ストバイオス

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『選文集』16世紀刊本

ストバイオス[1][2]またはストボイのヨハンネス[2]古希: Ἰωάννης ὁ Στοβαῖος, : Joannes Stobaeus, 5世紀ごろ)は、東ローマ帝国初期・古代末期の著述家。ギリシア古典抜粋集『選文集[3](『抜粋集[4]などとも、古希: Ἀνθολόγιον, : Anthology)の編者。同書は佚書の抜粋を多く含むため、西洋古典学の重要資料となっている[2]

生涯[編集]

生涯は不詳である[3]マケドニアの都市ストボイ英語版出身の「ヨハンネス」という名の人物であり、「ストバイオス」は「ストボイの人」を意味する通り名である[2]。セプティミウスという息子の教育のため、抜粋集を編纂した[5]

『選文集』[編集]

全4巻[5]。題名の日本語訳は定まっておらず、『選文集』[3]『抜粋集』[4][6]『精華集』[7]『精華文集』[5]『詞華集』[8]などの訳がある。ラテン語では1-2巻を Eclogae、3-4巻を Florilegium ともいい、日本語では『自然学選集』と『倫理選集』[5]、『自然学抜粋集』と『倫理学抜粋集』[9]とも訳される。

抜粋された著者は500人を越える[5]ローマ帝国期のものは少なく、キリスト教関係も見られない[5]。分野は文学から哲学歴史弁論医学等まで及ぶ[5]。哲学の抜粋は学説誌の要素も持ち[9]、近代の『ソクラテス以前哲学者断片集』などに利用されている[2]

フォティオスビブリオテーケー』に解題がある[5]最初の刊本英語版16世紀アントウェルペンプランタン印刷所英語版から出版された[10]

電子版[編集]

脚注[編集]

  1. ^ ストバイオス』 - コトバンク
  2. ^ a b c d e 2015/12/17”. clsoc.jp. 日本西洋古典学会. 2024年3月23日閲覧。
  3. ^ a b c ギリシア悲劇全集編集部「付言」『ギリシア悲劇名言集 新装版』岩波書店、2015年、ISBN 978-4000610827。173f頁。
  4. ^ a b 中川純男序説 中世哲学とストア派倫理学」『中世思想研究』52、中世哲学会、2010年、NAID 40017345722。112頁。
  5. ^ a b c d e f g h 根本英世「ストバイオス」『集英社 世界文学大辞典 2』集英社、1997年、ISBN 978-4081430024、652頁。
  6. ^ 内山勝利編『ソクラテス以前哲学者断片集 別冊』岩波書店、1998年。6頁。
  7. ^ 内山勝利編『ソクラテス以前哲学者断片集 第1分冊』岩波書店、1996年。233頁。
  8. ^ 久保田忠利「解説に代えて」『ギリシア悲劇名言集 新装版』岩波書店、2015年、ISBN 978-4000610827。175頁。
  9. ^ a b 木原志乃「初期ギリシア哲学の文献事情」『哲学の歴史〈第1巻〉哲学誕生―古代1』内山勝利編、中央公論新社、2008年
  10. ^ L.D.レイノルズ英語版 ; N.G.ウィルソン英語版 著、西村賀子 ; 吉武純夫 訳『古典の継承者たち ギリシア・ラテン語テクストの伝承にみる文化史』国文社、1996年、268頁。ISBN 9784772004190