ツルドクダミ

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ツルドクダミ
分類
: 植物界 Plantae
: 被子植物門 Magnoliophyta
: 双子葉植物綱 Magnoliopsida
: タデ目 Polygonales
: タデ科 Polygonaceae
: ツルドクダミ属 Reynoutria
: ツルドクダミ Reynoutria multiflora
学名
Reynoutria multiflora (Thunb.) Moldenke, 1941
英名
Chinese Knotweed

ツルドクダミ(蔓蕺草)(Reynoutria multiflora  (Thunb.) Moldenke, 1941)は中国原産のタデ科のつる性多年草。別名、カシュウ(何首烏)ともよばれる。和名は葉がドクダミに似て、つるになることからこの名が付くが、ドクダミとは科の異なる別種の植物である[1]

特徴[編集]

日本では本州から四国九州沖縄まで分布する中国原産の帰化植物で、山野や空き地、道端などで見られる[2]

つるは、無毛で基部は木質化して1cmくらいの太さにまでなり、巻き付くものがあれば2m以上に這い上がって登る[2]。つるの巻き方向は、右巻きと左巻きの両方向で、これは本種の特徴にもなっている。繁殖力旺盛で、枝分かれしながら繁殖してどこまでも這い上がり、あたり一面を覆いつくすほど勢いがある[2]

互生し、長い葉柄がある心臓形で長さは7cm前後で先端は尖り、基部は心形で凹んでおり、その形はドクダミによく似るがドクダミのような匂いはしない[3]。色は濃緑色をしており、やや厚くしなやかな質感を持つ。葉柄の基部に短い鞘状托葉があり、つるである茎を取り巻いている[4]

雌雄同株総状花序で秋8月 - 10月にかけて咲く。両性花のため、葉腋から出た花序に雄花と雌花がつき、緑白色をした小さな花を小雪が舞うごとく多数つける[3]。白い花弁のように見えるのは5裂した萼片で、中に8個の雄しべがと1本の雌しべがつき、雌しべには花柱が3個ある[4]

果実痩果(そうか)で、萼が成長して翼状になって黒色の光沢のある痩果を包みこみ茎からぶさ下がる[4]

地下に塊根があり、漢方薬で何首烏(カシュウ)と称される。

似た塊根を作るニガカシュウが存在するが、こちらは単子葉類のヤマノイモ科に属するまったくの別種である。

利用[編集]

ツルドクダミ塊根漢方薬生薬として「何首烏(かしゅう)」とよび、古くから不老長寿のための滋養強壮剤として利用されてきた[4]。また、烏のように髪を黒くする作用があることから「」の文字がつけられている。韓国では「白首烏(はくしゅう、ペクスオ)」というよく似た名前の生薬が用いられるが、こちらはキョウチクトウ科のコイケマという植物が用いられており、別物である。生何首烏は潤腸、瀉下および消炎の作用が強く、熱加工した製何首烏は肝腎補益の作用が強い。なお、何首烏を鉄器で調理したり動物の血に晒すなど鉄分を加えることや、ネギニンニクを共に食することは禁忌とされている。

薬草として塊根を掘って細かく刻んだものを天日干ししたものを煎じて服用すると、やや体を温める効能と、若白髪、脱毛、便秘、疲労倦怠に効果があるとされる[1]

つるは、「夜交藤(やこうとう)」と称され、不眠症に漢方薬として伝えられてきた[4]

日本では江戸時代と近年になって漢方薬として栽培されたが、その後一部が野生化している[4]東京都心部でも見られるが、これも大名屋敷などで栽培されたのが逸出したものといわれている。

脚注[編集]

  1. ^ a b 貝津好孝 1995.
  2. ^ a b c 谷川栄子 2015, p. 52.
  3. ^ a b 谷川栄子 2015, pp. 52–53.
  4. ^ a b c d e f 谷川栄子 2015, p. 53.

参考文献[編集]

  • 貝津好孝『日本の薬草』小学館〈小学館のフィールド・ガイドシリーズ〉、1995年7月20日、220頁。ISBN 4-09-208016-6 
  • 谷川栄子『里山のつる性植物 観察の楽しみ』NHK出版、2015年6月20日、52-53頁。ISBN 978-4-14-040271-9