ジープ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ジープ (Jeep®) は、クライスラー社の四輪駆動車のブランドである。ジープは単なる商標に留まらず、その優れた設計から民生のクロスカントリーカーや小型軍用車両の代名詞となっており、ライセンス生産、コピーを問わず、世界中に亜流が存在する。
目次 |
[編集] 歴史
Jeepという名称は General Purpose(万能)もしくは Government-use(政府用)の G とホイールベース 80 インチの車両を表す識別符号の P から来た符号 GP から“ジープ”と命名されたという説や、漫画「ポパイ」に登場する「ユージン・ザ・ジープ」からとったという説がある。
- 1940年 アメリカ陸軍需品科はポーランド侵攻におけるキューベルワーゲンの活躍に注目し、135社の自動車製造会社に大まかな設計要件を伝え、小型偵察車開発計画に応札することを要請した。(en) アメリカン・バンタム社が落札し、プロトタイプを製作する。
- 1941年 弱小企業であるバンタム社の生産能力を危惧する陸軍はバンタム社の設計図を公開し、これに基づき(en) ウィリス・オーバーランド社はウイリスMAを、フォード・モーター社もフォード・GPと呼ばれるプロトタイプを製作。3社合わせて数千台規模により実戦投入された結果、ウィリスMAに改良を加えたMBが正式採用される。
同年中に日本陸軍がフィリピン作戦にてバンタムMk II(BRC-60)を鹵獲、内地に持ち帰る。これをコピーするようトヨタ自動車に命じ、1944年8月にトヨタ呼称AK10型として試作車5台が出揃い、御殿場で試験された。その結果、陸軍・四式小型貨物車として制式採用されるが、極度の資材欠乏と労働力低下から生産が間に合わず、ジープのような活躍の記録は無い。
また、このAK10型と戦後のトヨタ・ジープ、のちのランドクルーザーとの設計面でのつながりも一切無い。 - 1942年から、同一仕様のウイリスMB、フォード・GPWの生産が始まる。
[編集] 軍用Jeep生産台数
| モデル | 年 | 生産台数 |
|---|---|---|
| Bantam pilot | 1940 | 1 |
| Bantam Mk II / BRC-60 | 1940 | 69 |
| Willys Quad | 1940 | 5 |
| Ford Pygmy | 1940 | 1 |
| Bantam BRC-40 | 1941 | 2,605 |
| Willys MA | 1941 | 1,553 |
| Ford GP | 1941 | 4,456 |
| Willys MB | 1942 - 1945 | 361,339 (25,808 スラットグリル + 335,531 プレスグリル) |
| Ford GPW | 1942 - 1945 | 277,896 |
| 第二次世界大戦中 小計 | 1940 - 1945 | 647,925 |
| その他 | ||
| (en) Ford GPA 'Seep' (水陸両用車) |
1942 - 1943 | 12,778 |
| 戦後 | ||
| Willys M38 (MC) | 1950 - 1952 | 61,423 |
| Willys M38A1 (MD) | 1952 - 1957 | 101,488 |
| Willys M606 (CJ-3B) | 1953 - 1968 | ? (155,494台生産されたCJ-3Bの一部。) |
| Willys M170 | 1954 - 1964 | 6,500 |
[編集] 海外生産
- フランス オチキス(ホッチキス)社で1954年からライセンス生産が行われた。
- 日本では三菱自動車により三菱・ジープという名称でライセンス生産されていたが、陸上自衛隊の採用中止に伴い、1998年に生産終了となった。
- 中国では、第二次大戦中、日本との戦争に向けて、ライセンス生産をしていた。当時約2000台を生産し戦場へ供給された。1984年に当時のAMCとの合弁企業「北京ジープ」が設立され、現在でもジープチェロキー(XJ)が生産されている。
- 韓国では、双龍自動車(Ssangyong Motor)が「コランド」の名でCJ-7をはじめ、双龍オリジナルのバリエーションモデルのライセンス生産を行っていた。
- インドでは、マヒンドラ&マヒンドラ社が現在でもライセンス生産を行っている。
- 旧ソ連は、第二次大戦中、アメリカの物資援助で運ばれたジープをコピーし、GAZ-67Bなる独自の小型トラックを開発。戦中から戦後にかけて6万台以上製造され、ソ連や旧共産圏、中国、北朝鮮、モンゴルに配備された。
[編集] ブランド
- 第二次大戦後、ウィリス・オーバーランド (Willys) 社が商標を所有していたが、ウィリス・オーバーランド社を1953年にカイザー (Kaiser) が買収し、社名をウィリス・モーターズ・インコーポレーテッドとして子会社化。1963年にはカイザー自体が社名を「カイザー=ジープ・コーポレーション」とした。カイザー=ジープ社は1970年にはアメリカン・モーターズ (AMC) に買収される。AMCは1980年にはルノー傘下に入り、1987年にはAMCがクライスラー社に吸収され、クライスラー社も1998年にダイムラー・ベンツと合併し、ダイムラー・クライスラーとなった。2007年にダイムラー・クライスラーは、クライスラー部門を米投資会社サーベラス・キャピタル・マネジメントに売却、現在はクライスラー(Chrysler LLC)の一部門・ブランドである。
[編集] 車種一覧
[編集] 現行モデル
- ※車種は市場関係なく紹介するがバリエーションは日本仕様に基づくものとする。
- ジープ・ラングラー
- 現行型はJK型と呼ばれている。CJ、YJ、TJと続いてきた、ジープの本流とも言えるモデル。
本国のラインナップ
2007年モデルから、エンジンがV6 3.8Lのみとなり、ロングホイールベースの4ドア、アンリミテッドが加わった。4×4のトランスファーは全てパートタイム
- 2ドア
- 4×4
- ルビコン - ロックトラック
- X - コマンドトラック
- サハラ - コマンドトラック
- 4×4
- 4ドア
- 4×2
- アンリミテッド サハラ
- アンリミテッド X
- 4×4
- アンリミテッド ルビコン - ロックトラック
- アンリミテッド サハラ - コマンドトラック
- アンリミテッド X - コマンドトラック
- 4×2
- ジープ・チェロキー
- 現行型はKK型と呼ばれており、ダッジ・ナイトロと基本プラットフォームを共用する。日本では先々代型であるXJ型がヒットした。本国での名称はリバティ。
- スポーツ
- レネゲード
- リミテッド
- 現行型はKK型と呼ばれており、ダッジ・ナイトロと基本プラットフォームを共用する。日本では先々代型であるXJ型がヒットした。本国での名称はリバティ。
- ジープ・コマンダー
- 2005年のニューヨークオートショーでデビュー
クラシカルなスタイルの4ドア、3列シートのSUV。
※日本では詳細が発表されていないため、本国でのバリエーションを記載。- 全グレードに4×2、4×4を用意
- スポーツ 3,7L V6 クワドラトラックI/II
- リミテッド 4,7L V8 FFV、 オプションで5.7L HEMI V8 MDS クワドラトラックII/クワドラドライブII
- オーバーランド 5,7L HEMI V8 MDS クワドラドライブII
- 全グレードに4×2、4×4を用意
- ※MDS = マルチ ディスプレイスメント システム = 可変気筒休止システム
※FFV = フレックス フューエル ヴィークル = ガソリン/E85互換車両
※E85 = エタノール(アルコール)85%混入燃料
- ジープ・パトリオット
- 2007年登場の小型SUV。
- リミテッド
- スポーツ
- 2007年登場の小型SUV。
[編集] 絶版モデル
- トラディショナル ジープ
オリジナルのウイリス・ジープ(ホイールベース=W/B 90インチ)に近いスタイル。
- ピックアップトラック
- キャブオーバートラック
- ジープ フォワード コントロール (FC 1956年-1965年)
- ディスパッチャー
- DJ-3
- DJ-5
- DJ-6
- パッセンジャーカー
[編集] その他
- ジープのフロントグリルの縦格子デザインは著作権で保護されており、そのためフォード社がアメリカ軍のジープ後継車輌として開発・生産したM151では横格子になっている。
- 本田技研工業初の自社開発SUVであるホンダ・CR-Vが発表されるまでの間、ホンダのディーラーでジープ各車種が販売されていた。また、ビッグスリー初の日本向け右ハンドル車はチェロキー(XJ)だった。
[編集] 文献
- 石川 雄一 (ジープの歴史):『Jeep Truck 1/4 ton 4x4 Utility』、4x4 Magazine、1980年
- D.Denfeld / M.Fry : 『ジープ:不滅の戦闘車両』、サンケイ出版、1981年
- 大塚 康生 (太平洋戦線で戦うジープ):『ジープ:太平洋の旅』、ホビー・ジャパン、1994年、ISBN 4-89425-039-X
- 影山 夙:『図解 四輪駆動車:322点の図・写真で綴る4WDの技術と発展史』、山海堂、2000年、ISBN 4-381-07743-1
[編集] 関連項目
- クライスラー
- ダッジ
- AMゼネラル
- IKA カイザー社のアルゼンチン拠点。ここでもジープを生産していた。
- SUV
- オフロード
- ジープニー
- ルピコン・トレイル
- セレック・トラック
- コマンド・トラック
- クォドラ・トラック
- M151(アメリカ軍の後継車両、通称ケネディジープ)
- 73式小型トラック (自衛隊の制式車両)
- キューベルワーゲン (ドイツ軍で活躍したジープの先輩)

