タウシュベツ川橋梁

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タウシュベツ川橋梁
2016年5月に撮影された橋梁の全景 地図
基本情報
日本の旗 日本
所在地 北海道上士幌町
交差物件 糠平湖
用途 鉄道橋
路線名 士幌線
竣工 1937年
開通 1939年11月18日
閉鎖 1955年8月1日
座標 北緯43度24分56秒 東経143度11分21秒 / 北緯43.41556度 東経143.18917度 / 43.41556; 143.18917座標: 北緯43度24分56秒 東経143度11分21秒 / 北緯43.41556度 東経143.18917度 / 43.41556; 143.18917
構造諸元
形式 アーチ橋
材料 コンクリート
全長 130 m
地図
タウシュベツ川橋梁の位置
タウシュベツ川橋梁の位置
タウシュベツ川橋梁の位置
タウシュベツ川橋梁の位置
タウシュベツ川橋梁の位置
関連項目
橋の一覧 - 各国の橋 - 橋の形式
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タウシュベツ川橋梁(タウシュベツがわきょうりょう)[1]は、北海道上士幌町糠平湖にある、旧国鉄士幌線廃線)のコンクリートアーチ橋である[2]。名称に関しては「川」を省略しタウシュベツ橋梁と称されることもあるが、鉄道橋としての本来の正式名称ではなく、また上士幌町や保存会も正式名を継承している。

よく晴れた風のない日に、湖面に橋が映ると眼鏡のように見える。またアーチ橋ということもあり、「めがね橋」の別名を持つ。古代ローマ水道橋遺跡を思わせるその姿は、周辺の景色とも調和しているとされる。第1回北海道遺産に選定された「旧国鉄士幌線コンクリートアーチ橋梁群」の1つである。

概要[編集]

元々は、日本国有鉄道士幌線1987年昭和62年)廃線)が1939年(昭和14年)に十勝三股駅まで開通した際に、音更川の支流であるタウシュベツ[3]川に架けられた橋である。1955年(昭和30年)に、水力発電用人造ダム湖である糠平ダムが建設され、橋梁周辺が湖底に沈むことになったため、士幌線は湖を避けるように新線が建設され、切り替えられた。その際に、橋梁上の線路は撤去されたものの、橋梁自体は湖の中に残されることとなり、現在までその姿を留めている。

糠平湖人造湖であり、季節や発電によって水位が劇的に変化するため、橋梁全体が水没してしまう時期もあれば、水位が低くなって橋梁全体が見渡せる時期もある。その様子から、「幻の橋」とも呼ばれる[4][5]

糠平市街に鉄道記念館があり、士幌線の説明資料や他の橋梁についての情報がある。

沿革[編集]

基礎情報[編集]

種別
コンクリート製アーチ橋[1]
全長
11連・130m[1]

水位[編集]

タウシュベツ川橋梁は、発電用ダムである糠平湖の水位によってその姿を大きく変える[5]降水量等に左右されるものの、例年、糠平湖の水位が下がる1月頃に凍結した湖面に姿を現す[7]。1 - 5月頃まで姿を見せ、その後は雪解け水や雨の影響で湖の水位が次第に上がるため、9月頃までに水没する[5]。2020年は少雪や少雨の影響でダムの水位が上がらず、10月に入っても水没しない姿を見せたが、このような事例は過去20年例がないという[5]

保存状態[編集]

劣化状況(2005年6月撮影)
劣化状況(2005年6月撮影)
崩落部分(2005年9月撮影)
崩落部分(2005年9月撮影)

糠平湖付近に残されている30余りのアーチ橋梁群には廃線から10年後の1997年(平成9年)、解散を控えた国鉄清算事業団により解体計画が立案された。これに対する地元有志の保存活動が実り、上士幌町が買い取る。

しかし、水没中の水圧、結氷期前後の氷による外力及び、凍結融解を繰り返す凍害から、躯体の損傷は拡大する。工法として、現場打ち鉄筋コンクリート枠の内部に割石を詰める、現代でも法枠工で用いられる手法が採用されている。これは、安く、早く、優美な形状のアーチを築造せしめた当時の鉄道省技術陣の良案であった。ただし、もし外側の枠が崩れたなら、内部の詰め石が容易に崩壊する欠点を抱えてもいた。この弱点が露わとなり、2017年時点で橋の崩壊は時間の問題となっている[8]。土地を管理する電源開発株式会社は「橋梁は国鉄が放棄したもので、いわば廃墟。ダム湖は管理下にあるが、橋梁を管理しているのではない。地元から保存に関する要望があるわけでもなく、対応は考えていない」と述べ、保存には否定的な見解を示している[9]

アーチ橋梁群は北海道遺産に選定されているが、タウシュベツ川橋梁はその立地の悪さから、保存措置の対象外とされている。これに対し、貴重な歴史遺産として補修を熱望する声もあるものの、費用・財政面で極めて厳しい状況にある。また逆に、あえて保存措置を取らずあるがままに任せ、朽ち行く姿を遺跡として観察しようとする考え方も多い。

結局、主に財政面の理由により、タウシュベツ川橋梁は手付かずのまま見守られている状態にある。現地には個人による探訪や見学ツアーが行われているが、崩落を招く危険があることから、橋の上には立ち入れない。

アクセス[編集]

タウシュベツ川橋梁の見学のため、国道273号沿いに駐車場が設置され、湖畔に展望台が設けられている。国道273号から糠平三股林道を経由してタウシュベツ川橋梁に行くことができるが、交通事故が多発したため、2009年(平成21年)から糠平三股林道の当該部分は許可を得た車以外は車での通行が禁止されている[10]。なお、徒歩での通行は可能だが、橋までは約4キロメートルあり、付近はヒグマが棲息しているため、熊よけのを装備するなどヒグマ対策が必要である[10]

画像[編集]

脚注[編集]

  1. ^ a b c d 『日本の名橋 完全名鑑』(廣済堂出版、2013年3月)p.20、ISBN 978-4-331-80222-9
  2. ^ タウシュベツ川橋梁 上士幌町(2020年6月25日閲覧)
  3. ^ アイヌ語で「カバの木の多い川」の意。岩崎量示:朽ちる「幻の橋」今を撮る◇1年の半分は湖に沈む 15年の記録を発信◇日本経済新聞』朝刊2020年6月25日(文化面)同日閲覧。
  4. ^ “北海道 氷結の湖から「幻の橋」”. NHKニュース (日本放送協会). (2013年2月27日). オリジナルの2013年2月27日時点におけるアーカイブ。. https://megalodon.jp/2013-0227-2335-09/www3.nhk.or.jp/news/html/20130227/t10015818301000.html 2013年2月27日閲覧。 
  5. ^ a b c d “タウシュベツ川橋梁 少雪少雨で水没せず 過去20年、例なし”. 北海道新聞. (2020年10月1日). https://www.hokkaido-np.co.jp/article/466290/ 2020年10月3日閲覧。 
  6. ^ 写真集「タウシュベツ川橋梁」”. 北海道新聞. 2020年10月3日閲覧。
  7. ^ タウシュベツ川橋梁”. ひがし大雪アーチ橋友の会. 2020年10月3日閲覧。
  8. ^ “【テツの広場】「幻の橋」今年で見納め?水没繰り返し複数箇所で崩落”. 朝日新聞サイト. (2017年6月1日). http://www.asahi.com/articles/ASK506Q41K50IIPE02D.html?iref=comtop_8_01 
  9. ^ “「幻の橋」美しいアーチ見納め? 損傷進むタウシュベツ川橋梁 旧国鉄士幌線”. 毎日新聞. (2020年9月28日). https://mainichi.jp/articles/20200928/k00/00m/040/146000c 
  10. ^ a b 林道入り口の看板より(画像参照)。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]