ダイレクトカッティング

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ダイレクトカッティングとは、レコード制作方式の一つで、通常行われる記録媒体への保存と編集を行わず、マイクロフォンから収録した音楽・音響をそのまま(ミキシングなどの調整は行う)カッティングマシンに接続してレコード用ラッカー盤に音溝を刻む方式である。

概要[編集]

磁気録音技術が実用化される以前のレコードはすべてダイレクトカッティング方式で収録されていたが、当時は記録時間が3 - 4分のSPレコードであったため実用になっていたといえる。その後LPレコード時代には、記録媒体に磁気テープを用いたアナログテープレコーダーが登場していたため、これをセッション録音、編集に使用し、SPに比べて格段に延びたLPレコードの録音時間を活かすことができるようになった。

その一方で、アナログテープレコーダーの性能的な限界から、記録再生過程での音質の劣化がわずかながらあったため、これを取り除くために、テープレコーダーを通さず、演奏時にリアルタイムでカッティングマシンに音声信号を入力しレコードの原盤を制作することが行われた。これがダイレクトカッティングである。

しかし、演奏およびカッティングが一発勝負であるため、許容できない演奏ミスやミキシング、エフェクト、カッティングレベルの調整不足等があるとレコード片面分が全面的にやり直しになってしまうため、ごく一部の高音質を求めるオーディオマニア向け録音として企画されるにとどまった。

また、ダイレクトカッティングにはライブ録音に期待される演奏の緊張感が求められるため、敢えてこの方法に挑戦するアーティストもあった。

ダイレクトカッティング制作の例[編集]

  • リー・リトナー『ジェントル・ソウツ』・『シュガー・ローフ・エクスプレス』(共に1977年
    • 日本ビクターのプロデュースによる。ドラム以外はアンプを通したエレクトリックサウンドのため、電気録音以前に行われたようなアコースティック録音ではないものの、難曲の数々を一発録りしている。本作はテイク違いで二つの音源がある。現在CD化されているものは同時に録音されたテープをマスターとしている。
  • THE SQUAREMidnight Lover』(1978年
    • 初回のみダイレクトカッティング制作。
  • ザ・キング・トーンズ『DOO-WOP! Tonight』(1980年
    • 大瀧詠一プロデュース。ロックンロール草創期のドゥーワップ曲のカヴァーであるため、まだSP盤が現役であった当時の録音状況を再現するためモノラルミックス・ダイレクトカッティングでの制作となった。後年同録テープを使用してCD化されたが、そこでもモノラルミックスのままである。
  • 西島三重子『地球よ廻れ/ダイレクトカット45』(1988年
    • テープレコーダーを通さないためプレモニタができず、音溝が等間隔になっている。録音は公開で行われた。
  • ジム・ホール『無言歌』(1972年
    • CDでは「ライヴ・イン・トーキョー」と2in1でカップリングされている。なおCDに収録の音源は、ダイレクトカッティングと同時に録音されたテープを編集したものをマスターとしている。
  • ハービー・ハンコック『ダイレクトステップ』(1978年
  • ジョー・サンプルレイ・ブラウンシェリー・マン『ザ・スリー』(1976年
    • 曲目が全く同じで別内容のテイク1とテイク2がそれぞれLPで発売された。CDには両方のテイクが収録されている。イーストウインド紙ジャケットCDシリーズの特典として、未発表テイクを収録したCDが応募者にもれなく進呈された。
  • グレイト・ジャズ・トリオ『ダイレクト・フロム LA』
  • ザ・ペンタゴン『ザ・ペンタゴン』(1976年
    • クリフォード・ジョーダン、シダー・ウォルトン、サム・ジョーンズ、ビリー・ヒギンズ、レイ・マンティーラのグループ。

高音質デジタル録音で有名なテラーク社も、デジタル導入前はダイレクト・カッティングを採用していた。また、生演奏を直接CDのガラスマスターにカッティングして制作したダイレクトカッティングCDも少数ながら存在する。

関連項目[編集]