ゾウアザラシ属

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ゾウアザラシ属
キタゾウアザラシ ミナミゾウアザラシ
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 哺乳綱 Mammalia
: ネコ目(食肉目) Carnivora
亜目 : イヌ亜目 Caniformia
下目 : 鰭脚下目 Pinnipedia
: アザラシ科 Phocidae
: ゾウアザラシ属 Mirounga
学名
Mirounga
和名
ゾウアザラシ属
下位分類群

ゾウアザラシ属(ゾウアザラシぞく、学名Mirounga)は、ネコ目アザラシ科に属するの1つ。ゾウアザラシ属はキタゾウアザラシミナミゾウアザラシの2種で構成される。両種とも、19世紀末までに狩猟によって生息数は絶滅近くにまで減少したが、その後回復が見られる。

解説[編集]

キタゾウアザラシの雄同士による戦い

形態[編集]

ゾウアザラシという名前は、身体が大きいということだけではなく、大きな鼻を持っていることから、同じ哺乳類であるに由来している。ゾウアザラシの鼻は、特に繁殖期において、非常に大きな音を発生するのに用いられる。アシカ亜目の中では最も身体が大きい種類であると同時に性的二形が激しく、オスは体長4.0~5.8m、体重1,500~3,700kgに達する[注 1][1][2]が、メスは体長2.5~3.6m、体重350~900kg程度である[注 2][3][4][5][6][1]

生態・繁殖[編集]

ゾウアザラシは海洋にいる時間が非常に長く、生涯の80 %を海上あるいは海中で過ごす。潜水可能な時間は長いもので80分に達し、哺乳類の中では最長である。また1,500 mもの深海まで潜水することもできる。潜水の平均的な深度は300 mから500 mであり、餌であるエイイカタコウナギ、小さいサメなどを捕らえる。

メスのゾウアザラシの平均寿命は14年であり、3歳から4歳で性成熟する。オスのゾウアザラシの寿命は20年であり、5歳で性成熟する。しかし自分のハーレム英語版を形成して、実際に生殖活動を行うことができるのは早くても8歳である。オスの生殖活動は主に9歳から12歳の間に行われる。

春になるとまずオスが最初に繁殖地に至り、出来るだけ多くのメスと交尾できるように摂食を断つ。そしてオス同士は喧嘩や鳴き合いなどを通じて、繁殖において優位なオスを決定する。オスは8から9歳になるまでに、皮膚が厚くなって出来た胸板に加え、顕著に長くなった鼻が発達する。オスたちはその鼻を突き出したり、大きな鳴き声を立てたり、身体を動かしたりなどして、自分の優位性を誇示しようとし、時には体を起こして胸部や牙を互いにぶつけ合って戦う[7][8]

半月から1か月後、メスが繁殖地に到着するまでには、優位なオスは既に砂浜に縄張りとハーレムを確立させており、最大50頭のメスが1頭のオスのハーレム下に入る。ハーレムの周辺では、優位性を巡る戦いであぶれたオスが1頭通常徘徊しており、他のオスがハーレム内に侵入するのを防いで、優位なオスを助ける見返りとして、メスのうちの1頭と交尾をする機会を得ることがある[7]

オスは非常に排他的で、オス同士のメスを巡る闘いは、どちらかが死ぬまで続くと言われている。鈍足のためか回避運動や逃走行為はあまり見られず、力比べではなく双方血まみれで噛み合う生々しい戦闘形態をとる。ゾウアザラシの場合、メス単体ではなくメスの群れを巡って闘う。勝利した方はその群れ全てのメスと交尾できるため、一般的なメスの取り合いとは違い文字通りに生涯をかけた闘いと言える。オスはメスの4倍ほど巨大で、またメスも素早くないため、交尾を迫られたメスは物理的に拒否できない。

分類[編集]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 体長が6.85-7m、体重は5tという記録も記載されている。
  2. ^ 最大で体長3.7m、体重1tほどになるとする資料も存在する。

出典[編集]

  1. ^ a b Wood, Gerald (1983). The Guinness Book of Animal Facts and Feats. Enfield, Middlesex : Guinness Superlatives. ISBN 978-0-85112-235-9. https://archive.org/details/guinnessbookofan00wood 
  2. ^ Scammon, Charles Melville (1874). The marine mammals of the north-western coast of North America, described and illustrated; together with an account of the American whale-fishery. Smithsonian Libraries. San Francisco, J.H. Carmany; New York, Putnam. https://archive.org/details/marinemammalsofn00scam 
  3. ^ Southern Elephant Seal”. pinnipeds.org. Seal Conservation Society. 2023年11月13日閲覧。
  4. ^ Miroun”. Animal Diversity Web. The Regents of the University of Michigan (2004年). 2010年9月11日閲覧。
  5. ^ Beer, Encyclopedia of North American Mammals: An Essential Guide to Mammals of North America. Thunder Bay Press (2004), ISBN 978-1-59223-191-1.
  6. ^ Mirounga angustirostris. Northern Elephant Seal. A 22 ft (7 m) individual was reported by Scammon in 1874. Smithsonian National Museum of Natural History
  7. ^ a b Elephant seals. Friends of the Elephant Seal.. San Luis Obispo, Calif.: Central Coast Press. (1999). ISBN 9780965877695. OCLC 44446823. https://archive.org/details/elephantseals0000frie 
  8. ^ Laws, R (1956). “The Elephant Seal: General, Social, and Reproductive Behavior”. Falkland Islands Dependencies Survey 13. 

関連項目[編集]

外部リンク[編集]