ソース接地回路

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図 1: 基本的なNMOSソース接地回路(バイアス等の詳細は省略)

ソース接地回路(ソースせっちかいろ)またはソース共通回路(ソースきょうつうかいろ、: Common source)は、電界効果トランジスタを用いた基本的な増幅回路の一つ。入力インピーダンスが高く、出力インピーダンスも比較的高い。電圧増幅に用いいるのが一般的。バイポーラトランジスタを用いた同様の回路にエミッタ接地回路がある。

特性[編集]

電界効果トランジスタのゲートは絶縁体のため、低い周波数ではソース接地回路の入力インピーダンスは非常に高い。小信号電圧利得は

A_v=\frac{v_o}{v_i}=-g_m\cdot r_o||R_D

出力インピーダンスは

r_{out}=r_o

となる(r_oはトランジスタの出力抵抗)。r_o\gg R_D の場合、

A_v\approx-g_mR_D

と単純化される。

  • ソース接地回路自身の入力インピーダンスは非常に高いが、入力信号にバイアスをかけなければいけない場合(入力がAC結合の場合など)、バイアス回路が入力インピーダンスを決定するため注意が必要である。また、R_D の値にもよるが、出力インピーダンスは高めなので、負荷の抵抗値が低い場合にはバッファを挿入する必要がある。
  • 電圧利得が高く、ミラー効果によってゲート・ドレイン容量(C_{gd})を増大させたものが実質的にゲートに現れる。このため、出力インピーダンスの高い回路でソース接地回路を駆動すると著しく帯域が制限される。この問題は後述のカスコードトランジスタで解決できる。
  • 出力のバイアス点はトランジスタのバイアス電流 I_DR_D及び電源電圧{\rm V_{DD}}のみで決まり、その値は{\rm V_{DD}}-I_DR_D である。このバイアス点を、トランジスタが飽和する最低のドレイン電圧と電源電圧({\rm V_{DD}})の中間にした場合に最大の出力振幅が得られる。

ソース負帰還[編集]

図 2: ソース負帰還付きソース接地回路(バイアス等の詳細は省略)

ソース接地回路のトランジスタのg_mは入力電圧に依存するため、入力と出力の関係は非線形となる。しかし、ソースに抵抗を挿入すると負帰還により電圧利得の g_m への依存性が減り、線形性を向上させることができる。しかし、ソース抵抗がない場合に比べて利得が下がる。小信号電圧利得は

A_v=\frac{v_o}{v_i}=-\frac{R_D}{R_S}g_m\cdot R_S||\frac{R_D+r_o}{1+g_{me}r_o}

出力抵抗は

r_{out}=R_D||(r_o+R_S+g_{me}r_oR_S)

となる(g_{me}=g_m+g_{mb}g_{mb}基板効果による)。基板効果を無視し(g_{mb}=0)、r_o\gg R_Dg_mr_o\gg 1で、さらにR_S\gg 1/g_mの場合、

A_v\approx-\frac{g_mR_D}{1+g_mR_S}\approx-\frac{R_D}{R_S}

r_{out}\approx R_D

と単純化される。

カスコードトランジスタの挿入[編集]

図 3: カスコードトランジスタ付きソース接地回路(バイアス等の詳細は省略)

カスコードトランジスタ(M2)を挿入すると、入力トランジスタ(M1)のドレイン間の増幅率が小さくなるためミラー効果による実質入力容量の増大を抑制することができる。この回路の小信号電圧利得は


A_v=\frac{v_o}{v_i}=-\frac{g_{m1}r_{o2}\cdot R_D||(r_{o1}+r_{o2}+g_{me2}r_{o1}r_{o2})}{r_{o1}+\frac{1}{g_{me2}}||r_{o2}}

で、r_o=r_{o1}=r_{o2}g_m=g_{m1}=g_{me2}r_o\gg R_Dg_mr_o\gg 1 の場合、


A_v\approx-g_mR_D

と単純化され、カスコードトランジスタがない場合と利得は同じになる。また、M1のゲート・ドレイン間の小信号利得は


\frac{v_x}{v_i}=-g_{m1}\cdot\frac{R_D+r_{o2}}{1+g_{me2}r_{o2}}||r_{o1}\approx-1

と低い値になるため、カスコードトランジスタがない場合に比べてミラー効果が大幅に抑制される。

  • この回路はソース接地回路とゲート接地回路の組み合わせと考えることもできる。
  • カスコードトランジスタのゲート(V_B)は直流電圧源に接続される。その電圧は、M1が飽和領域で動作するよう十分高く、かつM2も飽和領域で動作するよう十分低くなければならない。

用途[編集]

無線受信機の低雑音増幅器などに広く使われている。

関連項目[編集]

エミッタ接地回路

参考文献[編集]

  • Behzad Razavi, Design of Analog CMOS Integrated Circuits, McGraw-Hill, Inc., New York, NY, 2000
  • 松澤昭,アナログRFCMOS集積回路設計 基礎編,培風館,2010年