セラック25

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セラック25Therac-25)とはカナダ原子力公社(AECL)とフランスCGR-MeV社によって開発・製造された放射線療法機器。制御に用いられたソフトウェアのバグにより、1985年から1987年にかけて知られる限り6つの過度の被曝事故を引き起こし、少なくとも5人の患者を死亡させた。これらの事故は、生命に関わるようなシステムにおけるソフトウェア制御の危険性を浮き彫りにし、医療情報学における標準的な事例研究のひとつとなった。

背景[編集]

セラック25はAECL社とCGR社によって、医療用線形加速器セラック6(Therac-6)とセラック20(Therac-20)の後継機として開発された。前者は6MeVまでのX線を、後者は20MeVのX線と電子線を生成することができた。セラック25はAECLによって新たに開発されたダブルパス技術を用いた電子加速機であり、従来機に比べてより小さなスペースで、より効率的に25MeVまでのX線と電子線を生成することができた。

これらの機器はいずれもPDP-11によってコンピュータ制御できるが、セラック25は従来機と違って、最初からコンピュータ制御を念頭においてデザインされていた。また、従来機ではハードウェアの監視装置は機器とは独立した電子回路で実装していたが、セラック25ではメンテナンス性のためにこれをソフトウェアで置き換えた。ソフトウェアにはCGR社が開発したセラック6用のコードが多く流用された。またセラック20用のコードもいくつか混入していたが、このコードにはバグがあり、後の事故を引き起こす一要因となった。セラック20にはハードウェアによる安全装置があったため事故は起こらず、このバグはセラック25の事故調査で判明することとなる。

1976年にはプロトタイプ機が製造され、1982年に商業的に販売された。1983年に危険性分析が行われたが、これはソフトウェアのバグの存在を仮定しない、不十分なものであった。

事故[編集]

放射線を出力するためには、高出力の電子線ビームをターゲットに向けて発射し、X線に変換して患者に照射する。しかし、ソフトウェアのバグによりこのターゲットが正しい位置に来ていなかったにもかかわらず電子線ビームが発射され、これが患者に直接当たったために事故が起きた。患者の内部組織には重篤な放射線被曝による火傷が引き起こされた。

外部リンク[編集]