ジャコウアゲハ

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ジャコウアゲハ
Atrophaneura alcinous.jpg
ジャコウアゲハ 兵庫県産
分類
: 動物界 Animalia
: 節足動物門 Arthropoda
: 昆虫綱 Insecta
: チョウ目(鱗翅目) Lepidoptera
上科 : アゲハチョウ上科 Papilionoidea
: アゲハチョウ科 Papilionidae
亜科 : アゲハチョウ亜科 Papilioninae
: ジャコウアゲハ族 Troidini
: ジャコウアゲハ属 Atrophaneura
Reakirt, 1865
: ジャコウアゲハ A. alcinous
学名
Atrophaneura alcinous
Byasa alcinous (Klug, 1836)
和名
ジャコウアゲハ、麝香揚羽

ジャコウアゲハ(麝香鳳蝶、麝香揚羽、学名 Atrophaneura alcinous または Byasa alcinous) は、チョウ目アゲハチョウ科分類されるチョウの一種。

目次

[編集] 分布

東アジア日本台湾中国東部、朝鮮半島ロシア沿海地方)に分布する。

日本では秋田県以南から八重山諸島まで分布し、南西諸島では多くの亜種に分けられる。

分布は局地的であるが突然発生することもあるため、食草が無くなるとかなりの長距離を移動するものと考えられている。

[編集] 亜種

[編集] 特徴

成虫(雌)
幼虫

成虫は前翅長 45mm - 65mm、翅を大きく開くと約 10cm ほど。他のアゲハチョウに比べると後翅が斜め後方に細長く伸びる。成虫は雌雄の判別が容易で、雄の翅色はビロードのような光沢のある黒色だが、雌は明るい褐色である。和名は雄成虫が腹端から麝香のような匂いをさせることに由来する(成分はフェニルアセトアルデヒドであることが判明している[1])。

[編集] 生態

成虫が発生するのはからにかけてで、その間に3-4回発生する。成虫は日中の午前8時ごろから午後5時ごろまで活動するとみられ、川原や荒地などの明るい場所や生息地の上を緩やかに飛ぶ。

河川付近によく見られるのは、そこが食草の一つである草本のウマノスズクサの成育環境であるからで、畑の生垣付近などウマノスズクサの成育環境があれば見られる。また、木本のオオバウマノスズクサを食草とする地域では、オオバウマノスズクサの生育環境である山林の林縁部、渓谷などで本種が見られる。河川の土手は草本のウマノスズクサにとっては競争相手の少ない成育環境であり、ジャコウアゲハにとっても理想的な生息環境であるはずだが、土手の草刈りによって壊滅的なダメージを受けることもある。本種のライフサイクルに配慮した草刈りがなされれば、本種を見る機会も増えるであろう。

幼虫ウマノスズクサ類を食草とする。繁殖力が強く、また食草を良く食べるため、食草がなくなると共食いをすることもある。ナミアゲハなどとは違い終令になっても黒いままで、形も全体に疣状の突起に被われ、ずいぶん異なった姿をしているが、つつくと臭角を出す点(他のアゲハ類と違い、臭角は少ししか出さない)は同じである。

また、になる前の幼虫が食草の茎を切り、他の幼虫が食べられないようにしてしまうことがある。これはジャコウアゲハの繁殖力が非常に高いため、増えすぎないよう自己調整しているという説がある。しかしながらこの説の元になったと思われる群淘汰という考え方は、現在の行動生態学においては否定されており、あまり適切な理由とはいえない。幼虫は葉だけでなく茎もエサとして利用するため、単にエサとして食べた結果、茎が切れただけと考えることもできる。

幼虫の色彩と形態は木本のオオバウマノスズクサの実の鞘が割れて種が露出した状態に、また、蛹は花の色彩と形態と似ることからオオバウマノスズクサをもともとの食草とし、その種殻と花に擬態して身を守っていると思われる。しかし、草本のウマノスズクサでは、花も実の形態も異なるのでこの擬態は役にたたない。

冬は越冬し、この時期の蛹は数ヶ月羽化せずに過ごす。ただし暖かい時期の蛹は1-2週間ほどで羽化する。

[編集] ベーツ擬態

ジャコウアゲハ類が食べるウマノスズクサ類は毒性のあるアリストロキア酸を含み、ジャコウアゲハは幼虫時代にその葉を食べることによって体内にを蓄積する。この毒は一生を通して体内に残るため、ジャコウアゲハを食べた捕食者は中毒をおこし、遂には捕食したものを殆ど吐き出してしまう。一度ジャコウアゲハを捕食して中毒を経験した捕食者は、ジャコウアゲハを捕食しなくなる。

このためジャコウアゲハ類に擬態して身を守る昆虫もいくつか存在し、このような擬態をベーツ擬態と呼ぶ。日本で見られる例としては

がいずれもジャコウアゲハに擬態しているとされる。

[編集] 人間とのかかわり

妖怪「お菊虫」
絵本百物語』竹原春泉画

[編集] 民間伝承

ジャコウアゲハの蛹は「お菊虫」と呼ばれるが、これは各地に残る怪談皿屋敷」の「お菊」に由来する。

寛政7年(1795年)には、播磨国姫路城下に後ろ手に縛られた女性のような姿をした虫の蛹が大発生し、城下の人々は「昔姫路城で殺されたお菊の幽霊が、虫の姿を借りてこの世に帰ってきているのだ」と噂したという。このことに因み、兵庫県姫路市ではジャコウアゲハを市の蝶に指定している。戦前まではお菊虫を姫路城の天守やお菊神社でも売っていたといい、志賀直哉の長編小説「暗夜行路」では主人公がお菊虫を買う描写がある。現在姫路市内で観察されることは少ないが、春から夏に姫路市科学館などで生きている成虫を観察することができる。姫路市自然観察の森ではネイチャーセンターや園内で飼育しており、一年中、成虫や幼虫、さなぎを観察することができる。

[編集] 近縁種

ベニモンアゲハ

日本では、南西諸島南西部にベニモンアゲハ(紅紋揚羽) Pachliopta aristolochiae が分布する。後翅の中央に白い斑点が1つ、さらにその外縁に和名通り鮮やかなピンクの斑点が並ぶ。体側も鮮やかな赤色をしている。後翅は表側よりも裏側の方が模様が鮮やかである。

1970年代初頭に先島諸島に定着したとされ、21世紀初頭には沖縄本島までも分布を広げている。これらの地域ではリュウキュウウマノスズクサコウシュンウマノスズクサを幼虫の食草に利用する。

ベニモンアゲハと同じく東南アジア熱帯域に分布するシロオビアゲハ Papilio polytes は、ミカン類を食草にする無毒の種類だが、メスの中にベニモンアゲハに似た斑紋を持つものがいる。

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク

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