スターバト・マーテル (ドヴォルザーク)

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スターバト・マーテル 作品58 B.71 (Stabat Mater)は、アントニン・ドヴォルザークが作曲した、ソプラノアルトテノールバス、混声合唱管弦楽のための教会音楽である。ロッシーニ同名の作品と並んで、19世紀の『スターバト・マーテル』の名作のひとつとして知られている。

作曲の経緯[編集]

作曲と完成まで[編集]

ドヴォルザークは1875年に、オーストリア政府国家奨学金制度の作品募集で、ブラームスハンスリックの眼にとまり、奨学金を得られるようになったことで経済的に恵まれ、作曲家としての開運の兆しが見え始めたその矢先、1875年の9月に突然長女がこの世を去るという不運に見舞われる。ドヴォルザークは悼む気持ちで、長女が没した間もない頃に『スターバト・マーテル』の作曲に取り掛かり、翌1876年2月19日から5月7日にかけてスケッチを一旦仕上げているが、他の仕事で多忙をきわめたために[1]思うようにはかどることが出来ず、スケッチは1年半近く棚上げにされた状態でいた。

またドヴォルザークに再び不運が訪れ、今度はこの年の9月に長男、10月に二女の2人が相次いで[2]失うという悲劇に遭遇する。この悲劇はドヴォルザークの心を動かし、2人の冥福を祈る名目で、長らく棚上げされていた『スターバト・マーテル』の作曲を10月に入って本格的に再開し、11月13日にオーケストレーションを終えるまで一気に完成させた。

初演と出版[編集]

完成後すぐに行わず、3年経った1880年12月23日プラハの音楽芸術協会の定期演奏会で、アドルフ・チェフの指揮によって行われた。その後1882年ブルノで再演されている。

出版は1881年ベルリンのジムロック社から出版されている。

楽器編成[編集]

構成[編集]

全10曲から構成され、演奏時間は約75分。

  • 第1曲 悲しみに沈める聖母は (Stabat Mater dolorosa)
    四重唱と混声4部合唱。アンダンテ・コン・モート、ロ短調(2分の3拍子)。
  • 第2曲 誰が涙を流さぬものがあろうか (Quis est homo, qui non fleret)
    四重唱。アンダンテ・ソステヌート、ホ短調(4分の3拍子)。
  • 第3曲 いざ、愛の泉である聖母よ (Eja, Mater, fons amoris)
    合唱。アンダンテ・コン・モート、ハ短調(4分の4拍子)。
  • 第4曲 わが心をして (Fac, ut ardeat cor meum)
    バス独唱と混声4部合唱。ラルゴ、変ロ短調(8分の4拍子)。
  • 第5曲 わがためにかく傷つけられ (Tui nati vulnerati)
    混声4部合唱。アンダンテ・コン・モート、クアジ・アレグレット、変ホ長調(8分の6拍子)。
  • 第6曲 我にも汝とともに涙を流させ (Fac me vere tecum flere)
    テノール独唱と混声4部合唱。アンダンテ・コン・モート、ロ長調(4分の4拍子)。
  • 第7曲 処女のうちもっとも輝ける処女 (Virgo virginum praeclara)
    混声4部合唱。ラルゴ、イ長調(4分の2拍子)。
  • 第8曲 キリストの死に思いを巡らし (Fac, ut portem Christi mortem)
    ソプラノ、テノールの二重唱。ラルゲット、ニ長調(8分の4拍子)。
  • 第9曲 焼かれ、焚かれるとはいえ (Inflammatus et accensus)
    アルト独唱。アンダンテ・マエストーソ、ニ短調(4分の4拍子)。
  • 第10曲 肉体は死して朽ち果てるとも (Quando corpus morietur)
    四重唱と混声4部合唱。アンダンテ・コン・モート、ロ短調(2分の3拍子)。

脚注[編集]

  1. ^ この時期を前後として、オペラ『いたずら百姓』やピアノ協奏曲の作曲、聖アーダルベルト教会のオルガニストとしての務め、さらには弟子レッスンを見なければならないという状態であった。後に教会のオルガニストを辞めている。
  2. ^ 長男は天然痘、二女は劇物の誤飲による

参考資料[編集]

関連項目[編集]