ダンス・ダンス・ダンス

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索
ダンス・ダンス・ダンス
著者 村上春樹
イラスト 佐々木マキ
発行日 1988年10月24日
発行元 講談社
ジャンル 小説
日本の旗 日本
言語 日本語
形態 上製本
ページ数 346(上巻)
340(下巻)
コード ISBN 4-06-204122-7(上巻)
ISBN 4-06-204123-5(下巻)
Portal.svg ウィキポータル 文学
テンプレートを表示

ダンス・ダンス・ダンス』は、村上春樹の6作目の長編小説。

概要[編集]

1988年10月、講談社より上下巻で刊行された。表紙の絵は佐々木マキ1991年12月、講談社文庫として文庫化された。2004年10月、文庫版の新装版が刊行された。

いわゆる「鼠三部作」の3作目であり、作中の「僕」は『風の歌を聴け』の主人公と同一人物。

やや抽象的・奇抜な表現や台詞の多かった前三作に比べて作風はずいぶんと変わり、活字の量・物語性が増している。ただし、村上自身は前三作同様に自由に書いたものであるとしている[1]。また、それまでの村上作品に一貫したテーマである、資本主義の高度発展への社会批判、空虚感と孤独感が特徴として挙げられる。

村上は本作のタイトルの由来について次のように述べている。

「『ノルウェイの森』とは違って、『ダンス・ダンス・ダンス』の場合はか書き始める前にまずタイトルが決まった。このタイトルはビーチボーイズの曲から取ったと思われているようだが、本当の出所は(どちらでもいいようなものだけれど)ザ・デルズという黒人バンドの古い曲である。」[2][3]「日本を出発する前に、(中略)自家製オールディーズ・テープを作っていったのだが、その中にこの曲がたまたま入っていた。(中略)その曲をローマで毎日聴くともなくぼんやり聴いているうちよ、タイトルにふとインスパイアされて書き始めたのだ。」[2]

あらすじ[編集]

1983年。フリーのライターとして「文化的雪かき」に従事する「僕」は、何かに呼ばれているような焦燥を感じていた。それを確かめるためには、もう一度「いるかホテル」に戻らなければならない。そこでは誰かが「僕」を求め、「僕」のために涙を流しているのだ。

登場人物[編集]

僕(主人公)
元翻訳事務所勤務。現在はフリーライターとして「文化的雪かき」に従事している。
キキ
前作『羊をめぐる冒険』に登場した、耳に特別な力を持つ「僕」の元恋人で元高級コールガール
五反田君
「僕」の中学時代の同級生で、人気俳優。フルネームは五反田亮一。映画「片想い」でキキと共演する。
ユキ
「僕」が「ドルフィン・ホテル」で出会った13歳の美少女。特別な感受性を持つため周りに馴染めず、不登校。煙草はバージニア・スリムを愛飲している。
アメ
ユキの母親で新進写真家。独創的で力強い写真を撮る。写真のこととなるとユキを放ったらかしにして旅行に行くなど、熱中すると周りが見えなくなる。
牧村拓
ユキの父親。作家。自分の作家としての才能はアメとユキによって吸い取られてしまったと思っている。女遊びなどが原因でアメとは離婚し、辻堂で書生と暮らしている。
ディック・ノース
詩人でアメの付き人。ベトナム戦争で片腕を失った。
メイ
キキの同僚だったコールガール。「僕」とセックスをした後に何者かに殺される。
マミ
キキの同僚だったコールガール。メイとともに「僕」と五反田君に買われる。
ジューン
ハワイに行く「僕」に牧村拓が買ってくれたコールガール。
ユミヨシさん
「いるかホテル」の跡地に建てられた「ドルフィン・ホテル」のフロントで働く眼鏡の似合う女性。「僕」が思いを寄せる。
書生のフライデー
牧村拓の付き人。ユキは彼をゲイだと断言する。
羊男
羊の皮を被った謎の男。ドルフィン・ホテルでいつまでも「僕」を待つ。
前作『羊をめぐる冒険』で死亡した「僕」の親友。
文学
「赤坂高級コールガール(メイのこと)殺人事件」を担当する赤坂署の刑事。昔の文学青年を髣髴とさせる見た目から「僕」がそう名づけた。
漁師
その同僚。漁師のように黒く焼けているため「文学」同様「僕」が名づけた。
「いるかホテル」の元支配人
かつての「いるかホテル」の支配人だったが、高級ホテル造成のため立ち退きを迫られた際に、新しいホテルに「いるかホテル」の名前を残す事を条件に土地を明け渡した。「僕」曰く「この時代の変化にとうてい生き残れるはずのない人間」。

特記事項[編集]

作品中に登場する牧村拓(まきむら ひらく)は、村上春樹(むらかみ はるき)のアナグラムである。このアナグラムは日本語としては成立しないが、英語アルファベット表記において成立している (MAKIMURA HIRAKU - MURAKAMI HARUKI)。このアナグラムは、村上作品英訳の研究者 塩濱久雄が、神戸で行われた作品の朗読会の場で村上に質問し、村上自身がそれを認めている(塩濱は現 神戸山手大学准教授で、自論文中で経緯の記述がある)。本作品における牧村拓は、純文学作家として当初成功するものの、すぐに行き詰まり、世界各地へ出かけて得た奇抜な体験を書き散らす「冒険作家」として描かれている。

村上は本書にハワイが出てくる理由について、本書執筆の大半を費やしたローマの家があまりにも寒かったので、完成したらハワイに行こうと妻に提案し、それからはハワイのことを考えながら執筆を続けたからであるとしている[4]

村上は本書を執筆した動機について、『羊をめぐる冒険』を書いた後に、「主人公に申し訳ないことをした」という思いを抱いたことであると語っている[要出典]

また本書の続編を書くつもりはないとも語っている[5]

本書は2002年時点で、単行本・文庫本を合わせて229万部が発行されている。

翻訳[編集]

翻訳言語 翻訳者 発行日 発行元
英語 アルフレッド・バーンバウム 1994年1月 講談社インターナショナル
1995年1月31日 Vintage Press
ドイツ語 Sabine Mangold 2002年 DuMont Buchverlag Gmbh
フランス語 Corinne Atlan 1995年8月25日 Seuil
イタリア語 ジョルジョ・アミトラーノ 1998年 Einaudi
スペイン語 Gabriel Álvarez 2012年 Tusquest Editores
カタルーニャ語 Núria Parés, Alexandre Gombau 2012年 Empúries
ポルトガル語 Maria João Lourenço 2007年 Casa das Letras (ポルトガル)
Lica Hashimoto, Neide Hissae Nagae 2005年 Estação Liberdade (ブラジル)
オランダ語 Luk Van Haute 2008年6月 Atlas
デンマーク語 Ib Høy Hansen 1999年 Klim
ノルウェー語 Kari Risvik, Kjell Risvik 1994年 Pax forlag
ポーランド語 Anna Zielińska-Elliott 2005年 Muza
スロバキア語 Lucia Preuss 2006年 Slovart
ハンガリー語 Erdős György 2010年 Geopen Kiadó
セルビア語 Divna Tomić 2005年 Geopoetika
ロシア語 Dmitry Viktorovich Kovalenin 1998年
ラトビア語 Ingūna Bek̦ere 2008年 Zvaigzne ABC
リトアニア語 Milda Dyke, Irena Jomantienė 2004年 Baltos lankos
ウクライナ語 Дзюб Іван Петрович 2006年
ヘブライ語 2010年
韓国語 ユ・ユジョン 1989年12月20日 文学思想社
中国語 (繁体字) 頼明珠 1996年11月11日 時報文化
葉蕙 1992年
中国語 (簡体字) 林少華 1996年
タイ語 นพดล เวชสวัสดิ์
ベトナム語 Trần Vân Anh 2011年 Nhã Nam

英訳版『Dance Dance Dance』は、未成年の飲酒・喫煙のシーンや、文化的に英語圏の人間にはわかりづらい箇所、ボーイ・ジョージに関する描写などが諸々の理由からカットされている。

脚注[編集]

  1. ^ 村上春樹『遠い太鼓』講談社、1990年6月。
  2. ^ a b 村上『遠い太鼓』前掲書、334頁。
  3. ^ ザ・ビーチ・ボーイズの「ダンス・ダンス・ダンス」は1964年10月にシングルとして発表された。
  4. ^ 村上『遠い太鼓』前掲書、337頁。
  5. ^ 村上春樹『「そうだ、村上さんに聞いてみよう」と世間の人々が村上春樹にとりあえずぶっつける282の大疑問に果たして村上さんはちゃんと答えられるのか?』朝日新聞社、2000年8月、15頁。

関連項目[編集]