セール双対性

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数学の分野である代数幾何学では、セール双対性(Serre duality)は、次元 n の非特異射影代数多様体 V の上に存在する双対性であり、ベクトルバンドルやさらに連接層へ大きく拡張された。セールの双対性は、コホモロジー群 Hi はもうひとつの双対空間である Hn−i に双対であるということを言っている。もし多様体が複素数上に定義されていれば、この双対性はポアンカレ双対性とは少し異なる情報を主張していることになる。ポアンカレ双対性は Hi を H2n−i に関連付け、V を実 2n 次元の多様体として考えていることになる。

滑らかなコンパクト複素多様体 V の上の正則ベクトルバンドル E の場合は、セールの双対性の言っていることは、次の形となる。

H^q(V,E)\cong H^{n-q}(V,K\otimes E^{\ast})^{\ast},

ここに V は射影的な多様体である必要はない。

代数曲線[編集]

代数曲線の場合は、暗にリーマン・ロッホの定理に含まれている。代数曲線 C について、固有群 Hi は i > 1 でゼロとなり、H1 は暗に(リーマン・ロッホの定理)に含まれている。実際、定理の基本的関係は、l(D) と l(K−D) を意味していて、ここに D は因子を意味し、K は標準クラス英語版(canonical class)の因子を意味する。セールの後、 l(K−D) を H1(D) の次元として認識されるようになった。今は、D は因子 D によって決まるラインバンドルを意味する。すなわち、この場合のセール双対性は、群 H1(D) と H0(KD*) とを関係づけていくと、次元の意味が分かってくる(記号: K は標準ラインバンドルで、 D* は双対バンドルであり、並んで置かれているのは、ラインバンドルのテンソル積である)。

リーマン・ロッホの定理のこの定式化は、層のオイラー標数英語版の計算とみなすことができる。

h^0(D) - h^1(D),

曲線の種数の項は、

h^1(C,\mathcal{O}_C),

であり、これは D の次数である。この表現はより高い次元へ一般化することができる。

従って、曲線のセール双対性は、非常に古典的であるが、しかし興味深い広がりを持っている。例えば、リーマン面の理論では、複素構造の変形理論英語版は古典的には、二次形式(つまり、L(K2 の切断)のおかげで研究された。小平邦彦ドナルド・スペンサー英語版変形理論英語版は、H1(T) を通した変形と同じである。ここに、 T は接バンドルの層 K* である。双対性は、なぜこれらのアプローチが一致するのかを示している。

原点と一般化[編集]

理論の原点はセールの早い段階の多変数複素函数論の仕事にある。アレクサンダー・グロタンディークの一般化では、セールの双対性は非常に広い設定の中で固有双対性英語版(coherent duality)の一部となった。一般的なSerre双対性の中での上記の K の役割は、余接バンドル行列式ラインバンドル英語版により担われるが、V が一般の多様体の時には、K が非常に一般的となるため、単に V 上の非特異性が成り立つ予想がない中の「単独の」層ではありえない。完全に一般的な定式化は、導来圏Ext函手を使うと、K が層の鎖複体、つまり二重化された複体によって表現されるという事実を示すことができる。この定理のステートメントは、セールにより認識された。

参考文献[編集]