奨学金

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奨学金(しょうがくきん)は、能力のある学生に対して、金銭の給付・貸与を行う制度。金銭的・経済的理由により修学困難とされる学生に修学を促すことを目的とすることも多いが、金銭的・経済的な必要性を問わず、学生の能力に対して給付されることもある。通常先進国では奨学金は給付奨学金をさす(日本では特別な場合を除いて有担保貸与奨学金)。貸与の場合は、借金をしている状態である。

概要[編集]

世界的には先進国では奨学金は通常返済義務がない給付奨学金をいう。しかし日本の場合は貸与奨学金であり、米国を例にとれば給付奨学金(grants, scholarships)ではなく、学生ローン(student loans)と呼ばれる[1]ものである。米国では、学生の大半は「学生ローン」を利用しており、「奨学金」を併用している学生も多いものの、金額ベースでみると「学生ローン」の方が利用が多くなっている。なお、「学生ローン」であっても、利子の補給やその後の減税など何らかの形で政府がかかわっているのが一般的である。日本語では、それらも含めて公的機関が関与している学生向けの金銭給付制度を、返済義務や利子負担の有無にかかわらず、奨学金と呼ぶが、単なる借り入れであるため「低収入、アルバイトによる生計の維持、疾病、失業などでの理由で返済できない」[2]などの相談が日本弁護士会には寄せられている。

給付奨学金[編集]

企業自治体の主宰する奨学金に多い。UWCのようにNPO教育組織が行う場合もある。日本では比較的少ないが、欧米では伝統的に奨学金が大学や高校から一部の学生・生徒に給付される例はよくみられる。2004年4月からの国立大学法人化に伴い、護送船団でなくなった国立大学でも個別に給付奨学金制度の整備が行われてきている(例:「一橋大学学業優秀学生奨学金制度」、「金沢大学アカンサス・スカラシップ制度」)。

貸与奨学金[編集]

日本学生支援機構[編集]

2004年4月1日より、奨学事業、留学生支援事業、学生相談等の事業を統合して行う独立行政法人として、それまでの日本育英会文部科学省・国立大学の業務の一部、財団法人日本国際教育協会、財団法人内外学生センター、財団法人国際学友会、財団法人関西国際学友会の一部の業務を引き継いで、独立行政法人日本学生支援機構として誕生。奨学事業に関しては利用者の最も多い奨学金制度の一つ。

高等専門学校専修学校専門課程、大学大学院に在籍する学生に対して、奨学金を貸与する。奨学金には第一種(無利子)、第二種(有利子)などの区分が設けられており、第一種の方が採用基準が厳しく(学力等)、第二種は条件(保護者の年収等)を満たせばほぼ全員が採用される。

留学生支援事業に関しては外国人留学生や交換留学生への奨学金給付を行っているほか、日本に留学する外国人への相談・情報提供、日本から日本国外に留学を希望する人への相談・情報提供事業などがある。留学相談は誰でも利用可能。

日本育英会時代は第一種と第二種の差異は前者が無利子、後者が有利子であることだけで、貸与金額は同額だったため、第一種に人気が集まっていた。しかし現在では、第二種が第一種の約2倍の貸与を受けることができることと、金利が市中ローンより非常に低率なことから、借用したい額によって選択するケースが増えている。

貸与奨学金について返済しない(返済できない)者が増加したところ、3ヶ月以上の滞納者は全国銀行個人信用情報センターに「多重債務化への移行防止は、教育的観点から極めて有意義[3]」として登録し(いわゆるブラックリスト[4])、完済後5年が経過するまで新規ローン・クレジットカード、家賃保証会社利用時の賃貸契約等が通常出来なくなるなど不利益を被らせる等間接な支払の促進を行っている。

技能者育成資金制度[編集]

文部科学省が所管しない職業能力開発総合大学校及び公共職業能力開発施設に在籍する学生や訓練生は日本学生支援機構の奨学金貸与の対象とならない。これに代わるものとして、独立行政法人雇用・能力開発機構が設けていた技能者育成資金制度があったが、2010年度末で終了となった。

2009年4月以前の入校者対象[編集]

日本学生支援機構の奨学金制度と同様に、第一種(無利子)、第二種(有利子、年3%)の区分がある。第二種の対象者は都道府県立では職業能力開発校日本版デュアルシステム職業能力開発短期大学校専門課程、雇用・能力開発機構立では都道府県センター(職業能力開発促進センターを含む)の日本版デュアルシステム、職業能力開発総合大学校(研究課程及び応用研究課程を除く)、職業能力開発大学校の専門課程及び応用課程職業能力開発短期大学校の専門課程に在籍する学生及び訓練生である。

第一種の対象者は都道府県立では職業能力開発校(日本版デュアルシステムを除く)、職業能力開発短期大学校、雇用・能力開発機構立では、都道府県センター(職業能力開発促進センターを含む)(日本版デュアルシステムを除く)、職業能力開発総合大学校、職業能力開発大学校、職業能力開発短期大学校に在籍する学生及び訓練生である。

融資条件には経済的理由と成績基準があるが、第一種では特に優れた学生及び訓練生が対象となり、第二種では成績基準が緩くなっている。融資月額は、条件に応じて18,200円〜85,000円(第一種)、40,000円〜47,600円(第二種)である。

技能者育成資金の返還期間は最長16年以内である。以前は特定の職業(専修学校、職業能力開発総合大学校の教職員など)に指定された期間以上勤務すれば、返還が猶予及び免除される制度があったが、現在は廃止されている。

2009年4月以降の入校者対象[編集]

2009年4月の入校生からは、第一種、第二種の区分を廃止し、すべて有利子(年3%、ただし在校中は無利息)の貸付制度になった。対象者は、都道府県立では職業能力開発校、職業能力開発短期大学校、雇用・能力開発機構立では、都道府県センター(職業能力開発促進センターを含む)、職業能力開発総合大学校、職業能力開発大学校、職業能力開発短期大学校に在籍する学生及び訓練生である。融資月額は、条件に応じて18,200円〜85,000円である。

技能者育成資金制度の拡充[編集]

技能者育成資金制度による職業訓練期間中の生活保障給付(2009年1月から施行)については、職業訓練期間中の生活保障給付を参照のこと。

技能者育成資金融資制度[編集]

技能者育成資金制度の終了に伴い、2011年より厚生労働省により創設された。労働金庫から有利子、無担保で一定限度額まで融資を受けることができる。2011年度の融資対象者と要件は、2011年4月時点において、職業能力開発総合大学校又は公共職業能力開発施設に在学し、満18歳以上で施設長の推薦があり、父母の直近1年間の所得が基準額以下であること等である。融資上限額は、普通課程の訓練生は1年あたり260,000円(自宅生)、310,000円(自宅外)、専門課程、応用課程、長期課程の訓練生、学生は500,000円(自宅)、590,000円(自宅外)、研究課程の学生は1,020,000円である。融資利率は年利3%、返済は10年間を限度とする。

あしなが育英会[編集]

病気事故災害自殺などにより親を亡くした子供に対し、高校、大学、専門学校に通うための奨学金を貸与する。

留学のための奨学金[編集]

日本国外への留学には多額の費用が必要となることが多く、奨学金を利用する学生も多い。「海外留学奨学金パンフレット」で概要がわかる。給付と貸与とある[5]

日米教育委員会による奨学金[編集]

俗にフルブライト奨学金と呼ばれるもの。アメリカ留学に関する奨学金である。

公費による奨学金[編集]

1964年より大学生を対象とするサンケイスカラシップ産経新聞社フジテレビジョンなどが主唱)があったが、1989年に事業は終了された。また、かつてのコンクール・ド・フランセ朝日新聞社主催、対象は学生に限らないが、年齢制限等がある)は2008年現在は財団法人日仏会館主催(後援:朝日新聞社、他)のフランス語コンクールとなっている。

これらの他に、ロータリークラブAFS(高校生対象)などがある。

国費で実施されている奨学金制度[編集]

特定の目的のために国費によって運営されている奨学金制度である。いずれも管轄省庁の指定する職に一定期間勤務すれば返還免除となる。各省庁が管轄している場合でも、実施機関は都道府県である場合が多いが、以下の制度は国費によって運営されている。いずれも日本学生支援機構の奨学金との重複を認めている。

防衛省による貸費学生制度[編集]

自衛隊法第98条に基づく制度である。技術貸費学生と衛生貸費学生があり、技術は理工学系・衛生は医歯学系の学生を対象としている。採用は例年十数名程度である。

矯正医官修学資金貸与法による修学資金貸与制度[編集]

法務省所轄の奨学金制度である。医学専攻の学生のうち、卒業後各種矯正施設に勤務しようとする者を対象とする。こちらも例年十数名程度の採用である。

地方自治体による奨学金制度[編集]

都道府県レベルや市町村単位など、その募集内容や奨学金の額、そして、返済の有無など制度内容は千差万別ではあるものの、多くの自治体に制度がある。

民間企業による奨学金制度[編集]

民間企業が独自に実施する奨学金制度。通年募集されているものもあれば、小額を突発的に募集を行うもの、特定の学校限定の奨学制度など多岐に渡る。

新聞社による奨学金制度[編集]

新聞社による新聞奨学生と呼ばれる奨学金貸与/支給制度である。学生は就学期間中販売店で新聞配達に従事する事で奨学金の支給を受ける事ができる。主に都市部の新聞社が実施している。

問題点[編集]

  • 日本学生支援機構の貸与奨学金の場合、受給には本人と父母の所得制限があるため、中産階級中流階級以上の子弟が何らかの金銭的理由により就学困難である場合でも、現状では支給されない。但し、収入・所得の上限額はかなり高い。例えば大学在学時の採用の場合、4人世帯の収入・所得の上限額の目安は国公立、自宅外で995万円、私立、自宅外で1,040万円(第一種奨学金)、国公立、自宅外で1,341万円、私立、自宅外で1,391万円である[6]
  • 新聞奨学生の場合、時間的制約が大きく、研修等がある学科では利用が困難となる。また、一部の店舗において労働環境が劣悪で、過労死事件などが起きるなど問題が少なくない。

参考文献[編集]

  • 笠木恵司、『学費免除・奨学金で行く大学・大学院』、ダイヤモンド社 ISBN 9784478970737
  • アジア学生文化協会、『外国人留学生のための奨学金案内(2005-2006年版)』、同文舘出版 ISBN 9784495974497

脚注[編集]

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  1. ^ アメリカの学生支援制度 CollegeBoard>student loans [1]
  2. ^ 2013年2月の全国(39弁護士会)一斉奨学金返済問題ホットライ 日本弁護士会集計 [2]
  3. ^ 日本学生支援機構ホームページ 奨学金 > よくある質問 > 奨学金Q&A~個人信用情報機関>日本学生支援機構が奨学金制度において個人信用情報機関を利用するに至った理由は何ですか[3]
  4. ^ 「信用情報機関に登録されない(いわゆるブラックリストに登録されない)。」日本弁護士連合会 HOME> 日弁連の活動 > 人権擁護活動 > 震災復興支援 | 原発事故 > 会員向け情報 > 会員向け情報 - 詳細 被災ローン減免制度(個人債務者の私的整理に関するガイドライン)について[4] 
  5. ^ 海外留学のための奨学金”. 日本学生支援機構. 2008年12月17日閲覧。
  6. ^ 2.大学に在学中の申込み(在学採用)”. 大学で奨学金の貸与を希望する方へ. 日本学生支援機構. 2008年12月17日閲覧。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]