックス)」とも言う。

属名 Tyrannosaurus は、ギリシア語の「τύραννος (turannos =tyrant僭主)」と「σαῦρος[4] (sauros =lizard、蜥蜴〈とかげ〉)」を直接的語源とするラテン語による合成語で、「僭主の蜥蜴」との原義を持つ。 しかし、τύραννος からは後世、否定的な面が強調された「暴君」の意が、σαυρος からは博物学的な「爬虫類」の意が生じており、これらを受けて Tyrannosaurus には「暴君のごとく怖ろしい爬虫類」との命名意図がある。 日本では「暴君竜」と漢訳されており、以前ほど盛んではないものの現在も用いられている。 中国語では「暴龍」、もしくは「覇王龍」という。 古典ラテン語本来の発音を日本語転写すれば「テュランノサウルス」である[5]。 種小名 rex は、ラテン語の「rex (=king、王)」から来ている。本来の音は「レークス」であるが、生物学の慣習として長音は省略され、「レクス」となる。

日本語は揺らぎの大きな言語であり、「チラノザウルス」や「チランノザウルス」に代表されるように昔からいくつもの読み方があった。 現在用いられているのは、最も一般的な「ティラノサウルス」のほか、「ティランノサウルス」、原音に近い「テュランノサウルス」、そして古典的な「チラノサウルス」「チランノサウルス」である[6]。 種小名の音訳は英語風の「レックス」が浸透している。

英語音(音声資料[7])を日本語転写すれば「ティラノソーラス・レックス」であろう。 また、英語化された語形 Tyrannosaur (音声資料[8])であれば、通常的に「ティラノソー」もしくは「タイラノソー」と音訳される[9]

[編集] 特徴

人とティラノサウルスの各標本のスケール比較。標本は左から、”スー”(FMNH PR2081)、AMNH 5027、”スタン”(BHI 3033)、”ジェーン”(BMRP 2002.4.1)。
人とティラノサウルスの各標本のスケール比較。標本は左から、”スー”(FMNH PR2081)、AMNH 5027、”スタン”(BHI 3033)、”ジェーン”(BMRP 2002.4.1)。

骨格標本から推定される成体の体長は約11~13mで、その体重は概ね5~6tと推測されている(体重に関しては異説も多い)。発見されているティラノサウルスの化石はそれほど多くはなく、2001年の時点では20体程度であり、そのうち完全なものは3体のみである。

ティラノサウルスの上下のには鋭い歯が多数並んでいるが、他の肉食恐竜と比べると大きい上に分厚く、最大で18cm以上にも達する。また、餌食となったとみられる恐竜の骨の多くが噛み砕かれていたことから驚異的な咬合力[10]を持っていたと考えられ、その力は少なくとも3t、最大8tに達したと推定される。これらの事実から、ヴェロキラプトルのような小・中型獣脚類が爪を武器として用いていたのとは対照的に、ティラノサウルスは強大な顎と歯のみを武器として使用していたと考えられている。

ティラノサウルスの実物大復元模型
ティラノサウルスの実物大復元模型

体の大きさに比して前肢は異常に小さく、指が2本あるのみで、用途は未だにはっきりとしていない。ただし、その大きさのわりにはかなり大きな力を出せたことがわかってきている。逆に頭部は非常に大きく、それを前肢の代わりに上手く活かしていたのではないかと考えられている。また、進化の過程で体の前方が重くなったため、前肢を短く軽くすることでバランスを取ったとする見解もある。

ティラノサウルスとその類縁種(ティラノサウルス上科)は、脚の速いオルニトミモサウルス類ダチョウに似た恐竜群)と共通の特徴であるアークトメタターサルを有していた。アークトメタターサルとは、第三中足骨が、第二、第四中足骨によって挟み込まれ、上端が押しつぶされる形態のことを指す(メタターサル〈metatarsal〉は中足骨のこと)。近年の研究によると、第三指骨および中足骨に負荷が加わると靭帯の働きにより第二、第四中足骨が中央にまとめられ、負荷の方向を一直線にすることで俊敏性を増すのに役立っていたと考えられている。また靭帯の損傷も防げたのではないかと推測される。このアークトメタターサルはオルニトミモサウルス類との共通先祖から受け継いだ形質と思われていたが、それを持たないティラノサウルスの先祖種の発見から現在では収斂進化によるものとされている。

[編集] 発見と研究の歴史

実化石を含むカーネギー自然史博物館のティラノサウルスの模式標本であるが、一部に誤った復元がなされており、2003年から再構成のための作業が開始されている。
実化石を含むカーネギー自然史博物館のティラノサウルスの模式標本であるが、一部に誤った復元がなされており、2003年から再構成のための作業が開始されている[11]

1892年、アメリカ古生物学者エドワード・ドリンカー・コープは後にティラノサウルスのものと同一視される脊椎の一部を発見し、マノスポンディルス・ギガスManospondylus gigas)と名付けた。2つ目の化石は1900年にワイオミング州アメリカ自然史博物館学芸員であったバーナム・ブラウンによって発見された。この標本はコープに師事していたヘンリー・フェアフィールド・オズボーンによって1905年にディナモサウルス・インペリオススDynamosaurus imperiosus)と名付けられた。三つ目の化石も1902年にブラウンによってモンタナ州で発見され、オズボーンによりティラノサウルス・レックスとして記載された。ディナモサウルスとティラノサウルスはオズボーンが1905年に発表した同じ論文の中で記載・命名されている。翌1906年にオズボーンは両者が実は同種であったとして統一したが、その際ディナモサウルスではなくティラノサウルスが有効名とされたのは、たまたま論文中で先に書かれていたのがティラノサウルスであったためである。1900年に発見された元ディナモサウルスはイギリスロンドン自然史博物館に、1902年に発見されたティラノサウルスの模式標本は現在、米国はペンシルバニア州ピッツバーグにあるカーネギー自然史博物館Carnegie Museum of Natural History)にて保管されている。

なお、1917年にオズボーンはマノスポンディルスとティラノサウルスに共通する特徴を見出し、それ以後は両者が同一視されるようになった。ただし発見されていたマノスポンディルスは一例のみで、標本はきわめて部分的であったため、オズボーン自身はそれらが同一種であると結論付けたわけではない(後述するように、この時点でもし同一種だと認められていたならば「ティラノサウルス」の代わりに「マノスポンディルス」が有効な名前になっていたはずである)。

フィールド自然史博物館にて展示されているスー
フィールド自然史博物館にて展示されているスー

1990年代には非常に保存状態のよいティラノサウルスの全身骨格化石が発見された。この標本は発見者のスーザン・ヘンドリクソン(Susan Hendrickson)にちなんで「スーSue)」と名付けられた。スーはオークションにより日本円にして約10億円という高額で落札されたことでも話題を呼んだ。現在、米国イリノイ州シカゴ市にあるフィールド自然史博物館にて展示されている(標本番号:FMNH PR2081)。

1996年、ティラノサウルス科の恐竜のものと考えられる歯の化石が日本で初めて福井県で発見された。白亜紀前期の地層からの発見であり、ティラノサウルス科のアジア起源説を裏付けるものとしても注目された。

2000年6月、米国サウスダコタ州のかつてマノスポンディルスが発見された場所から、ティラノサウルスの化石が発掘された。この化石は1892年に発見された化石と同一個体のもの(掘り残し)と考えられ、マノスポンディルスとティラノサウルスが同一種であることが実際に確認されることとなったが、そこでコープの命名した「マノスポンディルス・ギガス」という名前の方に優先権があるのではないかという論争が生じた。しかし、2000年1月1日に発効された国際動物命名規約第4版[12]に定められた規定により、動物命名法国際審議会が強権を発動して学名 Tyrannosaurus を「保全名」としたため、名称の交代が行われることはなかった。

2007年4月、ノースカロライナ州立大学などの研究チームは、ティラノサウルスの骨のタンパク質を分析した結果、遺伝子的にニワトリに近いという結果を得たと発表した。

[編集] 分類学的位置付け

ティラノサウルスの近縁種であるタルボサウルスの頭骨
ティラノサウルスの近縁種であるタルボサウルスの頭骨

[編集] ティラノサウルスの類縁種について

ティラノサウルス属として現時点で広く認められているのはレックスのみである。ただし、タルボサウルスティラノサウルス・バタールT. bataar)として、またダスプレトサウルスティラノサウルス・トロススT. torosus)としてティラノサウルス属に含める主張もある。特にモンゴルで発見されたタルボサウルスはその大きさと形態がティラノサウルス・レックスによく似ているため、亜種かティラノサウルスそのものではないかとも言われるが、実際にはタルボサウルスのほうが前肢の比率が小さい。古生物学関連の科学雑誌『アクタ・パレオントロジカ・ポロニカ(Acta Palaeontologica Polonica)』の記事(外部リンク参照)によれば、フィリップ・カリー(Philip J. Currie)、ジュン・フルム(Jřrn H. Hurum)、カロル・サバト(Karol Sabath)は、系統解析をもとにタルボサウルスとティラノサウルスは別属と考えるべきであるとしている。ただし、この差異は生息していた環境の違いによるものであって両者は同属であるという説も根強く、決着は未だ付いていない。現在のところ、ダスプレトサウルスとタルボサウルスは比較的近年発見されたナノティラヌスと共にティラノサウルス亜科に分類されている。なお、ティラノサウルス科には他にアルバートサウルスゴルゴサウルスが属している。

[編集] 生態に関する研究

[編集] 姿勢

画像-1:ゴジラ型
画像-1:ゴジラ型
画像-2:バランス型
画像-2:バランス型

ティラノサウルスの姿勢は、当初はいわゆるゴジラ型(カンガルーが2足で立ち上がったときの形)と考えられていたが、生体力学的研究の結果、尻尾を地面に付けず、体をほぼ水平に延ばした姿勢であったとされるようになった。尻尾は体重の支えとはならないが、体のバランスをとるための重要な役割(姿勢制御や動作制御)を担ったと推測されている(恐竜#直立歩行も参照)。

画像-1:従来の説に基づき尻尾を引きずったゴジラ型で描かれた想像図。1919年、チャールズ・ナイトCharles Knight)筆。
画像-2:近年の姿勢に関する研究に基づいて作られた生態再現模型。前後に均衡のとれた体形となっている。
眼窩は立体視可能な位置にある
眼窩は立体視可能な位置にある
羽毛に覆われた幼体の想像図
羽毛に覆われた幼体の想像図

[編集] 感覚

嗅球が非常に発達しており、嗅覚が非常に優れていたと考えられる。またティラノサウルスは立体視ができる数少ない恐竜であり、視神経はとても太いと推測され、対象までの距離を正確に判断できたと考えられている。加えて、非常に発達した三半規管を具えていたとされ、これは狙いを定めた獲物に向けて頭や眼を固定するための姿勢制御に役立っていたと見られている。

[編集] 体温・羽毛

ティラノサウルスが鳥類のような恒温動物であったか、一般的な爬虫類と同じく変温動物であったかについて、決定的な結論は出ていない(恐竜#恒温動物説も参照)。ただし、彼らは羽毛恐竜として知られるコエルロサウルス類の一種で、鳥類とも比較的近縁であることから恒温動物であったとの見方も有力になっている。羽毛があったか否かについては1990年代中頃から議論の的となっている。ティラノサウルス上科の原始的な種(ディロング)に羽毛の痕跡が発見されていることから、最近では、少なくとも幼体には羽毛が生えていたのではないかと考えられるようになってきている(この説では、体の大きさで体温を保てるようになる成体は羽毛を持たない)。

[編集] 走行速度

ティラノサウルスの足跡化石
ティラノサウルスの足跡化石

ティラノサウルスの歩行・走行速度については未だ論争中である。その最大の原因は、彼らの速さを示す足跡化石が見つかっていないことにある。足跡化石そのものは発見されてはいるが、歩幅がわからないのである。加えて、走るのには不利な巨体を持ちながら、足の速い恐竜の特徴であるアークトメタターサルを併せ持っていることが挙げられる。なお、ティラノサウルスのアークトメタターサルを研究し、その論文の執筆を行ったエリック・スニベリー(Eric Snively)とアンソニー・ラッセル(Anthony P. Russell)は、ティラノサウルスがアークトメタターサルを持たない大型獣脚類と比べて遥かに機敏であることを立証しないが、ほのめかしていると。このような事情があるため、下は18km/hから上は70km/hまで実に様々な走行速度説が提示されている。以下に現在の代表的な説を紹介する。

走行は困難であるという説
ドナルド・ヘンダーソン(Donald Henderson)はアロサウルスとティラノサウルスの3D骨格モデルを作成してコンピュータ・シミュレーションを行った結果、ティラノサウルスの歩幅はそれほど広くなく、18km/h程度が限界という結果を得たと1999年に発表した。さらに2002年、ジョン・ハッチンソン(John Hutchinson)らはティラノサウルスは生体工学的に走る事ができないと発表した。ハッチンソンはティラノサウルスが走行に必要とする筋肉量を計算したが、その結果は走行が極めて困難であることを示しており[13]、妥当な最高速度をフルード数から求められる歩行速度限界である18km/h前後とした。なお、この研究ではモデル(標本番号:MOR 555)の体重を6tと仮定している。
長距離歩行適性説
四肢骨の長さの比率を分析した結果、ティラノサウルスの後肢は高速疾走に向いた形態から長距離歩行に適した形態へ進化する傾向があり、あまり速くはなかったという説がある。歩幅と体軸の回転性を追及した疾走型生物の場合、四肢骨は大腿部(もも)に対して下腿部(脛から足先)の方が長い。しかし、ティラノサウルスはティラノサウルス科の中で相対的に下腿部が大腿部より短く、大型化すると共にその特徴が現れていったようである。この事実から、ティラノサウルスは疾走型から長距離歩行型に移行していったと説明される。その推定速度は15~34km/hであるが、それでもトリケラトプストロサウルス等の角竜を追いかけるのには十分であったのではないかと論じられている。
ただし、ティラノサウルスは大型恐竜の中では下腿部の比率が大きい恐竜の一種でもある(アロサウルスなどを含むカルノサウルス類と比べると明らかに比率は上回っている)。これはティラノサウルスの中足骨が他の大型肉食恐竜よりずっと長いからである。また、現生するいくつかの捕食動物より下腿部の比率は大きい(ライオンを上回り、よりやや劣る)。なお、生物は進化の過程で大型化するにつれ異形生長(アロメトリックグロウ)するため、必ずしも四肢骨の比率変化が疾走型から長距離歩行型への移行と結び付くわけではない。
速度30km/h前後説
マンチェスター大学のビル・セラース(Bill Sellers)はティラノサウルスの筋骨格のコンピュータ・モデルを作成し、走行のシミュレーションを行った。その結果、体重6tのティラノサウルスは29km/hというかなりの速度で走れるという結果を得たとした(セラースは2007年の論文発表前にシミュレーション結果をWEB公開している[14])。また、ティラノサウルス以外にも3種類の現生動物とアロサウルス、ディロフォサウルス、ヴェロキラプトル、コンプソグナトゥスの最高速度を算定したが、現生種の算定速度は実際のものと一致した。また、アロサウルスのモデルでも発見された足跡化石に一致する歩幅と速度が算定されている。これは現在最も中立的な説の一つであり、筋肉量、速筋・遅筋の割合、筋力などのパラメータはどれも推測される範囲の中間値を使っている。また、2002年にハッチンソンらが発表した鈍足説と違い、筋肉の弾性要素や収縮速度及び速筋や遅筋などがモデルとして考慮されている。算定された速度は29km/hであるが、前述のようにパラメータが中間的であるため、これより速い可能性も遅い可能性もありえる。論文中には、速筋の割合や筋肉量によってどのように最高速度が変化するかのグラフが記載されており、それによると最低値で20km/h、最高値で50km/hである。
速度40~50km/h説
ティラノサウルスは含気骨化した恐竜であり、近年の研究では鳥類と同様の気嚢を具えていたとされる。そのため、研究者によっては現在考えられているより軽量である3~4tの体重を主張している。もし体重が3~4tであれば、40~50km/hが妥当だと言われている。
華奢に見える前肢も、ティラノサウルスが狩猟を行っていなかったとする説の論拠とされることがある。
華奢に見える前肢も、ティラノサウルスが狩猟を行っていなかったとする説の論拠とされることがある。

[編集] 食性

ティラノサウルスは非常に強力なプレデター(predator、捕食者)で生態ピラミッドの頂点に位置する存在であったと考えられているが、研究史上何度か異説が提唱されてきた。古くはローレンス・ランベLawrence Lambe)が1917年に提唱したもの(説の主題は本種ではなく近縁のゴルゴサウルスであるが、いずれにせよ、大型獣脚類をプレデターと見なす説には否定的)、最近では米国人古生物学者ジャック・ホーナーのスカベンジャー(scavenger、腐肉食者)説が有名である[15]。これらの説ではいくつかの論拠[16] をもってティラノサウルスはほぼ腐肉食専門であったとされる。しかし、実際のところ、本種を狩猟能力の無い生粋のスカベンジャーと見なす説は、研究者にはあまり受け入れられていない。ときには腐肉食もしたであろうが、本質的にプレデターであったと仮定されることが多い。

一方、ティラノサウルスが積極的に狩猟を行っていたことを支持する証拠・論拠もある。エドモントサウルスやトリケラトプスの化石には、ティラノサウルスに噛み付かれた後も生存し、治癒していたことを示すものがある。これは、生きた獲物を本種が襲うという事実が少なからずあった証拠と見ることができる。また、当時の北アメリカに存在した恐竜のうち角竜は全体の約8割を占めていたようで、生態系のバランスを保つためには相応の捕食動物がいたはずであると推論されるが、1t以上の体重を持ち、トリケラトプスのような角竜を襲撃することのできた恐竜は今のところティラノサウルスしか発見されていない。また、ティラノサウルスは成長期に非常に早いスピードで成長し、高代謝であったとされるため、腐肉のみでそれを維持できるとは考えにくい。立体視能力や鋭い嗅覚なども狩猟において真価を発揮したのではないかと考えられている。

[編集] 社会性

ティラノサウルスの交尾を再現した骨格展示
ティラノサウルスの交尾を再現した骨格展示

ティラノサウルスは単独で行動していたと、かつては考えられていた。しかし近年では、家族または同種族の様々な世代で集団を構成し、社会生活を営んでいたのではないかとの意見もある。この説は、とうてい歩けそうもない骨折が治癒した形跡のある個体が発見され、狩りができない期間に仲間が餌を運んでいた可能性があることに基づく推論である。

親子による狩り説
最近ではティラノサウルスは親子で狩りを行っていたとする説も登場している(この説はハッチンソンらの走行速度説を前提とし、成体の速度を10km/h程度と推算)。ティラノサウルスの咬合力は3tと非常に強力で、現在生息するワニの500kg~1tをしのぎ、トラック鉄格子をも砕いてしまう大きさである。そこで、小型・軽量なため約30km/hで走ることのできる子供と、機敏な動作は不可能であるが強力な顎を持つ親がお互いの長所を活かし、協力して狩りを行っていたのではないかと説明されている。すなわち、子が獲物を追い詰め、親が止めを刺したとする説である。ただし、群れに子供がいて初めて成り立つ狩猟方法である点に異論が差し挟まれる余地ある。

[編集] 脚注

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  1. ^ パレ・ドゥ・ラ・デクーヴェルトゥ(Palais de la Découverte
  2. ^ 約6,500万年前(K-T境界上)の大陸配置図(K-T (65Ma))。この時までの一時期を、ティラノサウルスは左上の大陸で生きていた。- Mollewide Plate Tectonic Maps - Dr. Ron Blakey
  3. ^ 本種のほかに、ギガノトサウルススピノサウルスカルカロドントサウルスエパンテリアスなどが史上最大級とされている。
  4. ^ 正常に表示されない場合はこちらを参照( σαυρος )。
  5. ^ 古典ラテン語では、ギリシア語借用語の y はギリシア語式で発音される。
  6. ^ 一部の研究者は今も「チラノザウルス」を用いている。
  7. ^ Tyrannosaurus rex - howjsay.com, Tyrannosaurus. :当該文字にカーソルを合わせれば繰り返し聴取可能。
  8. ^ Tyrannosaur - howjsay.com
  9. ^ 「タィランノソーァ」などとも記せるが、一般的とは言いがたい。
  10. ^ 上下の顎の咬み合わせの力をいう。
  11. ^ Rebuilding T .Rex - カーネギー自然史博物館のサイトのトピック。
  12. ^ 動物命名法解説
  13. ^ 走行運動は脚の垂直方向に大きな荷重をかけ、人間の場合は体重の2.5倍ほどの荷重が立脚相中期にかかるとされている。もし、体重6tのティラノサウルスの脚にその2.5倍の荷重がかかるとすると、左右の脚に体重の86%ほどの筋肉が必要になると論文中には述べられている。筋肉量は各関節にかかるトルクと関節から推定されるモーメントアームから計算されている。必要となる片足の筋肉の内訳は、股関節伸展筋が体重の15%、膝関節伸展筋が4%、足首関節伸展筋が15%、屈指筋が9%であり、合計43%必要であると算定されている。そのような筋肉量はありえないので、ティラノサウルスは走れないと結論付けられた。ただし、現生のダチョウのような大型陸鳥では筋肉と腱などの連動性が下肢の筋肉量を小さく抑えるのに役立っているが、ティラノサウルスの筋肉の弾性要素と腱の連動性については不確定要素が多かったため、上のハッチンソンの計算では無視されている。
  14. ^ Tyrannosaurus Simulation - 簡単なティラノサウルスの筋骨格モデルを作成した結果、体重6tのティラノサウルスは最高25~54km/hで走れると書かれている。ムービーで公開されているモデルは時速38.5km(10.7m/s)である。
  15. ^ ただし、この説は一般向けの出版物やテレビ番組などでよく取り上げられるものの、ホーナー自身の主要な研究焦点になったことは一度もない。
  16. ^ その論拠には以下のようなものがある。
    • 極度に退化した前肢は、草食恐竜を襲撃するには明らかに不利である。
    • 発達した嗅覚はハゲワシのような腐肉食動物の特徴である。
    • 大型の躯体は他の腐肉食動物を獲物(死骸)から追い払うときに有効であった。
    • 歯の形状がハイエナのように骨を噛み砕くのに適しており、骨の中に残った骨髄を摂取することも可能であった。
    • 当時の温暖な環境は今とは比べるまでもなく草食動物に快適でその数が多かったため、ティラノサウルスは腐肉に困らなかった。
    • ティラノサウルスは遅速で機敏さに欠けるため、素早い草食恐竜を追いかけることは不可能であった。
    ただし、前肢を使用せずとも大きな口と歯を上手く利用すれば狩りは可能であるし、発達した嗅覚や骨を噛み砕ける歯はむしろプレデターとして有利である。そもそも、ハイエナは優秀なプレデターである。また、化石の数から見積もられる草食恐竜と肉食恐竜の比率は現在の自然界のものと大差は無い。このように、スカベンジャー説の論拠には反駁されやすいものが多い。しかし、走行速度次第でスカベンジャー説が支持を集めることもあり得る。

[編集] 関連項目

ウィキメディア・コモンズ
ウィクショナリー
ウィクショナリーTyrannosaurus rexの項目があります。
ウィキブックス
ウィキブックスWikijunior:
Dinosaurs/Tyrannosaurus
関連の教科書や解説書があります。
ティラノサウルスを題材とした事物(名称のみのものを含む)

[編集] 外部リンク