ダッバーワーラー
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ダッバーワーラー (ヒンディー語・マラーティー語:डब्बावाला、英語:dabbawala)は、 インド西部の大都市ムンバイにおいて、オフィスワーカーのために弁当箱を各家庭から集めて回り勤務先へ届ける職業に携わる人々のことである。
ダッバー(डब्बा)とは、ヒンディー語で「箱、容器」(この場合、ステンレス製で丸く重箱状になった弁当箱)を意味する言葉である。同じくワーラー(वाला)は、様々な名詞・形容詞などと結びついて「~する人、~と関係した職業の人」といった名詞を作り出す単語である。(なので「ダッバーワーラー」は、字面としては「弁当箱(の運び)屋」といった意味である。) また、インドでは「ティファン」(英語:Tiffin)という言葉が「軽い昼食」を指して使われる事も多く、転じて昼食を運ぶための箱を意味する場合もある。そのためダッバーワーラーは、ときにティファンワーラーとも呼ばれる。
弁当箱の収集配達というと単純な仕事のような印象を受けるが、実際は高度に組織化されたビジネスである。ムンバイでダッバーワーラーのビジネスは100年以上の歴史を持ち、現在街の文化を語る上で欠かせないものとなっている。ダッバーワーラーの起源は英領植民地時代に遡る。当時イギリス企業のもとで働いていたインド人の多くは、自分たちの勤務先で給されるイギリス式の食事に嫌気が差していた。そのため、彼らの自宅で調理された昼食をそれぞれの勤務先へ直接運び届けるというビジネスが始まった。現在ダッバーワーラーの主な顧客はインド人のビジネスマンたちであり、弁当の配達のみならずその中身の料理まで請け負う事も多い。
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[編集] 経済的分析
この弁当配達システムの中で働く全ての人は平等に扱われている。分業された各配達過程のうち何の作業を担当するにせよ、一ヶ月の賃金は約2,000~4,000ルピー(日本円で約5,500~1万円;Rs.1=¥2.7 で計算)となっている。
毎日175,000個以上の弁当箱が各利用客の自宅とオフィスの間を行き来し、それを同じく毎日4,500~5,000人のダッバーワーラーたちが、驚くほど安い額の料金で、しかもほとんど確実にランチタイムに間に合わせて配達している。最近の調査によれば、配達間違いは600万個にわずかひとつの割合でしか起きていないとの事である。
ダッバーワーラーはイギリスの公共放送局BBC のドキュメンタリー番組でも取り上げられ、さらにイギリスのチャールズ皇太子がインド訪問中にダッバーワーラーを見学した事もあった。(その時には皇太子の側がスケジュールを調整しなければならなかった。これはダッバーワーラーの厳密な配達時間に配慮したためである。)そのように各方面で多く取り上げられ注目された事もあってか、ダッバーワーラーがインドの名門ビジネススクールなどにゲスト講師として招かれるという、インドにおいて珍しい事態も起きている。西洋近代的なハイテク技術によらない、いわばアナログな人的ネットワークによるダッバーワーラーたちの弁当配達ビジネスの成功には欧米諸国からも注目が集まっている。この弁当配達ビジネスが支えられている一番の理由は、欧米的ファストフードへの不信感と家庭の味への愛着をインドの人々が根強く持ち続けているためだとも考えられる。
[編集] ローテクと傾向
ダッバーワーラーたちの弁当配達ビジネスは基本的に現在もほとんどの工程が人の手による作業でまかなわれているが、その一方で近代的なコンピュータによる情報技術も導入し始めている。現在は携帯電話からのメール(SMS)を利用した配達予約サービスも行っており、また同様に時代の流れに合わせてmydabbawala.com というウェブサイトからの配達予約も受け付け始めた[1]。そのサイト上でアンケートを行うなど、利用者からの声を大切にしている姿勢が示されている。
このダッバーワーラーの配達システムが上手く機能しているのは、ひとえに会社経営者であれば羨むような各工程におけるダッバーワーラーたちのチームワークの連携の良さ、および厳密な配達時間の管理によるものである。また、配達サービスの緊密な網の目を構成する配達員(多くは男性だが、女性配達員も僅かながらいる)には、ほとんど読み書きもできない者が非常に多く携わっているため、文書による情報のやり取りは全く行われていない。その代わり、個々の弁当箱に小さく塗られた単純な色分けによって届け先と受取人の識別がなされている。通常の企業のような複雑に幾重にも階層化された経営体制もとっておらず、仕事はわずか3つの階層に分別される。
ダッバーワーラーは仕事を行うにあたり、自転車2台と大き目の木箱(弁当箱を運ぶ台車になる)、白いクルター・パジャーマー(木綿や麻のゆったりした上下)、同じく白でトレードマークのガンディー・トーピー(小さめの鍔無し帽子)、といったある種最低限の投資をそれぞれが行わなければならない。この投資に対する利益還元は、それぞれのグループの月ごとの売り上げにより決定される。
[編集] 恒常的な配達業務
弁当箱の配達は、ムンバイに特徴的なモンスーンに見舞われた時のような極度に悪天候な日にでさえ中止することなく行われる。各家庭から弁当箱を集めて回る担当、もしくはそれをオフィスへ届ける担当のダッバーワーラーたちは、それぞれの利用客と顔見知りとなっており信用されている。
ダッバーワーラーたちは自分が配達を担当する地域の地理にも当然詳しく、どんな住所にも容易にたどり着くことができる。
利用客の中には、自宅と仕事場の間で家族メンバー同士の連絡を取るため、昼食の中身とともに弁当箱にメッセージを書いたメモを忍ばせておく人もいる。(現在では電話など通信手段の普及にともない廃れてきたが、このようなやり取りはかつて普通に行われていた。)
[編集] その他の地域
[編集] 文学作品において
英国のインド人小説家サルマン・ラシュディによる問題作、『悪魔の詩』(原題:The Satanic Verses)にもダッバーワーラーが登場している。主人公2名のうちの一人、ジブリール・ファリシュタ(Gibreel Farishta:天使ガブリエル)はダッバーワーラーの息子、イスマーイール・ナジムッディーン(Ismail Najmuddin)として生まれる。小説の中でファリシュタは10歳で父の仕事に加わり、映画スターとして出世するまでムンバイ(作中ではボンベイ)のあらゆる場所へ弁当配達してまわる。
[編集] 参考
[編集] 外部リンク
- ムンバイ・ダッバーワーラーの公式サイト
- Thakker, Pradip, Mumbai's amazing Dabbawalas, rediff.com, 2005年11月11日
- Shekhar Gupta, Our computer is our head and our Gandhi cap is the cover to protect it from the sun or rain, Indian Express, Walk the Talk, NDTV 24x7.
- Hart, Jeremy, “The Mumbai working lunch”, The Independent Online, The Independent group, London, 2006年3月19日.
- “Indian lunchbox carriers to attend the Royal nuptials”, Evening Standard (London), Associated Newspapers Ltd, 2005年4月5日.

